初大師、十方暮入 (旧暦 師走十一日)

 あのパイロットも、ついに値上げですか。
 新年を機に大半の万年筆が価格改定されていますね。
 いやむしろ遅かった。よくもここまで辛抱してた。凄い。

 コロナ禍もあってか、この三年間でプラチナとセーラーは確か二度に渡って値上げしてました。
 それに対して、パイロットは一部の品以外の大半の万年筆を価格据え置き。
 と言うか、パイロットって、品によっては二十年くらいか、それ以上もの間を値上げしてなかったですよね。

 パイロット万年筆のカスタム・シリーズは、パイロット自らが価格に対する縛りをしていたようなもので。
 カスタム845 、カスタム823 、カスタム743 、カスタム742 、カスタムヘリテイジ912 、カスタムヘリテイジ92 、カスタムヘリテイジ91 。
 これらは商品名を見た瞬間に定価が判る仕組みです。
 そう。最後の、つまり一桁目の数字が「万円」なんです。

 例外はカスタム74 。
 これ、コロナ禍の少し前あたりに、プラチナのセンチュリー、セーラーのプロムナードと並んで「一万円万年筆」の三役を担ってました。
 コロナ禍に入り、センチュリーは二度の値上げ、セーラーはプロムナードを廃版にして新たな「一万円万年筆」としてプロフィットライトをリリースするも、すぐさま値上げ。
 カスタム74 もコロナ禍には勝てずか、値上げしてました。末尾の「4」は、そもそも価格と無関係なのでしょう。

 で、お値段据え置きの話に戻しますと。
 カスタム743 と 742 は発売から三十年、823 は発売から二十年以上、845 は発売から二十年(ヘリテイジは、もう少し若い)。
 それぞれ発売時の定価のままで、ずーっとやってきてたんですよ。価格帯だけで言うなら、トミカ以上に企業努力していたかもしれません。
 しかも今回の値上げも数千円程度と、土俵際で踏み留まってる印象。
 言っちゃ悪いけど、セーラーなんて一度目の値上げで数千円、だけで済まずに二度目の値上げで万単位ですからね。しかもニブのデザインが簡略化して安っぽくなる。あれは、さすがに買う気が失せますよ。
 プラチナも、センチュリーの基本型が今や二万円って……さすがに高いです。上位品であるプレジデントと価格差がほとんど無くなってるんだもん。
 企業体力がダンチなのかなあ。とにかくパイロットすげえ。

 ただ一つ。
 カスタム845 だけがね。
 五万円から八万円へと、一気に三万円の値上げには、びっくりしました。エボナイト軸を漆加工なので手作業が多いからでしょうか。
 それでもねえ。
 同じエボナイト+漆のカスタムURUSHI が値上げ幅二万円ほど、というのに比べても 845 の上げ幅が大きい。
 つか、URUSHI と 845 の価格差がかなり縮まってることに違和感を憶えました。元々が約九万円と五万円という倍近い差があったのに、今や十一万円と八万円ですからね。
 こうなると、845 より URUSHI のほうが売れるようになるんじゃないかな? 共に高級路線ではあるものの、743 や 823 と同サイズの 15号ニブを持つ 845 と、独自の専用特大ニブである 30号を持つ URUSHI とではステータス感がダンチ。下手すると 845 は近いうちに廃版に追い込まれないか?
 などと心配してしまいます。
 ま、外野がヤイヤイ言っても始まりませんけどね。

 値上げは予想できたんだけど。
 警戒して、昨年中に何本か買っておくべきだったかなあ。
 ニブの種類つまり特殊なペン先豊富なのがカスタムの魅力なので、集めたい欲望があるんですが。
 一本あたり数千円のアップでも、本数集まるとすぐ万単位ですからね。(;^_^A

 昔と違って万年筆そのものが、機械式時計や管球式アンプなどと同様にマニアックでニッチなカテゴリになってしまってますから、薄利多売を期待できず大幅値上げも仕方ないことではあります。
 そんな中をパイロットは頑張ってるなあ。
 応援しなくては。