八せん終わり、不成就日、三隣亡、葵祭 (旧暦 卯月四日)

 月が三つもあるんだ、この世界。しかも大小バラバラで。
 異世界よのぅ。

 まさか根岸さんのモノローグが入るとは思わなかった。
 とは言え、馬車襲撃のときの蜘蛛子さんを見るのが無垢な赤子っぽくない表情から、根岸さんの意識があったと感じてましたけどね。
 そうか、やっぱり生まれたてでも前世の意識があるんだ。蜘蛛子さんだけかと思ってましたが、人間でもそうだったのかー。しかも両親たちの話す異世界語を理解できてるなんて、「アイキャントスピークイセカイゴ」な蜘蛛子さんより恵まれてね?

 勇者サイドの……というか岡ちゃんの話も含めてまとめると。

 神言教は天の声(聞こえるの転生者だけじゃなかったのねん。きっとアラバにも聞こえてたんだな)の内容を素直に受け入れて、スキル上げを徳と考える。スキル上げを推奨する立場からか、勇者の管理権も握っている。
 女神教は天の声を女神の声とし、女神に捧げる意味でのスキル消去を徳とする。当然、スキルを上げるのが実質的な仕事となる勇者を認めない。ついでに蜘蛛を女神の眷属と考えている。
 そして、両者は互いに敵視し合っている。まー考えかたが真逆だし、宗教対立やね。
 神言教のトップの独り言からすると、両者の崇拝する神は同一。たぶん、前にチラッと出てきた、天の声をまるで自動的に喋っている女性のことだと思われますね。イメージからすると、拘束されてシステムに利用されてる感じ?
 この二つの宗派に加えて、エルフ族が第三勢力となっている。その里が女神教の街に近いということは、女神教とは少なくとも対立はしていない。一方で、偽勇者にエルフの里へ進軍させるくらいだから、神言教とエルフとの仲は最悪と思われ。クーデターの際、立派に育った吸血っ娘に首をはねられたのが族長だろうね。
 さらに第四勢力というか人類に敵対する大勢力として魔族が存在する。長は魔王アリエル。
 この他に管理者がいる。たぶん基本的には中立。

 といったあたりが、おおまかな構造ですかね。
 神言教のトップ、エルフ族長ともに、転生者のことを知っていた。知っていて何かに利用しようとしてる?
 しかも、神言教のトップはアリエルのこともよく知っている様子。女神教じゃないのに蜘蛛に詳しいって何だよそれ。

 首から下が復活した蜘蛛子さんが何の因果か吸血っ娘の実家近くに辿り着いて、乗りかかった舟で護衛することに。
 その場所が女神教の、つまり蜘蛛を神聖視する土地柄だったのは、これまた何の因果か。
 恩を感じたからか根岸ママ、ビラ配り(字が綺麗に並んでたから活版印刷か? 街の印刷屋に依頼したとして高くついただろーなー)までして大宣伝してくれて。
 おかげで蜘蛛子さん、神様扱いされてまっせ。大行列だから貢ぎ物で太るぞ(笑)。