三隣亡 (旧暦 長月十日)

 国産ドラマは、あまり観ない人なのですが、宣伝文句に釣られて観てみました、『PRICELESS〜あるわけねえだろ、んなもん〜』を。
 人生絶好調、一転、無一文の宿無し。という展開が最近の流行か? と気になりまして。
 木村拓哉さん演ずる二三男のホームレスぶりは観ていて興味深かったですね。
 織田裕二さんが主人公・健太郎を演じられた『お金がない!』が、お金についての悲喜こもごものみを追及していき(怖い怖い借金取りとのやりとりとか面白かったですよね)、どん底状態から這い上がる姿を描いたのに対し。
『PRICELESS』では、主人公を陥れた陰謀という面が特徴となりますか(中井貴一さん演ずる上司の「ステルス・モモ」ばりな影の薄さが実は伏線だったとは、やられましたよ♪)。
 ただ、やはりホームレスを続けさせることには無理があるのでしょうか。二三男は一話で早くも定住先を手に入れそうです。

「ホームレスを描いた」とされる作品と言うと漫画『荒川アンダー ザ ブリッジ』があり、アニメ化、実写化と好調のようですが。
 これ、ホームレスなんて一切、描いてないよね?
 スラップスティック・ギャグとしては優れていても、ホームレスは実はどうでもいいって感じで。
 荒川河川敷が友引高校でも一刻館でも特車二課でもペンギン村でも、どこでもいい。要するに身上思いっきり怪しすぎる奇人変人ばかりで繰り広げられるキ印物語ですよね。
 だって、私の記憶が確かならアニメの宣伝文句に「ホームレスの悲哀」とあったにも関わらず、連中の日々の糧がどうなっているかとかが、ちっとも見えてこないですから(日々のメシについてなら、むしろ特車二課のほうが切実に描いてた♪)。ホームレスを描くというなら、それではあかんでしょ。
 念押ししときますが、キ印ギャグとしての『荒川』は、かなり面白い作品だと思います。ただ、「ホームレスのなんたらかんたら」という冠だけが×だということです。

 今回、『PRICELESS』を観てみたのは、ホームレスの悲哀が描かれていそうだと感じたからです。
 実は、ほんの少し前に『桜乃さん迷走中!』という四コマ漫画を購読していたこともありまして。
 これも『お金がない!』や『PRICELESS』と同じく、主人公がいきなり仕事も家も失ってしまうハードな冒頭です。しかも地方から上京してきたばかりの二十歳の純真無垢な娘さんがです。それが会社の倒産(つか社長の夜逃げ)を受け、家も社宅だったことから追い出され公園で寝袋(安売り千五百円)生活という素晴らしさ♪ 帰る家なく彷徨ったり途方に暮れたりな桜乃さんの表情がどんどん陰っていく様子や、公園で遊んでいた子供に「ほーむれすなの?」と訊かれたときの困惑した顔とか、素晴らしかった。
 とは言え、第一巻のカバー絵や帯の文句に反しホームレス状態は冒頭のみで、すぐに定住先(居候ですが)と仕事(バイトですが)を確保してしまいますけどね。ついでに冒頭の純真さ天然さはどこへやら、黒さとウザ可愛さ全開という豹変ぶり。
 どうやらタイトルの「迷走」とは「自分探し」の意味だったようです。と気づいたのは読み終えたあとでした(笑)。カバー絵と帯に見事にだまされましたよ(苦笑)。
 こちらも念押ししときますが、桜乃さんのウザ可愛さを楽しむ作品としては面白いのです。ただ、売り文句の「ホームレス」云々が、ほぼ嘘だったと言うだけで。「世間は厳したかった」というキャッチコピーに反し、桜乃さんの周囲は暖かさに満ちてますからね。

 今期のアニメには、女子高生がいきなりホームレスになって、しかも神様になるとか、神様そのものが公園生活してるとか、ホームレスをネタにした作品は相変わらずいろいろあるようですが。
 どれも形だけ、って気がしてなりません。

『PRICELESS』には本質に迫ることを期待したいのですが。軸が陰謀に寄った場合は、ホームレス方向はダメになるでしょうね。
 にしても夏木マリさんって魔女みたいな鬼婆みたいな役が増えたよねぇ(爆)。