三の酉 (旧暦 神無月十三日)

 日本相撲協会は相撲関係者……と言うと判り辛いか、本場所の土俵を進行する人たちだけで運営されています。力士、元力士(年寄、若者頭、世話人)、行司、呼出、床山ですね。
 相撲を一切知らないホワイトカラーはいません(評議員会は実質、外部組織みたいなもの)。このスタイルが、大相撲を廃業してプロレスに転向した力道山さんによる日本プロレス協会の運営にも引き継がれ、その後もプロレス運営の基本スタイルとなっているのは、ご存じのとおり。

 この構図には当然のこと、メリットもデメリットもありましょう。
 メリットとしては。相撲をよく知った者のみで運営したほうが何事もスムースに進む。無知な外野にあれこれ口をはさまれたり無茶振りされると現場は混乱するし、力士の使い捨てにすらなりかねないので、これらを防ぐ意味でも有効。
 デメリットとしては、どうしても組織が内向きになってしまいがちになる、世間知らずな団体になってしまう、ということ。社会とで価値観に落差を生じてしまい、外部の人から見ると「ありえへん」ことを平気でやっちまう(ほとんど永田町だな)。

 これは、プロレス団体でも、よくある話で。
 ワンマン運営なカリスマ・力道山さんを失った日本プロレス協会が、レスラーとフロントとの軋轢によって最終的に崩壊したのは、よく知られたこと。
 それを受けてレスラー主体で運営していた全日は、潔癖性の馬場さん亡き後にゴタゴタの連続。まるで日本プロレス協会をなぞってるみたいにね。
 一方で新日は猪木さんがカリスマではあったものの、ホワイトカラーの権限も強いように思えました。結果、興行的には大成功の連続で、日本最大規模のプロレス団体にもなっている。が、その反面、レスラーとフロントの温度差、あるいは対立も深刻な様子で、橋本選手の解雇やら、蝶野選手によるフロント批判など、話題に欠くことがなく……。
 カネの力に物を言わせた強引とも言える各団体からの著名選手大量引き抜きで即席立ち上げをしたSWSは、あっという間に空中分解。これなど、フロント×レスラーの典型でしょうね。
 要は現場と経営陣とのバランスが肝心なのだが、これが難しいらしい。

 とは言え。

 少なくとも今の日本相撲協会においての一番の問題は、“世間知らず”だけで組織が運営されていることに尽きると思います。
 そりゃさー、大半は中卒で大相撲の世界に入って、そのまま大人になってオヤジになっちまうんだぜー。常識知らずでも無教養でも仕方ないって。そこだけは本人の責任じゃない。で、そんな“おこちゃま”なオヤジたちが後進の指導をするわけだから、組織として発展どころか化石化するに決まってる。
 だからこそ、運営には新しい血、すなわち外部畑の人間も必要なんだよ。評議員とか横審とかの無責任なご意見番でなく、直接に携わる外部出身の人がね。
 例の力士暴行死事件のあと協会は外部理事を受け入れたものの、あれは文科省に厳しく言われてのことで、外野から見ても渋々嫌々なのが、よーく判った。親方たちの(表向きの)発言とは裏腹に、反省・改善の意志は見えなかったですね。で案の定、今回の事件に至る。

 本当の意味で外部の人間を受け入れられないなら、やっぱりブチ壊すしかないと思います。
 簡単なんですよ。文科省が公益財団法人の肩書きを日本相撲協会から取り上げればいいだけ。それで一般の興行団体にする。そうなれば、本気で組織改革しない限り早晩、経営破綻します。そして分裂あるいは新団体の立ち上げで、大相撲競争時代に突入。中には悲惨な事態に至る団体も出るでしょうが、総合的には今の左団扇な独占興行よりマシになると思うんですよね。プロレス業界が、そうであるように。

 若い力士が親方と先輩たちに殴り殺されて十年。
 なのに何も体質改善されていない組織なんて不要だと思いませんか?



 暴言を言ってやるとサー。
 誰か外部の“力士”が協会の土俵に乱入して、ビール瓶とカラオケ用リモコン(もちろん演出用に壊れやすく作られた小道具)で横綱を殴打。不意討ちで無様に倒れた相手を見下ろしながら、「おいおいおいおい、もう終わりか? 冗談じゃねーよ。大相撲ファンの皆さん、目を覚ましてください!」と言いつつ飛行機のポーズでぐるりと回ったら良いと思うよ♪
 それくらいの劇薬・猛毒による荒療治が必要な状況だと思うね。
 極端ではあったものの、覆面横綱播磨灘は、こういうことを言いたかったのかもしれないな。