一粒万倍日 (旧暦 葉月廿二日)

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 『ゲゲゲの鬼太郎 死神大戦記』上下巻
  水木しげる/角川文庫


 少年マガジンでの闘いの日々に疲れ果てた鬼太郎が南の島に渡り隠居した「その後の鬼太郎」の正統続編です。
 南の島でのんびり暮らしていた鬼太郎が、一時的に来日して事件解決にあたる物語。鬼太郎は、事件が終わるとまた南の島に帰ります。
 なので、これより後に発表された『鬼太郎の世界お化け旅行』などとは世界線が分岐していると考えられます。と言うか、『死神大戦記』以外で、鬼太郎の南の島在住に触れたものって無いんですよね。『死神大戦記』以外のどの作品でも鬼太郎は日本に住み続けている。

 世界規模の天変地異が起こり大騒ぎになる。
 世界を救うべく選ばれた子供たちが立ち上がる。
 そこに、金儲けの匂いを嗅ぎつけたねずみ男にそそのかされた鬼太郎が南の島から来日して参戦。
 また、漫画家・水木しげるも偶然出会った子供たちに協力を申し出る。
 敵は悪魔の軍勢と、それに従う西洋モンスター群。

“鬼太郎サーガ”の中でも、かなりの分量を誇る大作ですが。
 これ、お話を作ったのは水木サンではないんですよね。これは明言されています。
 さらに、読んでみて感じますが。
 これ、作画の大半も水木サンじゃないですよね。鬼太郎とねずみ男以外は、すべて別の人が描いてる。一部、鬼太郎たちですら水木サンのペンとは思えない出来。
 丸投げとまでは言いませんが、かなりの部分を水木プロに任せていたんじゃないかなと思えてなりません。下手すると名前だけ?
 その意味では、後々の『最新版ゲゲゲの鬼太郎』の同類なのかもしれませんね。

 作品が言いたいことは理解できなくもないですが、とにかく描き手がテーマに振り回されてる印象です。分量のわりに消化できてない。
 水木サン主導なら、ありえないでしょう。

 好意的に見るなら。
 演出不足・描写不足なのは神話を意識したからかもしれません。つまり叙事詩を目指した作風。
 だとしても、漫画を媒体にするのに叙事詩形式は、ないわな。うん。