朔 (旧暦 文月朔日)

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 『PATLABOR EARLY DAYS』volume 1. 、volume 2.
  バンダイビジュアル BCBA-0481 、BCBA-0482


機動警察パトレイバー』の記念すべき一作目OVA、第1~7話を収録したDVDです。
『あ~る』で世の評価を確固たるものにしていた、ゆうきまさみさん。当時はメカデザイナーの肩書きだった出渕裕さん。『うる星』以降、信者的ファンを増やし続けていた押井守監督。その『うる星』や『マミ』などで押井監督との縁が強い伊藤和典さん&高田明美さん元ご夫妻。この五名による言わば創作集団が原作としてクレジットされている「ヘッドギア」。
 ヘッドギアの構成員名だけで傑作が約束されたようなものでしたが、蓋を開けてみれば予想どおり押井色の強いこと強いこと。とある評論家氏(ごめん。お名前忘れた)が書いておられましたとおり「友引高校二年四組の連中が、そのまま特車二課に集団就職したような」アニメです。
 これが良かったかどうかは実は難しいところでして。
 妖之佑のような押井ファンには嬉しい内容。
 ですが、ゆうきさんファンにおいては失望の嵐。
 そんな感じでしょうか。
 少なくとも妖之佑の知る限り、ゆうきさんファンが評価する『パトレイバー』は少年サンデーに連載された漫画版(原作だと誤解する人もありますが、あくまでも漫画版です)および、TVアニメ以降では漫画版をベースとした「グリフォン編」に限ります。内海課長とお武さん絡みの部分ですね。
 六本の初期OVAこそ地味な展開でしたが、その評価を受けての第7話および劇場版一作目、TVアニメ、新OVA、劇場版二作目、劇場版三作目&『ミニパト』……という展開は、ゆうきさんファンの意向はさておき、大成功したアニメ作品と断じてよろしいかと。

 そんな成功を振り返るべく、今では「early days」と銘打たれた初期OVA。
 作画が古臭いものの、やっぱり面白いですね。押井監督がタッチしなかった第7話を含めても隙がない。
 そして、これもやっぱり。香貫花が良い。ゴミを見下ろすような視線でののしられたくはないが、あのキツさは魅力♪ ガバメントは銘銃!

 何よりも特筆すべきは、実は価格です。
 当時、30分モノのOVAは定価¥9,800 がデフォでした。安くて¥7,800 。だからこそ、ビデオソフトはエロ抜きでもレンタル全盛時代を迎えつつあった。
 それでは厳しいと考えたのか、『パトレイバー』は一話¥4,800 という価格破壊で発売されました。
 カラクリは簡単。AパートとBパートの間にCMを入れたのです。確か、当時の人気カセットテープ AXIA GT-I だったと思います。CMには野明が出演しているので絵的な違和感もなく。
 つまりは広告料で価格の半分を賄えたわけですね。そりゃ広告代理店が儲かる道理だ。
 もちろんですが、CMは発売当時のソフトに収録されたのみです。今となっては、観るのも難しいでしょうか。

 余談ですが。ゆうきさんを除くヘッドギアの四名に音楽担当の川井憲次さんやシゲさん役の千葉繁さんを足すと、『紅い眼鏡』の主スタッフとなります♪
 さらに余談ですが。↑の千葉さん以外にも、遊馬役の古川さん、太田役の池水さん、進士役の二又さん、香貫花役の井上さん、松井刑事役の西村さんなどなど、スタジオぴえろ時代の、つまり押井体制下の『うる星』のレギュラー陣が揃っており、『パトレイバー』の音声トラックは押井色と言うか『うる星』色が濃いですね。南雲隊長役の榊原さんも『うる星』劇場版一作目でヒロインを担当され、TV版『うる星』でも、けつねコロッケのお銀役だけでなく、海辺の旅館・すだま亭に巣くう幽霊お玉さんや、シャコ貝の精霊、地球侵略に来た女王陛下としても参加されていましたね。特に、お玉さんと貝の精と女王陛下は榊原さんのコント芝居として極めて貴重でした♪ ちなみに、第5、6話の重要人物・甲斐冽輝を演じられた筈見純さんは、TV版『うる星』の「必殺! 立ち食いウォーズ!!」において、お銀さんの師匠である立喰師・けつねタヌキの竜を演じられました。甲斐が苫小牧の立ち喰い蕎麦屋で遊馬と遭遇、かけを粋にすすったのは、言わばセルフパロのようなものです。
 あと、進士さんの奥さん・多美子さん役の TARAKO さんも『うる星』にご出演しておられます。ぴえろ時代は脇役でしたけどね。新OVAで多美子さんを演じられた安達忍さんも同じく脇役での『うる星』参加だったはずです。
 と言う感じで、どこまで行っても『パトレイバー』と『うる星』は縁が切れません。
 第4話で暗躍した悲劇のヒロイン(笑)役の兵藤まこさん(一般的には『Vガンダム』ウッソの母親役)も、『うる星』との縁こそ希薄なものの、ぴえろ退社後の押井監督による作品にて欠かせない人です。『天使のたまご』のヒロイン、『紅い眼鏡』の謎の美少女、『トーキング・ヘッド』の「お客さん」、さらには実写版ケツネコロッケのお銀と、押井さん惚れてまんのか? と問いたくなるほどの起用ぶりです。

 さてさて。
 誉めてばかりも何なので、一点だけ文句言います。
 全七話に加えて、劇場版の宣伝としての役目で発売された「6½かわら版」も、このDVDには収録されています。
 この「かわら版」、妖之佑は当時から訝しんでいたのでレンタルしませんでした観ませんでしたもちろん正解でした。
 酷い。酷すぎる。こんなんでゼゼコふんだくってたんかいっ! 無料配布のレベルやぞ。

 なお、少し前に公開された実写版『パトレイバー』は、原作がヘッドギアであると明記されているだけで、押井監督の仕事に対する他の四名の反応は冷ややかだったようですね。唯一、伊藤和典さんが「アニメと実写では演出方法が違うのに……」という批判的意見をアップしておられたくらいで。
 観た人の感想も「食事シーンが汚くて嫌になった」というものがあり、押井監督は、井上敏樹さんが平成ライダーでやらかしたのと同じ罠にはまってしまったのかもしれません。
 まあ観てないので、あんまり言っても失礼ぶっこいてますが。(;^_^A

 おあとがよろしいようで。