不成就日 (旧暦 睦月十九日)

 決戦の場に向かうビートチェイサー2000 とトライチェイサー2000 の2ショットは、ダブルライダーを思わせますね。
 一条さんは“変身しない”2号ライダーだったんだな、と。

 最終回が伝説級だとは聞いていましたが。
 ああきましたか。大胆にも、ああ結びましたか。
 さすがと言うか、よく上が許したなと言うか。
 今なら無理……つか、たった五年後の『響鬼』では実際、途中でクビになってますからね髙寺P。

 最終回を丸々エピローグにする。
 最終話にはクウガグロンギも出ない。
 五代の台詞も一言のみ。

 だけでなく、ラス前の最終決戦も大胆でしたね。
 五代が黒のクウガに変身はした。でも、第0号との闘いは、なぜか五代と第0号人間態との殴り合いに終始。
 どこからどう見ても、変身ヒーロー特撮番組ではないですね。
 だけど、それこそが『空我』。

 なるほど。
 これ以降の平成ライダー(特に井上脚本)にて、最終決戦をぼかしてエピローグにすっ飛ばす悪癖は、『クウガ』の真似っこをしていたのですね。
 でも、真似っこだから何も伝わってこない。信念も無しに型破り(の真似事)しようとすんな。ってことですね。

 閑話休題

「もし五代さんじゃない人が4号だったら」という笹山くんの言葉は、作品のテーマかもしれません。
 五代だからこそ「大丈夫」の一言で前に進めた。五代だからこそ常に笑顔でいられた。五代だからこそ「聖なる泉を枯ら」さなかった。
クウガ』の主人公はクウガではなく五代。あたりまえのことではあるんですが、こと『クウガ』においては、大きい。

 振り返ってみましょう、昭和のライダーたちを。
 本郷に始まり風見、結城、神、城……皆、闘志満々、努力と根性の人たち。
 唯一、一文字は飄々としていたけど、あれも本心を隠す“仮面”に過ぎなかったからね。中身は、むしろ本郷をも越える熱血漢。
 加えて、皆が改造された自分の体を好いてはいなかった。むしろコンプレックスになっていた。
 そして、ほぼ躊躇なく怪人を殺している。相手も自分同様に、拉致されて不本意に怪人にされた謂わば被害者であるにも関わらず、とにかく倒す。爆死させる。

 五代は当初から、敵を殴ることに嫌悪感を憶えていた。
 例外は、標的を恐怖で徹底的に追い詰める残虐さを見せたジャラジに対して、怒りで闘い「倒す」のではなく「殺した」一回のみ。
 最後の、ダグバとの闘いですら、嫌そうな顔で殴り続けていた。
 保育園でも、旅先の浜辺でも、子供たちがケンカしてると、すぐに割って入って二千の技を駆使して、みんなを笑顔にする五代。
 本当に、争いが嫌なんだろうな。
 そんな五代が古代リントの戦士になったのは、どういう巡り合わせなのか。
「4号なんて、いないほうがいいと思うの」
 みのりっちの、この言葉は奥深いですよ。

 あるいは、ダグバこそが「クウガが五代でなかったら」という仮定に対する一つの回答かもしれません
「リントも我々と等しくなる」
 バルバが何度も一条さんに言っていた、この言葉も同様の意味を含んでいるのでしょう。
「おまえはリントを狩るためのリントの戦士のはずだ」
 とも言っていた。
 思い返して、あの演奏会会場立てこもり犯を取り押さえた一条さんの迫力に夏目実加が怯えたのは、そこにグロンギとの「等しさ」を感じ取ったのかもしれませんね。
 古代リントとは違い、現代のリントは、少なくともバルバには好戦的に見えたのでしょう。
 いや実際、好戦的だろ人類は。五代が特別すぎるだけで。

 だから五代なんだな。

 そんな五代にとってすら、グロンギは闘うしかない相手だと。
 そりゃそうだ。
 グロンギにすれば、リントは狩りの獲物でしかない。リントの人生に石ころほどの価値も認めていない。
 ノートPC持ち歩いてたジャーザなど、ゲリザギバス・ゲゲルをさっさとクリアするため、子供を狩るほうが効率的だと言ってたほど。
 唯一、バルバは現代リントに、獲物として以上の何かを感じていたようですが。それでも、バルバにとってもリントは、あくまでもゲゲルの対象だった。
 ダグバは何やってたんだろうな。奴はザギバス・ゲゲルの謂わばチャンピオンだから、別にリントを殺して歩く必要はない。挑戦者が決まるのを待てばいいだけ。
 とすると、やっぱり狩猟本能? それとも、クウガを挑発して強くさせるため?
 五代が黒のクウガになったこと、黒のクウガと闘えること、本気で喜んでたからなぁ。
 復活した当初こそ、封印された恨みでか、古代リントの戦士を目覚める前に殺したけど。きっと後悔したんだろうな。遊び相手がいなくなって。
 だから、五代が強くなるのを期待していた、か。
 笑いながら五代と殴り合う姿は、もう完全に狂ってやがる。
 想像だけど、殴り殺されたときですら笑ってたし、死体も笑ったままだったに違いない。死体を発見したのは一条さんだろうけど、きっと退いたと思うわ一条さん。

 グロンギの生き残りはバラバだけなんでしょうか。他にも、ダグバから逃れた者がいるんでしょうか。
 いや、生きてるでしょバルバ。水落ちは平成ライダー伝統の生存フラグですから。
 て言うか、そもそも神経断裂弾は怪人態の未確認生命体を想定した弾頭のはずです。だから通常弾より貫通性能が高いに決まってる。通常弾では装甲に弾かれてしまいますからね。であれば、人間態の未確認生命体に対しては貫通力がありすぎる。実際、一条さんに背中を撃たれたバルバは胸から血を飛ばした。これはつまり盲管ではなく貫通を意味しています。神経断裂弾はバルバの体をそのまま通り抜けているのだから、作用していませんよ。

 未確認生命体関連事件合同捜査本部は解散したようですが。

 椿医師のもとには、クウガの生体データが山ほど。
 桜子さんは、古代リントの研究を続けるでしょうし。
 科警研には、いまだゴウラムが居候しているらしく。
 さらに科警研は神経断裂弾のデータを保管、あるいはさらに強化するかもしれない。
 そして、新聞記事によると「警察が第0号の死亡を確認した」ようで。つまりダグバは爆死せず死体を残した。当然、然るべき所に保存され、研究もされるはず。

 これだけ材料が揃ってるんですから、そりゃー小沢管理官のような才能あふれる人が出てくれば、怪人に対抗もできるわけですわな。

 みんなの笑顔を守りたいと、自分も常に笑っている五代。
 飄々と人助けをしているヒビキさん。
 やっぱ、似てるよなー。
 髙Pが降板しなかった『響鬼』の完成品というものを観たかったですよ、つくづく本当に。

 現時点で、『クウガ』は平成令和の中、ダントツ一位の作品だと断言します。

 観られてよかったー。
 半年間に渡り全話無料配信してくれた東映には感謝感謝。
(中古DVDが、いまだに高いんだわー)