(旧暦 神無月十七日)

 カメラがフィルムからデジタルに移行して、何がメリットだったか。

 撮影枚数云々やら撮影済み写真どうこうについては散々言われていることですから、わざわざ触れません。
 妖之佑個人として大きかったのは。

 一つは、以前に日記に書きましたとおり(2012年11月26日の日記ログ)、パノラマ写真が身近になったことですね。
 何度も言うことですが、上下をトリミングしただけの横長プリントのことではなく、ちゃんとレンズをぐるりとパンして撮った真のパノラマ写真ですよ。
 フィルム時代、パノラマ写真を撮るには専用のパノラマ・カメラが必要でした。安価な物もありますが基本は高価だった。これがない人は、普通のカメラで何枚かパンした写真を撮って焼き付けの際に、あるいは焼いてから継ぎ接ぎするという手法を取っていたようです(露出合わせが大変だったろーなー)。て言うか、自分で焼く人はともかく、パノラマ写真のプリントを受けてくれるラボが限られていたと思います。そんなこんなも、今では写真をスキャンしてPCのソフトウェアでパノラマに合成できるようですね(スキャナに取り込んだ時点でアナログでなくデジタルになってますが……)。
 でまあ、そんな機材的にもプリント的にも面倒だったフィルムに比べて、デジタルのパノラマ写真は本当に手軽になりました。専用カメラを買う必要がないというだけでも大メリット。パノラマ機能付きを選べばいいのですから楽なものです。フィルム時代は「パノラマ付きカメラ」って言っても↑のとおり上下を塞いで横長にするだけの代物でしたからね。ぶっちゃけ、ごまかしまやかしわいわいわいなレベルだった(日本のメーカーは何かブームが起こると、こぞって、この手のインチキ製品を作るから始末が悪い)。

 第二に、ハイスピード撮影が容易になったこと。
 パノラマと同じで、デジタル化によって機能が身近になったということに尽きます。
 ハイスピードというのは、1/8000秒とかの高速シャッターとは違います。
 ええと、TVや映画など私たちの観ている動画が実は静止画を連続して見せたものだということはお判りでしょうか。要するに、退屈な授業中に教科書の角にイタズラで描いた「パラパラ漫画」と同じ原理ですね。で、映画だと一秒に二十四コマが、TVやヴィデオだと一秒に三十コマ(日本の場合)が詰め込まれています。
 ハイスピード撮影とは、これらを越えるコマ数を叩き出す撮影のことだと思って、まちがいありません。乱暴には、民生用ムービー・カメラは極低スペックのハイスピード・カメラであり、その末席を汚していると言ってもいいかもですね。
 ハイスピードの用途は、ご覧になったことのあるかたも多いでしょう。水面に雫が落ちると綺麗な王冠ができる、いわゆるミルク・クラウン。風船が破裂する様子。車の衝突実験に臨むダミー人形さんの勇姿。などなど通常では観られない不思議な瞬間を切り取るのがハイスピード撮影のお仕事だと思います。
 業務用はフィルムもデジタルも別格としまして。
 一般市販レベルのフィルム・カメラで、これをやるのは無理でした。F3 と専用モードラのコンビでミラーアップ撮影して秒六コマ。F5 が秒八コマ。ペリクルミラー搭載の EOS RT で秒五コマ、同じく EOS-1N RS が秒十コマ。RT は別としても、プロ御用達の高級機群でも連写では、当時としてはお手軽だった8ミリ・カメラにすら届きません。用途が違うのですから、そもそも無茶な比較ですがね(笑)。映画機材で有名なベル&ハウエルが出していたスチル・カメラの「フォトン」にはムービー・カメラの技術が流用されているそうですが、それでも連写スピードはモードラ付けた F3 程度だったようです(とは言え、ゼンマイ仕掛けの連写で F3 にコマ数が並ぶだけでも、びっくりだよ)。
 打ってかわってデジタルは凄いですよねー。フィルムについて書きすぎたので簡単にすませちゃいますが、普通にカメラ買おうとしてて、ちょっと考えてハイスピード・カメラにするって選択肢があるんですから。お手軽になったものです。

 三番目。
 ミラーレス一眼の台頭もあり、フォーマットによっては交換レンズが、フィルム時代と比べて格安になったこと。
 これも日記で書いたことですが、オリンパスのボディーキャップレンズが顕著な実例だと思います。フィルム時代、トイカメラ以外で、あそこまで廉価なレンズなんてありませんでしたからね。特に魚眼があんなお安く手に入るなんて、これはもうデジタル様々ですよ♪ ホロゴン相当を早く出しちくりー!
 レンズ固定のコンデジについても、特に高くないカメラで「光学40倍」とか平気でありますからね。フィルム・カメラでは考えられなかったコスパです。

 四つめ。
 本当に妖之佑の個人的で狭量にすぎる、くっだらない話なんですが。
 デジタル・カメラを常用することで、電子制御カメラに対する不安が払拭されつつある。
 という事実。
 フィルム時代、妖之佑は、とにかく電池切れに神経質で、はっきり言って電子シャッターのカメラ持ち歩きでは心がおちつきませんでした。いつシャッターが下りなくなるか不安で不安で(苦笑)。
 もちろん取り越し苦労ではあるのです。出かける際に新品電池に交換するか予備電池を持っていけばいいだけですし、電池が切れても昔ならともかく平成の世、そこらの店で買えばいい。いや、置いてるでしょボタン電池の数種類くらい。
 なのに、妖之佑は電池切れを恐れて、ほぼ機械式カメラ一筋でした(大笑)。
 そういったアレルギー反応的な先入観が、デジタル機を持ち歩くことで緩和されつつあるのですよね。もちろん、機械制御に対する関心が薄れたわけではありません。電子シャッターで 1/8000秒を実現するよりも、機械シャッターで 1/4000秒のほうに強く興味を惹かれるのは、そのままです。
 でも、実用では機械も電子も変わりゃせん、という認識へとシフトしてきているのですよね。これはデジタルのおかげです。
 ただ、困ったことが一つ。今まで妖之佑の旗艦カメラは New FM2 であり、それが F2フォトミックへと移行しつつあったのですが。ここにきて、F3 が欲しくなっちまってるんですよね(爆)。つか、無性に欲しい! これはメリットなのか? デメリットなのか?

 いじょ。