(旧暦 長月十七日)

 写真家・田中長徳さんが、ご著書の中で、

 135版、特に一眼レフには獲物を狙う肉食獣のような攻撃性があり、周囲を警戒させてしまう。
 一方、大判カメラにその性格は無く、むしろ大型草食獣のような無害さを感じさせる。ニューヨークのかなり物騒な地域に持って行っても危険な目に遭ったことがない。

 と、書いておられました。
(※ 妖之佑による要約。なお、大型草食獣は断じて無害ではなくゾウやサイやバッファローはもちろんカバも機嫌が悪いとメチャクチャ危険。コンボイか戦車が全速で突進してくると思って、まちがいない。なので本来、大型草食獣は警戒すべき存在であり、充分な距離を取らねばならない。長徳さんの言葉は、あくまでもイメージ的な比喩と捉えるところ)

 フィルム時代は、その使い分けができていたのですよね。
 妖之佑は大判を持っていないので、中判カメラが、その役を担ってました。まあ持ってるったって、一眼が一台、二眼と距離計連動が二台ずつという計五台だけですけどね。しかも、うち二台はジャンクで買って一度もフィルム入れてないし(汗)。
 距離計連動は二台ともプレス用なので実は、わりと攻撃性があるほう。
 一眼レフはウエストレベル・ファインダー、つまり上からファインダーを見下ろして腰だめで写すタイプなので、確かに攻撃性とは縁が遠い。これを持ち歩いて構えても周囲の誰も気にしなかったですよ、ホント。
 持ってませんが、同じ中判一眼でもアイレベル・ファインダーを使うペンタの 67 ですら、さほど圧しは感じませんね。デブっとしてるからかな? 同じくペンタでも 645 は、わりと攻めの姿勢。
 二眼レフは、本当に無害な感じですね。警戒されることなんてありえない(昔々は、これでも報道用だったんだけどね)。
 実のところ、フィルム終焉の頃からですと、135版でも一眼レフでない限りは、そんなに警戒されることはなくなってました。距離計連動で 35mm あたりの準広角を固定したタイプなら、安心して写して歩けます。カロワイドとかマミヤ35 とかオリンパス35 とかですね。まして折り畳みの蛇腹なら無問題♪ 代わりに声は、よくかけられましたけどね、旧カメラに興味をお持ちの層から。あるいは横目で探ってくる視線とか(笑)。
 持ってないけどライカだったら、よりその傾向が強いでしょうね。ただし、ひったくりや置き引きに要注意かもしれんが……。

 デジタルになって、この棲み分けというかカテゴリ分けが、できなくなりました。
 ガタイのでっかい中型カメラですら攻撃性を醸し出すのは、デジタルが写真をその場で確認できることと、何より撮影枚数が多いことが原因でしょうね。だからと言って、デジタルなのに撮影枚数十二枚とかって仕様、やる意味ねーし。
 攻撃性を感じさせないデジタル・カメラって、どんなものなんでしょうかね。それが判ると路上観察も安心してできるんですけどね。

 まあ現在、もっとも攻撃性が高く警戒されやすいのはケータイと言うかスマホによる撮影ですけどね。
 スマホに比べたら、はっきりとカメラを主張して隠さない機種は、たいがい人畜無害で善良なイメージがあるかもしれん。一眼レフと、ミラーレスでもレフのシルエットを持ったタイプは除くけど。あと、今は寂れたけどネオ一眼のタイプも圧しが強いかな。

 んー。何かこう、フィルム時代の蛇腹暗箱を彷彿とさせるようなデジタル機種って作れないものでしょうかねー。それがあれば、まさに人畜無害カメラになりうるんですが。
 て言うか、だからこそ今にフィルムを使う意義があるのかもしれませんね。

 そんな妖之佑は、ミラーレス+ボディーキャップレンズだけで歩いてますけどね♪