上弦、祈年祭 (旧暦 睦月八日)

 原作および原作者と、アニメ化や実写化つまりは二次創作との関係について世間が喧々囂々の議論をしているさ中に、こんな与太記事を上げますか。

https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/2402/15/news128.html

 予備知識の無い人がこの記事だけを読むと、『攻殻』を押井監督のオリジナルだと思ってしまいます。
 もちろん、『攻殻』は漫画が原作であり、漫画家・士郎正宗さんが原作者です。押井監督はアニメ化という二次創作をし、そこに自身のオリジナル要素を(大量に)混ぜ込んだに過ぎません。
 記事中で触れられている「ゴーストとは?」「AIに意志があるか?」「人の意志はプログラムに過ぎない?」といったテーマすべて、原作で描かれたものです。それをあたかも押井監督が考え出したかのように書く編集の姿勢には疑問どころか怒りすら湧いてきます(講演内容を生成AIで記事化したとありますが、同時に、文責は編集部にあるとも明記してある)。
 押井監督もなあ、ここが悪い癖なんだよなあ。『パトレイバー』についてもそうだったけど、まるで自分がすべて創作したかのような態度を取っちまう……。
攻殻』映画制作当時のご自分を「インターネットなんかよく知らなかった」と言っておられますが、あの時代に士郎正宗さんは原作の劇中でネットの概念を既に表現しておられました。そういった原作者の功績すべて、まるで自分の手柄だと言わんばかりの姿勢には、ぶっちゃけ疑問符が量産されます。

 押井監督作品を取り扱うなら、借り物要素の無い(もしくは少ない)『天使のたまご』とか『迷宮物件』とか『御先祖様万々歳』とか『トーキングヘッド』とか『アバロン』とか『立ち食い師列伝』とか、あるいは藤原カムイさん作画の『犬狼伝説』や、もりやまゆうじさん作画の『とどのつまり』あたりにすればいいのに。
 原作アニメ化作品についての講演や記事は、この人の場合すべて原作借りパクになっちまいますから、ダメですダメ。
 マイナー作品を取り上げればいいんですよ。基本どれもテーマは同じだし。どうせ、『うる星』以外の押井作品ってのは全部ニッチですし(笑)。

攻殻』を取り上げるのなら、大前提として記事で士郎正宗さんの原作にしっかり触れておくべきです。
 それをやらないのは記者が無知不勉強なのか、あるいは原作に対して悪意があるのか、どちらかとしか考えられませんね(怒)。