(旧暦 長月十二日)

 こちらでは、相当に遅れた放送なのか。
 ようやくのこと、沼が大当たり、大開放となりました。

 カイジたちが勝利し、一条の地下労役1050年も確定ですし。
 後は、カイジが信頼した遠藤、坂崎ご両名に裏切られる、言ってみれば後日談のようなものですから、これで実質的結末と言っていいですね(いや、それにしてもこの作品、「昨日の友は今日の敵」って落としどころばかりで楽しいですな)。

 原作のことは、さておき。

 前期に比べて今期は、会長のキャラが少し変わっていたように感じます。
 前期でも、かなりイカれた爺さんではありましたが、それでも何かこう「得体の知れない大人物」という印象は、あったのですよ。
 だからこそ、謝罪として「焼き土下座」を要求する異常さにも、なぜか納得させられるだけのものを持っていましたし。
 挑んできたカイジの策略をあっさり見抜き、カイジの五本指を切り落としたことも「お見事」と唸ってしまうのです。

 それが今期は残念ながら、本当にただのイカれた爺さんで出番が終わりました。高級ワイン(ボトルの形状から、たぶんロマネコンティでしょう)で下品に遊ぶこととか、一条を日々虐めて楽しむこととか。
 特に、カイジに沼を攻略されたことを怒り、「何だこれは!? つまらんっ! こんなものを観せおって!」と、ほとんど八つ当たりのような行動をするあたり、マジで小者、ただの俗物でしかありません。国家予算規模の大金を持っていようと、下劣な成金爺ィにしか見えないのですよ。本当なら、一代で帝愛グループを築き上げた偉人のはずなのに……。
 そう。大人物であればこそ、敗北してすら「面白い余興だった。さすがカイジくんだ」と堂々としていてほしかったですね。そういう意味・方向でカイジに苦難を与えては、その足掻く様を楽しむ、という残酷な姿勢でいてほしかった。例えば、ヤマトに攻撃を仕掛けては、その苦戦ぶりを楽しむデスラー総統のように。
 あれだと、むしろカイジの特殊賽を「いいかな?」と手にとって感心していた黒崎のほうが、はるかに大人物ですよ。まあ、それも含めて会長の老いさらばえた様子を描く目的だったのかもしれませんが……それならそれで前期のあの堂々とした威風が逆に変です。

 せっかく津嘉山正種さんのお声なのに、今期は少しもったいない気がしました。