(旧暦 如月廿一日)

 女人禁制という“伝統”の是非と。
 緊急時に人命より伝統を優先してしまった愚行と。

 この二つは、まったくの別問題。
 なので、ちゃんと切り分けて考えないと、何ら解決策など見えてこないですよ。
 最近とみに劣化の激しいテリー伊藤氏はともかく。天下のNHKまで、この二つを混同してて困ります。

 いや、だから。
 バアサン官房長官やオカン府知事が表彰式に土俵に上がりたいと我が儘言うのと。
 土俵上で人が倒れたことと。
 状況が、まったくの別物ですよね?
 なのに「協会が女性を拒否した」という一点のみで同列に論じる愚かさ。NHKの質も落ちたものです。

 動画を観ましたが、ひどいものでしたね。
 倒れた市長さんの周りに集まった男どもは、集まっていながら何もできていない。なら何しに土俵に上がったんだよ、おまえら!?
 看護師の女性が「どいて」とばかりに男どもを押し分けたのは当然の行動ですよ。何もしていない連中など邪魔でしかない。続いて上がった女性たちも、心マッサージは交替してやらないと続かないと知っていたからでしょう。あと、人工呼吸など心マッサージと並行してやるべき措置もありますしね。
 なのに男どもの様子ときたら……ああ、情けない。
 あんな立派な会場なんだから、誰かAEDを取りに行ってないの? それと場内アナウンスで「どなたか医師のかたは、おられませんか?」ってくらい、やれよ。映画やドラマにあるだろ。(※追記:詳細な動画では、呼び出しさんがAEDを持ってきて検査する様子が映っていたそうです。この点については、誤解したことをお詫びします)
 八角の「アナウンスが若い行司だったから」なんてのは言い訳にすらなりません。親方やベテラン呼出が、なぜ走らなかった? 走って「医者か看護師を捜せ」とアナウンスの行司に言えばいい。行司の若さを逃げ道にして免責を求めるだけの八角の姿勢は、もうゴミクズ以下です。
 仮に件の女性が看護師でなかった場合でも、心マッサージをしている人に対して「下りろ」とは言語道断でしょう。

 今回の件での問題点は、ただ一つです。
 現場の連中がルールに縛られていて、臨機応変で柔軟な対処ができなかった。正しい優先順位の判断ができなかった。
 この一点だけを問題視すべきなんですよ。

 例えるなら。
 温泉旅館の女湯で客が倒れた。駆けつけた男性医師が入ろうとするところを番頭が「女湯ですから」と止めた。
 あるいは、どこぞの会社で社員が倒れた。駆けつけた救急隊員を専務が「ここから先は企業秘密があるので」と止めた。
 そーゆー事例でしょ、今回のケースって。
 いや実際、日本人って権威と規則に弱いからねぇ。大きな神社って偉い神職しか入れない場所があるでしょ。そこで誰か倒れたりしたら、ひょっとして医者や救急隊員は患者の所にたどり着けないんじゃね? とか心配になりますよ。医療に素人な神職たちが患者を一般エリアまで無造作に運んだため手遅れになるとか、起こりそうですよねぇ……。

 協会は相撲しか知らない脳筋だけで構成されているので、ここは専門業者に外部委託して体制を整えておくべきでした。これから、そうするのかな? それとも、相変わらず素人だけでやるのかな?
 まあ私個人としては、協会の改善より解体を強く希望しますよ。正直、あきれ果ててしまいました。
 伝統としての国技保存と、商売としての興行とを別組織にすべきです。で、伝統のほうだけを財団法人にする。だいたいが、大相撲の興行って別に「公益」じゃないですよね。プロレスやプロ野球と同じですよね。なら興行はもう完全に民間企業にして商売に徹したらいいんだよ。プロレスみたく分裂して団体それぞれで個性を出して競い合えばいい。

 今回の件で、私は日本相撲協会に、ほとほと愛想が尽きました。

 なお。
 市長さんが運び出されたあとの土俵に大量の塩が撒かれたということについては別の問題なので、ここではあえて触れません。