天一天上 (旧暦 睦月九日)

 せっかくのノリなので、マグナム・オートの話に繋ぎます。

 例によって畳んでおくので以下同文。


 マグナム弾を撃つオートというと、もちろん何種類もある。弾薬メーカーが「こればマグナムだ」と言えばマグナム弾になるわけだから(笑)。
 そんな中、個人的に代表的なマグナム・オートというと三つ挙げたい。

※ オートマグ MODEL 180(.44オートマグピストル)

※ ウィルディ・ピストル(.45ウィンチェスター・マグナム)

※ グリズリー(.45ウィンチェスター・マグナム)

 あえて、デザートイーグルは入れない。
 あれの最強弾は「.50アクション・エクスプレス」であり、「マグナム」を名乗っていないから。
 たぶん、「マグナム銃」呼ばわりされたくないんだろーなー、と♪

 マグナム弾用のオートとして、パイオニアにあたるオートマグ。
 .44口径の 180 の他に、.357口径の MODEL 160 もあったが、メインは 180 。
 鉄でなくステンレス製のみのシルバー色と、今で言うレトロフューチャーなシルエットで銃器マニアのハートを鷲掴みにしたし、今でも鷲掴みし続けている。と思う。
 ジャムが多かったため「オートジャム」などと悪口叩かれたのも堪えたのか、開発・発売したオートマグ社はソッコー倒産。TDE社が後を継ぐも失敗。廉価な .22口径競技銃やデリンジャーをメインにしていたハイ・スタンダード社が受け継ぐも、またも失敗。さらに引き継いだAMT社を最後に生産終了という、商業的には不遇な製品。
 ちなみにモデルガンでは、MGCが「オートマグ」、コクサイが「ハイ・スタンダード」、マルシンが「TDE」刻印になっていた。MGCのはABS樹脂製だったせいでか黒いボディなのが違和感バリバリだった(爆)。
 たぶんレギュラー生産での最終型は、映画『SUDDEN IMPACT(ダーティハリー4)』に併せてAMTがクリント・イーストウッド氏に贈呈した長銃身カスタムの「CLINT-1」(ただし、劇中でハリー・キャラハン刑事が握っていたのは撮影プロップの「CLINT-2」)。
 この CLINT-1 をマルシンが「TDE」の金型を利用してモデルガン化し、それを最後にこの金型はガスガン用に改修されたらしい(涙)。
「CLINT-1」の後は後継機であるオートマグII へと生産が移行。以後、III 、IV 、V と続くが、これらは“初号機”ほどの面白みがないのでスルーさせていただく。
「オートジャム」の汚名については、後で補足する。

 ウィルディは、実は個人的には重視していない。
 専門誌の記事を読んだだけだが、あの前評判倒れだったブレンテン並みに微妙な製品だと感じているから。
 そもそも、量産品なのに彫刻があるだけでも胡散臭い(笑)。
 いや、断じて粗悪品とかではないんだどね。まあ、見た目かな。(;^_^A
 ステンレス製だったり、銃身の上に放熱用の穴空きリブがあったり、機構が回転式ボルトだったりと、先行したオートマグをかなり意識していたと思われる。もっとも、ボルトの回転にガス圧を利用していた点は、反動を利用したオートマグとの相違点になるが。
 ぶっちゃけ、オートマグが商売的に失敗したのに、なんでこれが生き残ったのかは理解できないし不満。

 グリズリーは、実は目新しい点が、ほとんどない。
 理由は、パテントの切れたガバメントを丸写ししたコピー銃だから。乱暴に言ってしまうと、.45WM口径のガバメントを作ったに過ぎない。
 LAR社は“マグナム・オート先輩”である二つの会社みたくゼロからの開発という冒険をしなかった。構造に信頼あるガバをマグナム用に強化するという安全策で出た。何せ、八割のパーツがガバと共用できるということで。
 この無難路線が功を奏したのか、グリズリーは安定した性能を発揮していたそうな。ガバとパーツが共用できるということは、つまり市場に山ほどあるガバ用カスタム・パーツが使えるということでもあり、マニア心をくすぐったであろうことは想像に難くない。

 さて、↑の三つを比較する際、かつての月刊『Gun』誌にて、ターク・タカノ氏による興味深い比較記事があった。
 詳細は省略するが、総評では予想どおりグリズリーが一番の評価を得た。決め手は、やはりガバメントをコピーしたが故の作動の確実さと操作性。
 メカに凝りすぎたウィルディが、もっとも低評価。これは納得いく。
 ターク氏も「意外」と言っておられたのが、オートマグの健闘ぶり。比較テストでは一度もジャムしなかったそうで。
 ちゃんとメンテすればジャムらないほど、オートマグの出来は良い。と言っておられたと思う。
 それと、もう一つターク氏のご意見として。
「オートマグは材質の選択に失敗した」
 というのがあった。ターク氏によるとオートマグに使われているステンレス綱は粘りが強く、ボルト回転式という複雑な動作を邪魔しかねないそうな。
 ご存じのとおり、ステンレス鋼は鉄とクロムの合金なので、その比率で性質が変わってくる。よく知られるものに、台所用品などで目にする「18-8(SUS304)」や、高級腕時計に使われたりする「SUS316L」などがある。
 配合比による性質の違いを理由に、あのコルトが長らく自社製銃のステンレス化に踏み切らなかったことも、よく知られている。
 ターク氏は、このステンレス選びをまちがえなければオートマグは「オートジャム」にはならなかったはずだ、と言っておられた。
 今からでも、どっかやらないかな。