涅槃会、横手かまくら (旧暦 睦月六日)

 買ってしまった。

 

 直熱三極管シングル回路のアンプ。
 一昨年に導入した Model7 と同じく、ソフトンさんの Model8-300B です。300B とは採用している出力管の規格名ね。ちなみに、付属はすべて中華球。
 傍熱多極管のプッシュプルと直熱三極管のシングルは、両方揃えたくなるので困ります。初めて買った管球式アンプ Reisong A10 は傍熱五極管のシングルしかもウルトラリニア接続という、その折衷みたいな構成でしたからね。八方美人は、どうしても不満が残る。

 これ、気長に構えてたのですよ。球を 300B にするか 205D にするか、じっくりのんびり悩もうと。
 300B は定番中の定番で、極端に例えてみればフェラーリやポルシェのようなもの。
 で、205D は木製ボディのモーガンあたりかな。性能的には劣るけど味わいがダンチ……と伝え聞く。
(ああ、ベンツやビーエムは、KT88 や EL34 などなど多極管のイメージですね)
 ただ、Model8-205D は最大出力が2Wなんですよね。高能率スピーカでないと、まともに鳴らない。しかしながら、自分が考えてる小型フルレンジだと、現行品から探しても能率が 80dB台後半。これでは難しいかもしれん。それと、両機種の価格差も大きくて悩んでました( 205D のほうが数万円お高い)。
 なお、各種の球を挿し替えられるコンパチ設計の Model7 と違い、Model8-300B と Model8-205D は本体から別物で、球の相互乗り入れは不可です。念のため。

 そんなこんなで悩んでましたけど買ってしまった。それも慌てて。なので 300B です。
 もっとゆっくり考えるつもりだったのですが、つい急ぎました(だから写真のとーり仮設置状態)。
 なぜなら、FOSTEX さんが↓なモノを出すもんだから。

 

 2015年に限定販売されたフルレンジの名器が昨年夏に、まさかの限定復活! ……を迂闊に逃してたら、まさかまさかの年末に追加販売!!
 しかも、こいつは 10cm のクセに 90dB を誇るから、能率問題も解決。
 ならば買う一択っしょ。
 で、スピーカ・ユニット買ったらアンプも要るっしょ。

 てコトっス。
 はい、阿呆である(@某満月な人)。

 で、これも憧れの、そして直熱三極管シングル式アンプに繋ぐなら定番とも言える、バックロードホーンの箱に入れてやります。て言うか「Sol」はバックロードホーン専用ユニットだし。
 ベアホーンさんの「ASB1081-M」という組み立てキットです。設置を考慮して小型の箱が候補だったのですが、中途半端な妥協は無駄を増やすだけだと考え直し、思いきって決めました。いやデカいわ(900×300×180mm 約12kg が二台)。

 

 未だ我が家の三次元空間的問題が解決していないため仮に置く。我が家の汚さをお見せしないよう写真は大胆にトリミング♪
 聴くときのみ立たせ、聴かないときは、こうして接着面がじっくり馴染むよう、二本を重ねて重しも乗せて寝かせてます(ユニットの下に見えてるのは相方の下部ホーン開口部)。
 このノッポさんな箱、もし元日レベルの地震(こちらの地域での震度という意味です)があったら確実に倒れますね。本設置のときは何か工夫しないと危ないな。

「組み立てやすさにこだわり」というメーカーさんの文言は伊達ではありません。板材同士の合わせが完っ璧。しかも、溝とダボがあるので組み立て時に、ほとんどズレは生じないです。
 説明書に従って仮組みして全体像を掴んでから、木工ボンドを塗りたくって溝やダボを合わせてグイッと体重かけてしっかり押し込めばOK。後は、はみ出したボンドを拭き取ってボンドの硬化を待てば良いだけ。マジで簡単です。初心者のオイラにもできたのですから♪
 器用な人が丁寧に組み立てて磨いて塗装したら、完成市販品レベルの出来になると思います。私は不器用で雑な性格なので隅々を見ると残念な出来ですが。(;^_^A

 実は情けないことに、組み立て時に底板を逆さに接着したため、安定させるための一回り大きな座板をネジ止めできなくなっとるんですわ(大馬鹿)。よって設計者さんの想定を越えちまう不安定さなのですね。orz
 でも使わないとき寝かせとくなら、むしろ座板が無くてよかったかも。(をぃ
 ちなみに、軽く音出しするときはめんどいので寝かせたまま鳴らしてますが、それはそれで楽しめます。夏の昼寝など、このまま鳴らしたほうが心地良いかもしれません(笑)。
 それで思いついたのですが。もっと小さな8cm のユニットで、左右一体型の横長バックロードホーン箱とか作ったら面白そうですね。JBL のラスボスであるパラゴンみたく(こっちはフロントロードホーンだけどね)。あれにも確かミニサイズの非公式レプリカ品がありましたし、ユニット無し箱だけの公式ミニチュアも存在しました(スマホ挿すと鳴るんだそうな)。まあ私には設計技術も木工技術も無いので実行不可ですが。(;^_^A

