清明、不成就日 (旧暦 如月廿六日)

 
 『蜘蛛ですが、なにか?』第1~13巻
  馬場翁かかし朝浩・輝竜司/角川コミックスA


 古本です。
 はい、すみませんです。

 だってさー。
 一気に全巻揃えようとしても、書店に在庫が無いんですよー。
 ネット書店もダメなんですよーバラバラでしか手に入らない。それでは全巻が揃わない。しかも、あちこちで買い集めたら送料で大損する。
 一発勝負のまとめ買いをするなら、もはや古本しか選択肢がなかったのです。よって、最新の第13巻も古本となりました。スマヌ。

 許してや。
 もうじき出るはずの第14巻からは、ちゃんと新品買いますから。

 このコミカライズは公式サイトにて常時無料公開されているのです。
 ただ、そこは商売。要所要所の話だけは「本を買ってね」と非公開。
 で自分は、アニメ放送開始の際にそれを記念してと言うかプロモでしょう、全話完全無料公開していた時期があって、そのときに一気読みしたのです。
 一気読みなので記憶が曖昧で、振り返ろうとしたときにはもう完全公開が終わってた。
 悶々とした日々を送ってきましたが、限界です。
 なので買ったんですね。
 ああ自分の記憶は九割がた合ってた。
 と一安心。

 にしても、あらためて面白いなこれ。
 と同時に、山田くんサイドにかなりの尺をさいたアニメが失敗した理由も判る気がします。
 アニメに対してテンポで圧勝してますコミカライズは。やっぱり主人公は一人(一匹?)に限りますね。

 このコミカライズ本。
 巻末に、原作者さんの書き下ろし掌編の他に、ネットには載らない描き下ろし漫画が入ります。
 その描き下ろし漫画。
 地龍たちを無双したときの魔王視点や、蜘蛛子さんに心酔した魔法爺さんの視点や、吸血っ娘主従の会話などがあって面白いです。
 特に良かったのは、山田くんサイドの掌編。
 これ、漆原さん視点なんですよね。それが卵の段階から描かれてます。
 おまけ程度の分量ですが、これで正解でしょう。蜘蛛子さんと他のクラスメートたちとの関係性を仄めかすに必要充分な量だと思います。
 アニメも、山田くんサイドは要点程度にすりゃよかったんじゃないかな。物語完結まで全部やるならともかく、総量制限あるんだから、蜘蛛子さんサイドを圧迫しないダイジェスト的なボリュームで。

 そうなんだよな。
 本当に、アニメは山田くん側に多く使い過ぎた。

 アニメの最後で、蜘蛛子さんと魔王が休戦して吸血っ娘主従も一緒に旅立った。コミカライズ第11巻の終盤は、そこから続いてます。
 この旅の見せ場の一つがね。蜘蛛子さんが退屈しのぎにパペットたちを魔改造するところです。
 かつて蜘蛛子さんの天敵と言っても過言ではなかった強敵のパペットたちが、まあ可愛らしくなったことと言ったら。
 いやいや、アニメはここまで進めるべきだったよ。山田くん分を削ってでも、ここまで進むべきだったよ絶対に。パペット四姉妹なんて、絵的に映えるのまちがいないのに、もったいないことを。第13巻の口絵とか素晴らしすぎます。
 もう一つ挙げると、パペット魔改造の直後、並列意思たちの暴走も、アニメでやれば音声的にすんげー映えたと思う。一人四芝居どころか、一人十芝居だからねぇ♪ EDのキャスト表示を想像しても、ここをやんなかったのは惜しい。

 コミカライズを通しで読んで。
 ミスリードの仕掛けが上手いな、と。
 普通に読み進めたら、たいていは蜘蛛子さんが魔王になると思いますよこれ。そうなるよう、きちんと構成されてる。
 でもって、蜘蛛子さんと魔王の直接対決で、皆びっくり。「え別人!?」ってね。
 これがアニメだと両者の声優さんが違うため、最初っから微妙にバレてた感じなんですよねぇ。
 つか、アニメ第1話のアレで、勘の鋭い奴は気づいたかもしれんよ、あれこれと。

 これはコミカライズの特徴なのか、原作からそうなのか、文庫版原作を読んでいないので判りませんが。
 地龍アラバの死生観、他の地龍たちの義理堅さ、猿の群れによる蜘蛛子さんマイホーム恐怖の自己犠牲的攻略方法、どれからも『子連れ狼』の気配を強く感じるのです。
 ひょっとして、お好きだったりして? 参考にしてたりして?

 アニメではよく判らなかった、あの世界の崩壊というのも、コミカライズの進行分で理解できます。
 エルフ(特にポの字)が独占している超科学技術。その根源である「MAエネルギー」とやらが、その星の力そのもので、それを吸い上げ過ぎたせいで星の寿命が尽きかけている。
「MA」ってのはたぶんマントルのことではないかと(異世界なのにアルファベット? と思うなかれ。魔物や冒険者をS級だのA級だの分類してるんですから、何をか言わんやですよ)。

 コミカライズ本には、もう一つ大きな仕掛けがあって。
 仕掛けの真意が発覚するのは、もう少し先かな。

 続刊が楽しみです。
(とは言え、第14巻に入るであろう内容は、もうサイトで読んでますけどね。でも楽しみ)