(旧暦 文月十四日)

 31日に書いた万年筆に関する妄想。
 読み返すと、不足だらけの間違いだらけですね。(;^_^A

 間違いのほうは、こっそり直してますが(苦笑)。
 不足分までは、さすがに、こっそりと書き足すというわけにも。

 なので、ここで補足します。
 なお、お金の関係で(笑)、妖之佑には少しの万年筆しか使用経験がありません。ですので、あくまでも知識のみによる記述です。まあ、これは日記であり妄想なので、それでもいいかなと。
 なので、そこんトコは、ご寛大なご容赦をお願いしますです。m(_ _)m



 31日に書いた趣旨では、万年筆の選択というより、万年筆の軸の選択になってました。それも機能面でのみの選択。要するに、吸入式かコンバータ式かカートリッジ式か、ということね。
 万年筆を道具としてだけ見れば、これでいいのですが。道具+α、つまりアイテムとして考えると、この視点だけではダメ。

 軸選びの、もう一つの重要な要素は軸の素材ですね。
 道具としては手触り感や重さ軽さにも関わりますし、あと見た目も永く愛用するには大切な点。

 軸の素材で、もっとも多いプラスティックは置いといて。他の主要な素材としては、エボナイトセルロイド、木(ブライア、屋久杉……等々)、ステンレス、銀無垢あたりかな。
 エボナイトは、かつての万年筆軸の定番中の定番。伝統的と言っていい。
 セルロイドは軽さと、彩りの華麗さですね。
 木は手触りと高級感。
 ステンレスは重さ(筆圧不要、重さだけで書ける)。
 銀無垢は、重さに加えてのステータス性。
 実用性と見た目で上手くバランスを取って、自分にとって理想の軸素材を探せばいい。ただ、31日にも言ったとおり、吸入式となると素材の選択肢も、かなり狭いのですがね。

 とりま、構造と素材を考慮して「これだ」という軸を決める。と。

 で、軸と並んで重要なのがニブ、つまりペン先です。
 ざっとペン先の種類を挙げてみますね。

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パイロット

 MS(ミュージック)……楽譜用特太字
 C(コース)……特太字
 BB(ブロード・ブロード)……極太字
 B(ブロード)……太字
 SU(スタブ)……太字⇔中細字
 M(ミディアム)……中字
 SM(ソフト・ミディアム)……軟中字
 WA(ウェーバリー)……軟中字・全角度
 FM(ファイン・ミディアム)……中細字
 SFM(ソフト・ファイン・ミディアム)……軟中細字
 FA(フォルカン)……毛筆
 F(ファイン)……細字
 SF(ソフト・ファイン)……軟細字
 EF(エキストラ・ファイン)……極細字
 PO(ポスティング)……極細字

 ジャスタス……軟度調整


プラチナ

 MS(ミュージック)……楽譜用超極太
 C(コース)……極太
 B(ブロード)……太字
 M(ミディアム)……中字
 SM(ソフト・ミディアム)……細軟
 F(ファイン)……細字
 EF(エキストラ・ファイン)……極細
 UEF(ウルトラ・エキストラ・ファイン)……超極細


中屋

 Music……楽譜用
 極太
 太
 中軟
 中
 細軟
 細
 極細
 超極細

 軟ペン加工


セーラー

 MS(ミュージック)……楽譜用
 Z(ズーム)……細字⇔太字
 B(ブロード)……太字
 M(ミディアム)……中字
 MF(ミディアム・ファイン)……中細
 F(ファイン)……細字
 EF(エキストラ・ファイン)……極細

 ふでDEまんねん……毛筆

 キングコブラ……毛筆
 キングイーグル……超極太
 クロスポイント……極太
 細美研ぎ……超極細

 コンコルド
 エンペラー……巻きペン先
 長刀研ぎ……毛筆

 21金

 レフティ……左利き用


モンブラン

 OBB(オブリークBB)
 OB(オブリークB)
 OM(オブリークM)

 クーゲル

                                                                            • -

 ざっと挙げました。
 ただ、オブリークモンブランの専用ということもなく、欧米の他社にもあるそうです。が、現在ではモンブランが主流らしく。

 さて。「極太」やら「細字」やら読んで判るものは放置しまして。
 独特なのだけ、大雑把にグループ分けしてみますね。

 スタブとズームは日本語を書くのに特化したものです。縦線が太く、横線が細い。
 本来の目的が楽譜記入であるものの、特性が似ているらしいミュージックも、この仲間に入れていいかもしれません。
 欧米のオブリークはアルファベット向けですが、考えかたは同じですね。

