(旧暦 如月廿二日、二の午)

 やっと買えた。

 

 クラフト アップル ワークス(CAW)による「MGCリバイバル」シリーズのヘビーウェイト樹脂製モデルガン「SIG・P210」です。
 MGCでは「SIG SP-47/8」の製品名で製造販売されていました。それを継承・改修したものですね。

 モデルガンの一時代を築いたMGCが解散後、一部の金型はタイトー、新日本模型と引き継がれ、今はCAWで製造販売(ウエスタンアームズとタナカもMGCの金型を持ってるらしいが、よく知らない)。
 それとは別に、MGCから独立する形で、KSCとタニオ・コバが今でもモデルガンのメーカーとして頑張っています。
 現在「MGC」の名は、トイガン売店の「NEW MGC 福岡店」が名乗るのみです。淋しいもんだ。

 聞くところによりますと、SP-47/8 はMGCの樹脂製モデルガンとしては、かなり初期の物だったそうですね。なので、アクション重視のため、外見を相当に妥協していたそうな(主に銃口側)。ネットで写真を見つけたら飯噴きますよ、あれは。
 その外見上の欠点をCAWは改善して出してくれている。ありがたいことです。なお、実に十年ぶりの再販だそうで、びっくりです。

 改善したとはいえ、基礎部分はMGCのままなので、構造も実銃のショート・リコイルと違い、単純なブローバックです。スライドを引ききっても、銃身はまったく後退しません。当時は平玉火薬で動作させるため、この構造が必然だったのでしょう。
 MGCがGM5(ガバメントのモデルガン第五世代)を出したとき、キャップ火薬で作動するショート・リコイル(疑似)を実現したので、いずれ SP-47/8 も。と期待していたのが、まさかの会社解散でしたからねぇ。

 とは言え、結果的には外見の欠点を直した物、しかもヘビーウェイトを入手できたわけですから、結果オーライということで。
 ヘビーウェイトで良かった、と言いましたが。実のところ、P210 の良さは腕時計で名を馳せるスイス工業技術の美しさですから、むしろ艶を持つABS樹脂のほうが向いていたかもしれません。うん、ABS仕様も出して欲しかったな。

 これ、ウッド・グリップを付けたいよなあ。実銃で言うと初期デザインの(溝の太い)木グリ。
 市販品もあるけど、初期仕様でないフルチェッカー。しかも長らく品切れ。orz
 自作? 不器用ですから自分。



 ついで話に。

 SIG とはスイスにある銃器ブランドで、会社としての名は直訳で「スイス工業組合」。その略称である「SIG」を企業ロゴにしていた。
 で、機械製造業の一つとして銃器も扱っていた(外国じゃよくあること。日本では豊和工業がそう)。
 後に、独逸のザウエル・U・ゾーンを買収、ブランド名を「SIG/SAUER」に変更。
 さらに後に、銃器部門のみ売却され、今はまったく別の会社がブランドを継承しているそうな。

 SP47/8 は SIG 時代の銘銃で、スイス軍も制式採用していました。
 P210 は、これの市販 ver. に付けられた製品名。以後、SIG/SAUER の P220 や P230 などに続くナンバリングの第一弾というワケ。
 もう少し詳しく言いますと。
 P210-1 が一般市販用。
 P210-2 はスイス軍制式の改良型。
 P210-5 は競技射撃用のターゲット・モデル。
 -3 と -4 は、記憶が定かではないのですが、デンマークスウェーデンや独逸向けの軍用か警察用だったかな?
 さらに、-6 以降も続いているそうですが、よく知りません。(;^_^A

 さすがスイス製というわけでもないでしょうが、精密さでは当時の自動拳銃の上位に入ります。
 理由はスライドとフレームの関係。
 当時の多数派は、スライドがフレームのレールを噛む構造。跨座式モノレールみたいな感じと思えば近いかも。ガバメントも P38 もハイパワーもそう。
 それが P210 では、逆にフレームがスライドのレールを噛みます。このほうがスライドの歪みが出にくく、スイスならではの工作技術と相まって精度を保てる、ということ。
 この構造は、P220(自衛隊の「9mm拳銃」でもある)以降にも受け継がれています。
 同じスライド構造なのがチェコ・スロヴァキアの Cz75 で、そのメカをまるっと U.S.A. のブレン・テンが真似しましたっけ。
 シングル・アクションの P210-1 とダブル・アクションの Cz75(ただし俗に「ショート・レール」と呼ばれる初期型に限る)とを当時、イチロー・ナガタ氏は大絶賛してましたね。

 確か、イチロー・ナガタ氏は空中ターゲット射撃の練習に、この P210-1 を使用していたと思います。力の要らないシングル・アクションであること、銃の精度がオート銃の中では高いこと、握りやすいこと、あたりが理由だったような。
 で、それを鵜呑みにしたのか『シティーハンター』で精密射撃が必要なとき冴羽が P210 を使ってました。あれは滑稽でした。
 イチロー氏は P210-1 をそのままでなく、.22口径のコンバージョン・キットにすげ替えてたはずです。空中ターゲット撃ちなので、パンチ力よりも精度を優先(反動を少なく)したワケ。
 そのあたり『シティーハンター』ではスルーだったもんな。それなら、むしろS&Wリボルバーの小口径でよかったし、いっそのこと単発銃のほうが一発勝負として説得力あっただろうに。

 そう。コンバージョン・キット。
 P210 の、もう一つの売りがこれ。
 標準の9mmパラの他に、.30ルガーと .22ロングライフルを使う用の銃身、メイン・スプリング、スライド、マガジンのセットがあったのですよ。.22 に至っては、本来のショート・リコイルをシンプル・ブローバックにするんじゃなかったかな。

 今でこそ、自動安全装置などなどが必須となっている情勢ですが。
 当時の中では、少なくとも P38 とかと比べれば、ずっと信頼性のある銃だったと思います、SP47/8 。
 唯一、シングル・アクションなのに安全装置がサム・セフティのみというのが、軍で携行するには問題だったことでしょう。
 ただなあ、もしもグリップ・セフティがあると、たぶん握りやすさが犠牲になると思うんだな。ジレンマだわ。

 仮想空間にて自分が実戦用に同時代の大型オートから一つ選ぶとするなら。
 やっぱりガバですね。
 残念ながら SP47/8 は実戦用より観賞用となります。(;^_^A

 ついでに、もう少し後、60~70年代の世代から選ぶとなると、Cz75 をどうしても外せません。もちろん初期型のみ。
 他に、めぼしい大型オートが無いんだよなあ、60~70年代半ばって。第二次大戦から、ずーっと進化が止まってる。
 80年代に入り、米軍の制式拳銃トライアル「XM9」によって、停滞していた自動拳銃の進化が一気に強制的に進んだわけですね。

 長くなりそうなので、今日はここまで。