三隣亡 (旧暦 如月三日)

 
 『YELLOW MAGIC ORCHESTRA USA & YELLOW MAGIC ORCHESTRA
   ALFA MUSIC EPC 513445 2
 『SOLID STATE SURVIVOR』
   ALFA MUSIC EPC 513446 2
 『Χ∞ MULTIPLIES』
   SONY MUSIC HOME MHCL 207
 『BGM』
   SONY MUSIC HOME MHCL 208
 『TECHNODELIC』
   SONY MUSIC HOME MHCL 209
 『NAUGHTY BOYS & INSTRUMENTAL』
   MUSIC On CD MOCCD13232
 『SURVICE』
   SONY MUSIC HOME MHCL 212
  / Y.M.O.


 遅ればせながら。
 高橋ユキヒロさん、どうか安らかに。

 たいへんに失礼ながら。
 YMOの人、という認識(だけ)なんですよね自分。
 本当に本当に視野が狭くて、たいへん申し訳ありません。

 ひととおりCD買って。
 ひととおり聴いて。
 何度も繰り返し聴いて。
 やっぱり凄いユニットだった。
 の一言に尽きます。

 一つひとつ順番に簡単に。

 一枚目、グラサン着物美人(?)のジャケットがファースト・アルバム。
 このCDに限っては、日本版とリミックス北米版の二枚組です(ジャケ絵は北米版LPのものを採用しているが、ケースを開いた裏に日本版の絵も)。
 日本版のほうが一曲多い。でも北米版のほうが数秒長い曲があったり。けっきょく、両方聴くしかねー。
 余談ですが、YMOの楽曲群をボカロ曲としてカバーしたアルバム『HMO』のジャケ絵は、このジャケットを元にしてますね。

 二枚目、赤い人民服に身を包んだ三人が椅子に座っているジャケットはセカンド・アルバム。
 世間的によく知られた代表曲の数々が収録された、「YMO初めてならとりあえずこれ聴いとけや」というブツ。
 と言っても叱られないと思います。実際、妖之佑が人から相談されたとしても、このアルバムをお勧めします。

 三枚目、赤い枠の中に無数のYMOが無表情で並び立つ不気味極まりないジャケット。これが物議を醸したサード・アルバムですね。LPでは段ボール製でしたよジャケット。しかも、12インチでなく 10インチ盤。日本語タイトルは『増殖』。
 忙しすぎて暇がないのに、上から次のアルバム出せ出せと言われて仕方なく出したため、正味三十分のアルバムの半分だけ曲で、残り半分をあのスネークマンショーに委ねた。
 これは音楽アルバムなのか? それともラジオ劇アルバムなのか?
 今でも正解は見つかっていないと思います。
 曲もコントも切れっ切れで楽しいですけどね。まちがいなく。
 ちなみに、2トラック目「Nice Age」の中で「ニュース速報」とやらに出てくる「22番」とは、あの超有名な音楽家で左利きベーシストのことです。この曲と、スネークマンショーのファースト・アルバム(通称「急いで口で吸え」)に入っている「はい、菊池です」とを併せて聴くと、また楽し♪ いいなあ、スネークマンショーは。ちゃあんと毒があって。
 11トラック目のスネークマンショー(「若い山彦」)にはサラッとYMOも出演しておられます。
 それとそれと、4トラック目「TIGHTEN UP」は洋楽のカバーなのですが、とにかく晴臣さんのベースが地味に凄くて。あれ、並みの腕前では無理だから。

 四枚目、歯ブラシのジャケ絵はフォース・アルバム。
 これがYMOの最高だと言う人も。
 このあたりから、それまでのテンポやノリから離れるような気配を感じますね。
 人によっては熟成したとも、人によっては退屈になったとも。
 無責任な想像ですが、ただただ忙しいYMOについて、教授あたりが疑問を抱き始めていたのかも。

 五枚目、どこの民族衣装なんだろ? ってな感じの人物のジャケ写。これがフィフス・アルバム。
 あくまでも個人的にはですが、前作アルバムの迷いがブーストされてるように思えます。
 中では、YMOにしては珍しく日本語を使った「体操」がイカレ狂ってますね。ホントに、どこまでもサイコな曲だと(笑)。

 六枚目、挙げた写真ではユキヒロさんだけ見えてるのがシックス・アルバム。日本語タイトルは『浮気なぼくら』。
 このCDは、LPでは一緒に発売されたインストゥルメンタル版との二枚組です。
 それまでのYMOと打って変わって、アルバム・タイトルも歌も日本語。ガチの日本語。コテコテの日本語。日本語てんこ盛り。
 まあ、前作アルバムの「体操」で予兆はあったわけですが。それでもアルバム全体で、というのは驚天動地でしょう。
 そのためか、中の「君に、胸キュン。」は普通の歌番組で普通に取り扱われました。

 七枚目、人体シルエット(?)の手前に大きなのヤツが、セブンス・アルバムでYMO散会記念アルバム。
 聞くところによると、『浮気なぼくら』で終わりにするはずだったのが、急遽の七作目リリースになったとのこと。
 そのため、時間が足りなく曲数も足りなく。
 で、YMOが当時、懇意にしていた三宅裕司さん率いるスーパー・エキセントリック・シアター(S.E.T.)の参加を得て、ふたたび、音楽アルバムなのか? 寸劇アルバムなのか? という形態にしたそうな。
 曲についてはともかく。
 寸劇は……そもそも S.E.T. が舞台の劇団なので、ラジオ寸劇の形式に向いてない。と聴くたびに感じます。三宅さんの脚本は、たぶん役者の動きが伴うと面白いんでしょうが、音声のみだとギャグがことごとく上滑りしてます。
 目の付け処は、流石は三宅さんなんですよ。「妻ミチコ泣いてます」も「初舞台」も、三宅さん自身が役者さんだからでしょう、演ずる人の不安を鋭く抉ってる。「爆弾を仕掛けた」もオチは面白い。
 一方で「探偵事務所」や「ラジオ講座」のように聴く価値ゼロなゴミ駄作もありますけどねー(苦笑)。
 中で「落盤」はYMOも参加しての、まさに“サービス”演目。ストーリはしょーもないですが、お三方とも芝居を楽しんでおられる♪
 でもなー、スネークマンショーには遠く及びませんね、あれこれと。リリースされた時代のこともあるでしょうが、無毒なのが致命的です。
 寸劇なしでミニ・アルバムにすりゃよかったんじゃね? で、『増殖』みたく 10インチで出すとか。
 と、三宅さんに辛辣失礼なこと言いつつ締めますです。

 YMOが一時的に再生したエイス・アルバム『TECHNODON』は買ってません聴いてません。悪しからず。
 うん。そのうち気が向いたら買うから。たぶん。