 毛筆のように書く目的のペン先の代表がセーラーの長刀研ぎでしょうね。それから、ふでDEまんねん。長刀研ぎは受注停止中、ふでDEまんねんはペン先と言うよりも完成したペンとしての名称。
 同じく毛筆調にもできるようペン先を柔らかくする加工として、左右をそぎ落とす方法があります。これが、フォルカンと軟ペン加工。フォルカンは製品ですが、中屋の軟ペン加工はペンの注文時に追加依頼するもの。

 先端が嘴のように下へ向いているのが、ポスティングとコンコルド
 ただし、コンコルドは受注加工であり、現在は受付していないそうな。て言うか、セーラーの特殊加工すべてが停止中。

 ペン先の背中に、もう一枚あてがう方法が、ジャスタスとエンペラー。
 違うのは、ジャスタスがペン先の軟度を調整する目的なのに対し、エンペラーは支えると同時にインクを溜めるもの。
 ジャスタスは完成されたペンとしての名前。エンペラーは、これまた停止中かな?

 セーラーのもう一つのご自慢である 21金は、14金や 18金に比べて金の含有量が多い分、柔らかい。つまり軟ペン先。
 同じようにペン先そのものを柔らかくしたのが、中屋の中軟と細軟。これに軟ペン加工を追加して、さらに柔らかくすることも可。

 モンブランのクーゲルはペン先先端のイリジウムを球形のままにしたもので、ペンを裏返しても書けるそうな。


 これだけ豊富な種類があるのだから選びたい放題…………とは実はいかなくて。
 先のペン軸との問題。

 つまりね。
 豊富とは言え、特殊なペン先は、付いている軸つまり製品が限られるのですよ。
 もっとも判りやすいのが、ジャスタスと、ふでDEまんねん。この二つはペン先を選ぶとかでなく、ペンそのものが特殊な製品として作られてますからね。パイロットなら、キャップレスも、これに該当するかな?
 国内でもっともペン先の種類が豊富なパイロットであっても、そのすべてを選択できる品は、カスタム742 とカスタム ヘリテイジ 912 の二つのみ。次点がカスタム743 、さらに下がってカスタム74 とカスタム ヘリテイジ91 。インク吸入式のカスタム823 は B・M・F の定番三種類のみ、カスタム ヘリテイジ92 でも四種類しか選べず、特殊ペン先には対応してくれません。しかも、「なら、カスタム742 でペン先を揃えよう」などと思っても軸が二色しかなく、しかも全ペン先に対応は黒軸のみ……なんでだよ。揃えたとしても、パッと見で判らず、ややこしくなるやん。
 他社も似たような状況です。プラチナも MS の対応品が限られ、しかも軸は黒しか選べない。あれだけ軸の種類が豊富なセンチュリーだと言うのに、もったいないなぁ。まあ、ご自慢の UEF がセンチュリーの色々な軸で選べるだけ、パイロットよりは、ずっと良いのですが。

 なので、ペン先の選択肢が多くても、軸と一体になった完成品となると、選べる範囲が一気に狭まってしまうのです。
 残念なことです。

 これに対応すべく、万年筆専門店の中にはペン先の付け替えを受けてくれる所もあるそうです。あるいは付け替えたペンを販売してくれる。これですと、例えば、カスタム823 に 743 用のスタブやコースを、という願いも叶うわけですね(とある専門店を通して、カタログにはない特殊ペン先が付いた特別なパイロット正規品も手に入るらしい)。付け替えた場合、たぶんメーカー保証はダメで、店舗独自の保証になるでしょうが。
 面倒かもですが、メーカーに頑張っていただきたい点ですね、これ。

 ということで、ペン先から選んでも、ペン軸から選んでも、完成品の時点で縛られてしまうのが、難しいところなのです。
 そうなると、こだわる人は既製品を諦めて特注に走ってしまうのかな。
 でも、ペン先の豊富さではパイロットが一つ抜きん出てるし、今は停止中とは言えセーラーには長刀研ぎがあるし。国内大手三社を外すことは難しいですよ。
 なので、ペン先、ペン軸それぞれにこだわりがあれば、それぞれを満たす複数品を選ぶしかなさげ。



 結論。
 万年筆で「理想の一本」だけを選ぶのは、大金持ちが名職人に完全オーダーする以外には、まず無理。せめて「理想の三本」くらいにしとけ(爆)。