望 (旧暦 弥生十五日)

 素人目にも、とっくに島を出ているだろうな、というのは自明の理のはずなんですけどね。外野で「島に潜伏している」説を信じていた者なんて一人もいなかったと思いますよ。
 ただ、島に住んでいるかたがたにとってはガチの脅威なので、「まだ島にいたら怖い」という不安を理解できます。島から出ているだろう、というのを信じたくても、できないですよね。万が一まだ島にいたら……と思うだけで震えが止まらなかったことでしょう。
 が。警察が「島から出ていない」とした根拠は何だったんですかね。いくら何でも、ひどい推理(?)です。まあ、意図的に「警察は、島が怪しいと考えている」という誤情報を流したとも考えられますが。それにしては逮捕のきっかけが市民からの通報というのが、情報操作説には不利ですねぇ。やっぱり本気で「島から出ていない」と信じ込んでいたのかな。
 お金が盗まれた時点で、それを交通費に逃走犯が遠くへ移動するというのはセオリーです。県警同士の縄張り意識を考慮しても、なるべく県境をいくつか越えてしまいたいところでしょうし。妖之佑はカナヅチなので論外ですが、対岸まで最短二百メートルというなら泳いで渡れますよ普通は。その可能性をプロが本当に考えなかったとしたら、ちょっとお粗末なんじゃないかな。結果論ですが、広島市などの人にとっては、知らぬうちに逃走犯が身近にいた、ってことですからね。警戒心を怠れなかった島の人々よりも、実は危険と紙一重な状況だったのかもしれませんよ。
 犯人は窃盗などを三桁も重ねて収監された犯罪者なので、今さら違法行為に躊躇するはずもなく。こそ泥レベルの被害だけですんだのは不幸中の幸いだったと思います。強盗事件などに至らなくて本当に良かった。
 検問や山狩りなどに当たった現場の警察官のかたがたには本当にお疲れ様でした、と感謝の気持ちを表明したいですが。捜査方針を決めた偉い人たちには、何やってたんだよ、と言いたいですね。

 それにしても、逮捕の瞬間がカメラに納められていたり、逮捕のきっかけが通報だったりと、今の日本は、しっかり監視社会になっているのですね。どこにいても常にカメラや人の目が自分を監視している、というのは少し薄ら寒い気もします。
 いえ、ネットカフェの人が通報したことは市民として当然の行為です。そこを否定するつもりはありません。そのおかげで犯人逮捕に至ったのですからね。
 でもねぇ。やっぱり何と言うか、窮屈な社会になってきてるなぁ、とも思うのですよ。