(旧暦 霜月十七日)

『世界の怖い夜』

 あのピスタチオの二人が、ゴールデンに出演するようになったのかー(しみじみ)。



 怖いですよ。
 ええ、怖かったですよ。

 とは言え、大半は「ホラー映画の怖さ」なんですけどね。

 いや、過半数どころか、もう八割がた作り物映像でしょ、あれ。
 台本通りにパンするカメラ・ワークでバレバレだってーの。例えば最後の証明写真機のヤツとか、そこに向ける必然性なしに、きっちり“それ”のいる方向にカメラが向くなんて、他の理由ではありえませんから。
 面白がって自作動画を拡散させる輩のせいで、本当に危険な動画・写真が埋もれてしまうのは、ヤバいんですけどねぇ……。

 そして。
 自宅に起こる怪奇現象に悩む女性の件は、あれこれと気になりました。

 一つ。
 深夜に起き出して台所に降りて立ちすくみ、いきなり窓をバンバン叩く。しかも本人、まったく憶えていない。
 たしかに薄気味悪い行動ですが、あれを短絡的に憑依とか考えるなよ。まずは精神科医に診せるべきだろ。いわゆる夢遊病でしょ、あれ。心を病む原因となるストレスが仮に怪奇現象によるものだったとしても、あの行動そのものまで怪奇現象に括るのは乱暴で危険すぎます。このあたり、さすがTBSと言うべきか。

 一つ。
 あのお宅、かなりのお屋敷でしたよね。ガレージも広くて……と言うか納屋って感じでしたね。おそらくは、代々続いてきた、それなりの規模の農家さんだと推測します。
 で、そんなお屋敷の佛間にある佛壇、そしてその上にある神棚がとりわけ立派だった。
 にも関わらず、特に佛間で怪奇現象が起こるというのがね……神も佛もないと言いますか、設備は立派でも信心がないからなのか、とにかく複雑な思いで観ていました。
 あれですよ。お寺や神社は聖域ですが、住職や宮司が不信心だったり、あるいは無人になって朽ちたりすると、逆に怪奇スポットになっちまうってことですよ。黒ミサを行うに最適な場所も、荒れ果てた教会ですからね。
 あの女性、怪奇現象が怖いからか手首に数珠を巻いていましたが、それよりまずは神棚や佛壇を掃除、散らかったままの佛間を整理整頓すべきだったと思います。あの様子だと、お世話もせず放置状態な感じでしたからねぇ。

 一つ。
 人間は死ぬと佛になる。
 嘘ですね。大嘘ですね。
 ダメ人間は死んでもダメ人間のまま。むしろ肉体という制約から解き放たれた分、タチが悪い。物理法則無視して出没しますから……。
 故人を責めるのはアレですが。自殺したうえに自分の孫娘に祟って、しかもそのお子さん、つまりは曾孫には「あれ嫌い、怖い」とか目撃証言で言い捨てられる曾爺様の霊って、みじめすぎるでしょ。情けないでしょ。
 妖之佑は日頃から「バカは死んでも治らない」と考えています。「悪人は処罰されても反省しない」とも考えています。つまりは、そーゆーことなのでしょう。悪さをする霊は、生きている頃から性格に難ありだったのですよ、きっと。
 となると、「憎まれっ子世にはばかる」が「あの世」にまで波及していることになりますが……傍迷惑ですねぇ。
 生身の体では、あの世に対して何もできません。神佛には、ぜひとも何とかしていただかないと、本当に。



 毎回毎回、出っ歯野郎が司会しているので、あまり好きな特番ではないのですが。
 それでも、今回は少し考えさせられる内容(制作の意図とは別に)だったのは、自分的には収穫でした。