『ソードアート・オンライン』物語内のゲーム「SAO」のヴァーチャル世界。
よく言われる「ネトゲは社会の縮図」というのをよく顕してますね。これに関しては、比較される『.hack//』シリーズより優れていると思います。
以前、威圧的に登場、出しゃばってボスにぬっころされた阿呆なおっちゃんも所属している「アインクラッド解放軍」というのが何者なのか、よく判らなかったのですよ。ユーザーをこのデス・ゲームから解放すべく最前線で闘っているのは「攻略組」であり、中でも代表格は「血盟騎士団」ですからね。
しかも、始まりの街に駐留している? 街には軍がいるから用心?
今回、よーく判りました。
あれですね。軍ってのは、『ボトムズ』にあったウドの街の治安警察みたいなものっスね。だから、SAO が始まって二年も経つのに始まりの街に居続けてロクに開拓も攻略もしていない。ボスにやられた高圧的なおっちゃんは軍では、かなりマシなほうだった、と。
ったく、暴力団はいるし強盗団もいるし殺し屋集団までいるし、かと思えばボランティアな託児所もあるし安穏と暮らしているご老人がたもいる。
ホント、リアル社会のまんまですな(NPC で補っているとは言え、たかが数千人のユーザーで、そんな構図が可能なのかどうかは、さておき)。
ただ。
この作品中、どうしても気になるのが「ナーヴギア」というハードウェアの存在です。
無線接続ながら装着者の脳波信号すべてを身体に伝えさせず回収、ゲーム・サーバーに送り込み、サーバーからのレスポンス(要するにゲーム世界での感覚)を脳に送り返す。このため、ゲーム内でどれだけ暴れても傷ついても実際の体はピクリとも動かない。
一方、ゲーム世界では五感すべてが存在。痛い、重たい、旨い……等々。さらには、ボスに挑む前の軍の連中が行軍で息が上がりバテていたように、しんどいなどの疲労感などまで! さらにさらにキリトとアスナのアレ(「事後」表現だけでしたがね)までも……。そーとーのデータ量を扱っているわけで。
トンデモ御殿な代物とゲーム世界です。茅場晶彦がエージェント・スミスに見えるほどにね(笑)。
時代設定は開始時点で2022年。民生用PCで扱える情報量は充分クリアしているでしょうが、ナーヴギアによる身体の無力化についてだけは技術設定が進みすぎている印象を、どうしても抱いてしまいます。また、技術的に可能だとしても、民生発売前にアーケード版もあったとのことですから、どうして厚労省が動かなかったのかが不思議(それとも動いて認可した? ありえねー)。
同じ原作者さんによる『アクセル・ワールド』は『ソードアート・オンライン』より二十年後の物語であり手術による電脳化がなされている社会(『攻殻機動隊』みたいなもんやね)なので、超リアルで現実と区別困難なヴァーチャル世界というのも充分うなずけるのですがね。
まあ『ソードアート・オンライン』はラノベですから、そこまでSF考証を求めるのは筋違いなのかもしれません。
ただ、自分としては、どうしても気になってしまうのですよ。
どうせなら『アクセル・ワールド』同様に電脳化が浸透した社会にしてもよかったのに、と。ナーヴギアに仕込まれた殺傷システムは、ゲームへの初ログイン時に電脳を介して殺傷ウイルスを仕込まれた、に代えても成立するでしょうし。
一視聴者の戯れ言ですよ。