(旧暦 葉月十七日)

 もう一件、申し上げるなら。
 熊野三山の神様も、自分的には“謎”ではあったのです。

 熊野本宮大社、熊野速玉大社、熊野那智大社と、三社とも「大社」ですし、主祭神は熊野坐神(熊野権現とも熊野大神とも)という一般に聞き慣れない神様ですし、烏文字で構成される独特の牛王法印を頒布していますし。
「三山」と言う呼びかたから想像できるとおり、出羽三山と同様、修験道の山々でもありますし。
 また広い意味では、同じエリアに高野山がある、とも言える。
 妖怪・一本ダタラが、この熊野の山々に棲むことから、古くから製鉄との関係を持っていそうでもあります。

 要は、熊野三山はシンプルに神社神道とは言えない、ということです。

 ただ、その疑問も水木しげるさんの『古代出雲』を読んで氷解しました。
 なるほど。古代出雲王朝と強い縁のある地域だったのですね。それなら、すべて納得です。
 熊野坐神の名前の背後にオオクニヌシ(オオモノヌシ、オオナムチ)やスサノオが隠されているのなら、そりゃあ出雲大社より古い分、格式が上なのも理解できるというものです。

 それが今や神社神道に所属させられてるから、ややこしい。


 つくづく、明治政府はロクなことせんかったなあ、と。
 倒幕や文明開化はいいんだけど、その後がね……。