 一つだけ説明書きに無かったことを。
 このキット、設計者さんが想定した FE108-Sol が、そのままでは付きません。バッフル板は問題無いのですが、それを貼り付ける前板に問題があります。
 バッフル板の穴形状と合わせるべく、前板の真円形の穴を下側だけ少し凵形に削ってやる必要があります。そうしないと、Sol が収まりません。
 私は組み立ててからこれに気づいたため、箱になっちまってるブツのバッフル穴から鑿を突っ込んでゴリゴリやる羽目になりましたよ(涙目)。削り屑は掃除機の細いノズルを穴から入れて何とか吸い取ったしぃ。まあ合板のバッフル板と違って、前板はMDFなので削りやすかったのは助かりましたけどね。
 この寸法違いは Sol の磁石がデカいせいで、他の 10cmユニットを取り付けるときには無加工でいけるらしいのです。
 でも、この箱はいちおう FE108-Sol 専用設計が謳い文句ですからねぇ……。削らにゃいかんのを説明書で触れていないのは何だかな~でした。

 もう一点。これはウチに届いた物だけのことかもしれませんが。
 音道板を支えるため、と言うか箱鳴りを防ぐための補強桟(トンネル内に据える細い柱みたいなもの)が寸足らずで補強になりません。説明書の通りにボンドで貼っても貼ってもポロリと落ちます。
 仕方ないので、ケーブル用の穴を塞ぐためのブチルゴムの余りを挟んで何とかごまかしました。そのうち中でカラカラコトコト言いだすかもな~。
 箱そのものがしっかりしてるので、補強桟無しでも大丈夫そうですけどね。あえて最初から桟を取り付けない選択肢もありそうです。小さなパーツですから、器用な人なら寸法をきちんと合わせた桟を新たに作ればOKでしょう。

 で肝心の音ですが。
 相変わらずの駄耳ですので、たいしたことは言えません。
 あえて言うなら、ユニットが新品だからなのか、ついでに冬だからなのか、音が固い印象です。高音が、かなりきつい。スピーカの正面を耳から逸らさないと鼓膜が痛いです(苦笑)。
 アンプ等々のエイジング必要説に対して私は懐疑的ですが、少なくとも物理的に動くパーツを持つスピーカについてだけは慣らし運転の期間が必要なのでしょう。
 それでも、たった 10cm径の小型フルレンジから量感のある低音が出ます。フルオケはメインに使っている2ウェイ・バスレフに敵いませんが、小編成だと問題ありません。ジャズでピアノの優しくデリケートなコロコロ音とウッドベースの野太いうねりとが一緒に流れてきます。300B の力ももちろんあるでしょうが、バックロードホーンおもしれえな。取り分けホーン繋がりなのか、トランペットやサックスなど管楽器が得意なように感じました。
 バックロードホーンは音道(ホーン)に最低でも2m必要とのことですので、小型の箱に妥協しなくてよかった。
 ↑でも申しましたとおり、私はメインにそこそこ大きめの2ウェイ・バスレフを使っていますから、10cmフルレンジのバックロードホーンは迫力面で劣ると感じますが。そこまで気にしないという人であれば、このユニットと箱の組み合わせは余裕で主役を張れると思います。
 まだ Sol の本調子ではないでしょうから、あとはユニットが熟れてくるのを待ちますか。

 Model8 についても音質に関して偉そうに言える立場ではございません。スピーカを元気よく鳴らしてくれます。↑でも言ったとおり、低音もしっかり出てます。これでシングル回路だなんて、すごいなソフトン、凄いな 300B 。
 ソフトンさんということで判ってる人には判ってることですが。Model7 と同様、ハイブリッドです。前段が電圧管、後段が三極管、でその間を MOS-FET が取り持つ三段構成で、しかも MOS-FET を使ったことででしょうか三段直結です。何かとネックになるカップリング・コンデンサはありません。
 このあたりの設計が面白いんですよね、ソフトンさん。
 もう一つ言いますと、この Model8 の音量調整には、一般的な可変抵抗器ではなく本物のアッテネーターが採用されています。どういうことか詳しく書くと長くなりますので後日に譲りますが、とにかくボリュームに大手メーカ品でもあまり使わない良パーツを採用しているということ。
 見た目は本当に飾りっ気が無く。て言うかシャーシもトランスケースも Model7 と共通ですよねたぶん。なので、ぶっちゃけダサいデザイン。管球式アンプに音質だけでなくインテリアとしての効用も求める人には向きません。あと、半導体嫌いプリント基板嫌いの“純血派”にも向きません。そういったかたがたは大手メーカー著名ブランドの高級品・人気品を選ぶのが吉だと思います。あるいは自称「名人」様に特注するか。(藁
 コスパ最強しかも日本製なので私は気に入ってますよソフトン製品。

 ただ、直流点火のわりにハム音が少しだけ耳障りかな。これが直熱三極管の宿命か。
 我が家の環境だと、交流点火の Model7 のほうが静かなんですよね。やっぱり傍熱管と直熱管の違いなのかなぁ、と。
 まあ、スピーカから距離を取れば、あるいは音楽が鳴れば気になりませんし。個体差の範囲内だと思いますけど。



 様々な楽器が混じり合った空気に包み込まれたいならプッシュプル+マルチ・ウェイ(2ウェイで済ませるのが理想)。
 ヴォーカルや楽器一つひとつのニュアンスが欲しいならシングル+フルレンジ。
 巷で言われるとおりの印象で落ち着きそうです。

 残るは、2A3 のオーソドックスな無帰還&コンデンサ接続あるいはロフチン・ホワイトに、ロクハン一発か。(こらこら