(旧暦 文月十日)

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 『ゲゲゲの鬼太郎』全五巻
  水木しげる/講談社漫画文庫


 貸本時代を経て、鬼太郎が雑誌に進出した最初の、そして我々がよく知るところの人間の味方としての鬼太郎を描いた少年マガジン(週刊、別冊)連載掲載分が収録されたものです。モノクロ作品だったアニメ第一期と時期が一致します。
 連載開始当初のタイトルは『墓場の鬼太郎』でした。これが十八話。
 そして、アニメ化の動きと連動して『ゲゲゲの鬼太郎』へと改題、仕切り直して第1話から始まっての、こちらが四十九話。
 さらに連載終了から一年以上経って「その後のまんがスター」という企画に参加しての後日譚である所謂「その後の鬼太郎」も加えた全六十八話が、この文庫に入った物語のすべてです。“少年マガジン版”と呼んで差し支えないと思います。
 別冊少年マガジンに三度、掲載された『特別編』は収録されていません。これらは少年マガジンと並行して連載していた月刊ガロのものを一部改稿して転載されたものなので、文庫に入れなかったのだと思われます。
 よって、この文庫には「鬼太郎の誕生」は収録されていません。少年マガジンの連載は、すでに鬼太郎が妖怪界で有名になっている状況として開始されますので、これで正しいと思います。

 収録は扉を含めてすべてです。このこだわりが素晴らしい。
 一部、雑誌からコピーしているそうで絵が荒いのですが、恐ろしいことに(笑)当時の広告などもそのまま入っています。これはこれで面白い♪

 話の間に「妖怪紳士録」という妖怪解説文が挿入されており、これが短文ながら名文です。
 一つの妖怪について、キャラとしての解説と伝承の解説とを併記してあるため、どこまでが“本当の”妖怪で、どこからが水木翁の創作なのかが、容易に判ります。
 世に妖怪モノの漫画を出しているプロは山ほどいますが、連中の大半は、この「妖怪紳士録」を読んで、自分が『鬼太郎』のキャラ設定をパクってるだけだと自覚・猛省すべきだと思います。

 そして、第5巻の巻末には、『鬼太郎』作品の掲載リストがあります。
 これが、どえらい資料で、びっくりです。関東水木会おそるべし!