『相棒 14』
「物理学者と猫」
基本、『相棒』の感想をわざわざ書くことなどしないのですが。つか、きちんと観ているわけでもないので(汗)。
たまたま再放送を観て、ガツンとやられたので。はい。
凄いですね。刑事ドラマでやりますか、あれを。SF的解釈の量子物理学による並行世界を。
しかも、上っ面をなぞったパチモンでなく、『STAR TREK』(TNG)「無限のパラレル・ワールド」に届こうかというくらいの密度で。
この脚本家さん、SFを深く理解しておられるものと推測いたします。そのうえで、きちんと人間ドラマとして締めくくっているのが、また素晴らしい。
これに比べたら、アニメ版『ハルヒ』の例の「8」なんて予算と時間を無駄遣いしただけのゴミカス以下です(こっちはループ物ですが)。
巷の感想に「何だ夢落ちかよ」というのが多いのは、まあ仕方ありませんね。『相棒』の常連視聴者にはSFに興味ないかたがたが多いでしょうから。なので、シュレディンガーの猫の解説についても、ましてやパラレル・ワールドなんて理解の外でしょう。
もちろん、物理学の「シュレディンガーの猫」とSFの「シュレディンガーの猫」とでは、まったくの別物です。
SFシュレ猫のほうは、『シュタゲ』においてオカリンが目視することで世界が確定する、というアレですよ。
一方、物理学シュレ猫は、実際にそんな実験をしたわけではなく、あくまでも思考実験の題材・テーマにすぎません。タキオン粒子やモノポール(これらもSF必須の用語ですが)などと似たり寄ったりです。
念のために申しておきますと、あの話での四つの結末は、それぞれ存在するということです。決して夢落ちや「もしも」の世界ではありません。可能性のある分岐から派生しうる未来は、すべて同時に存在する。そういう考えかたがSFの並行世界ですから。
よく知られている例で挙げるなら、『ドラゴンボール』人造人間編にて、ミスター・サタンがセルを倒し地球を救った(大笑)世界、トランクスが双子を倒すもののセルに殺されタイムマシンを奪われた世界、トランクスがセルを返り討ちにした世界、すべてが存在する、ということですよ。
そんな無数の選択肢がある中で、黒猫がオカリンよろしくグッドエンドの世界線を探し求めて右京さんを導いた(利用した)のでしょう。なので、黒猫や視聴者の視点ではループしていると言えなくもない。
並行世界物とループ物が混同されやすいのは、一つには読者・視聴者のためではあるのですよね。同時に存在する並行世界であっても物語として構成する場合、どうしても一つひとつを順繰りに描いていくしかありませんから。判りやすいかどうか……まず一度はクリアしないとフラグが立たないルートが開放されないとかでなく、最初からすべての選択肢とルートが可能な状態でスタートするRPGやAVGと考えたら、近いのかな。
はいぃ?
いえいえ、妖之佑は物理学なんてダメですよ。ほんの少しだけSFを囓った程度です。
ええ。ですから、こんな駄文を鵜呑みになどなさらず、ご自身でお調べになったほうがよろしいと思います。受け売りを“RT”せずそのまま雑談のネタとかにしたら、それこそ劇中の成田教授同様、後悔なさいますよ、きっと。