土用丑 (旧暦 文月三日)

 Five-seveN いいなー。

 と言いましたが。
 実のところ、ツッコミ処はあるのです。

 リアルな銃器世界を再現したGGOですから、当然のことゲーム内アイテムとしての銃器もリアル。もちろん物語世界における現行軍用品等々もあって然るべき。
 そんな中から、初心者でありながら体さばきの優れているキリトにシノンが勧めたのが Five-seveN 。

 ところで、『SAO』のGGO編って 2025年の物語なのですよね。
 で、現実の Five-seveN の発売は 2000年、民間向け発売が 2005年。
 つまり、2025年なら、もっと良い銃が出ていてもおかしくないのです。つか、出ていなくてはなりません。
 二十年も経っているとなると、物語世界での Five-seveN の評価は、2014年現在における Glock に近いものだと思います。出た当初はインパクトがあり爆発的人気を得たが、今では欠点もしっかり炙り出され「そろそろ旧式かな〜」という感じ。

 ここは難しいところなのですが。
 本当なら 2025年におけるベストセラー銃器というものを創造する必要があったのですよ。
 ただ、それには作者の銃器に関する高レベルな知識とセンスが要求されるうえに、読者・視聴者を納得させる必要がある。
 特殊能力を持つスーパー主人公だけが持つ専用の特別製銃、とかならまだしも。
 その世界での量産品ということであれば、その設定に関して作り手側に課せられる難易度、かなり高いのですよね。

 これについて成功している創作者は士郎正宗さんを置いて他におられないと思います。
 氏の代表作の一つ、『攻殻機動隊』にて、主人公が身を置く公安9課の制式ハンドガン「セブロM5」。
 M5という拳銃もセブロというメーカーも士郎さんの創造の産物であり現実には存在しません。しかしながら、非常に現実感のある設定で読者は納得させられたものです。

 コンセプトとしては。
 巷の破壊力重視な大口径ハイパワー至上主義に懐疑的な設計思想から出た、貫通力重視の軽量小口径高速弾を連射する高精度のハンドガン、というものです。
 実はこれ、Five-seveN のコンセプトそのものなのですよね。
 口径を小さくすることで反動が減り、扱いやすくなる。
 弾頭重量が下がることで減少するエナジーは火薬の増量で補う。
 結果、初速が上がるため命中精度も上がる。
 カートリッジが細身になる分、マガジンの装填数も増える(作品の描写からすると、セブロM5は十二ないし十三発と思われる。ちなみに Five-seveN は二十発)。
 要するに、ダーティー・ハリーやドーベルマン刑事とは真逆の発想なのですよね。

 ちなみに、劇中で公安9課の新人・トグサが、マテバ製リボルバー M2007 の愛用者であるという描写があり、これまた架空の銃器なのですよね(マテバ社は実在のメーカー)。
 ただし、ブツは登場せず、外見はアニメ版『S.A.C.』まで待たねばなりませんでした。

 ギリギリ1980年代の作品で、電脳ネットワーク社会だけでなく、こういった仮想銃器群をも生み出した士郎さんのセンスには、ただただ脱帽するしかありません。

 ついでに申しますと。
 セブロM5は、原作の漫画版と、それをTVアニメ化した『S.A.C.』とで、かなり違いがあります。
 原作では、執行用としては、かなり小さめのハンドガンとして描かれており、銃身長3.5インチのスナブノーズ・タイプとされています(「セブロ・スナブ」という台詞あり)。
 愛用のマテバと散弾銃を少佐に全否定された回にて、トグサが容疑者をポイントした拳銃が、それと思われます。
 少佐が休暇中に自宅を襲撃された際に使ったのは、現場検証するイシカワとパズの台詞からセブロM5であることが確定しています。
 絵を見る限り、どちらも小さいのですよ、かなり。手のひらに収まる感じはワルサーPPK/S やベレッタM84 くらいの感じ。でっぱりが少なく、いかにもプロ向けのツールという印象です。
 これに対し、『S.A.C.』のM5は、でっぱりを持つ、そーとーに存在感のあるデザインで、見た目にも大きそうです。模型商品化もされたそうで、その写真を見る限りでは、銃身こそ短めではあるものの、グリップ部は大型拳銃そのものですね。Glock 17 やガバメントくらいありそうです(アニメの設定では「中型」と明記されているもよう……でも大型だよなぁ、あれは)。つまりは、現実の Five-seveN に近いということでしょうか。
 装弾数も、アニメ版M5は十九発だそうです。原作版は妖之佑の推測で十二、三発。
 個人的には、M5は大型より中型設定のほうがリアルだと思っています。つまりアニメ版よりも原作版を支持するということです♪(模型化してくんないかな〜)



 ちなみに、妖之佑の(空想上の)護身用拳銃は、あいかわらずベレッタM84 でございます。
 これを越える中型オート拳銃は、なかなか出てこないよなぁ(ほぼ理想に合致しているのが原作版セブロM5というオチ♪)。