(旧暦 卯月十六日)

 死者に鞭打つのは礼節に反する。
 とは思うのですが。
 それでも言わずにいられない。

 この遭難死亡事故において。
 六歳のお子さんは完全な被害者です。
 そして、父親は加害者である。これは紛れもない事実。子供を死に至らしめたのは父親の愚かな行為です。
 家に携帯で連絡した際に「ビバーク」という単語を使ったことからも、この父親はプロ気取りであったことが知れます。このときに救援要請するよう言っていれば、と思うと、部外者の妖之佑にしても、こやつをますます許せません。
 無論、父親本人は死の間際に後悔したに違いありません。でも、それでは遅い。遅すぎる。

 父親は、すでに地獄に堕ちているでしょう。
 が。だからといって道連れにされたお子さんや、残されたご家族が救われるわけではない。
 せめて、この事故を教訓に、世の「自信家」のかたがたは、己の自意識過剰を猛省すべきだと思います。

 自宅のすぐ裏の山に毎日、山菜を摘みに行っており入り慣れている主婦が、ある日のこと迷ってしまい次の日にヘトヘトになっているところを発見・救出される、なんて話は、よくあります。
 山里に暮らす人ですら、そうなのです。ましてや、他所者がデカい顔で入山すべきではない。

 人にとって山はね、異界なのですよ。
 恐ろしい場所なのですよ。