(旧暦 閏卯月廿四日)

『鬼太郎』の再放送は五月でおしまいでしたか。
 淋しいですが、本来の番組に戻ることこそ健全ですから。

 そんな『鬼太郎』六期。
 幽霊電車や牛鬼など、過去作品に準拠するストーリがある一方で。
 いそがしや枕返しなど、過去作で強敵だった連中が味方あるいは協力者として登場するという、これまでのパターンをあえて踏襲しない姿勢が斬新で、観ていて楽しくなったものです。

 再放送最後となった枕返しは名キャラですね。あいつ、あんなにギャグが上手かったとは(笑)。
 この話の目玉は、目玉の親父さんが全盛期の姿と実力を垣間見せたことです。目玉だけに。
 が。
 あえて、ここでは依頼人の父親、つまりエピソードの実質的主役について。
 六期は「え? それニチアサでやるの?」ってレベルの話を容赦なく持ってきてくれたのですが。
 嫁に子連れで逃げられたうえに仕事の要領が悪くリストラの憂き目に遭って再就職もままならず自暴自棄になる中年父親のアキノリ。そんなのにスポットを当てるだなんて、本当に手加減がない。リアルすぎて、妖怪とは別の意味で怖いよ。
 若い人に交じって必死に面接を受ける姿がね、スーツが全然似合ってない、つかサイズが合ってない、というあたりにアキノリさんの不器用さが表れてます。善人というだけでは生きてけないんですよねぇ、21世紀。探せばアキノリさんに向いた職場もあるんだろうけど、それはきっとネクタイ締めて履歴書を持参するような所じゃない。それを縁があって見つけられれば出逢えれば、いいのですが……。
 人脈もなさそうなアキノリさんですから、ひょっとするとけっきょく再就職も叶わず、またズルズルと夢の世界に戻ってしまうのかもしれない。現実で言えば、ゲームの廃人プレイヤーやSNS中毒者やギャンブル依存者などが相当すると思います。
 人身御供の少女が余裕見せているのも、何人かが……あるいは大半が戻ってくる確信を持っているからなのでしょう。それほどに現代の人間社会は、ついていけない者に冷たい。
 魂が夢の世界で楽しく遊び続けて。やがて現実の肉体が衰弱して死を迎える。たぶん、夢の世界の本人は苦痛も感じずに消滅するでしょうから、現実社会で数多の苦しみに耐えて生き続けるより幸福かもしれない。
 と言えなくもない、この事件。意識不明者を抱える家族は、たまったもんじゃないけどね。
 最後に鬼太郎たちが感激した虹は、ひょっとすると誰か新たに夢の世界に入っているか、あるいは助けた中の誰かが出戻るところなのかもしれない。
 対比して、あの体ではどう頑張っても鬼太郎に父親らしいことをしてやれない目玉親父の口惜しさ情けなさ。でも、鬼太郎は、そんな親父さんに感謝している。ここがアキノリさんとの対比になっていますね。まあ、鬼太郎も親父さんも妖怪なので喰うに困ることがない分、人間のアキノリさんとでは不公平すぎるハンデマッチ戦ではあるんですが(苦笑)。
 結論。みんなで「病気もなんにもない」妖怪に転生しようぜ♪