節分 (旧暦 師走廿一日)

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 『天食』
  泉昌之/晋遊舎


 ずっと気になっていた本です。
 例の『かっこいいスキヤキ』を生み出したコンビ、泉昌之によるバカ話。
 時系列的には『孤独のグルメ』よりも後に掲載が始まっているので、どういう位置付けで考えたらいいのかな。シンプルに、『孤独のグルメ』は上品に『天食』は下品に、ということでいいかな。
 久住昌之さんは泉晴紀さんと組むとホント生き生きしますね。
 て言うか、あえて誤解を恐れずに言うと、『かっこいいスキヤキ』からまるで成長していないのですよ。
『かっこいいスキヤキ』の中の『夜行』発表時、久住さんは大学生だったはずです。だからか、あの本にはアマチュア臭さがプンプンしていた。プロなら断じてやらないことを堂々と、ぶちかましていた。
 そのカラーが『天食』にもあるんですよね。何十年も経って、何も変わっていない。良く言えば、若さを失っていない。これは凄いことです。
 ぶっちゃけ、ツッコミ処は多いんですよ。
 この本の半分を占める『食い改め候』の主人公が侍である意味が理解できない(苦笑)。アパートに住んで電車に乗ってスーパーに買い出しに出かけ友人に電話する。なのになぜ刀を腰に差した侍なのか、説明など皆無。
 同様のイミフが『かっこいいスキヤキ』に収録されている短編連作『THE APARTMENT HOUSE』にも見られます。六室あるボロアパートの住人のうち三軒は“現代”の人ですが、残り三室が江戸の町人と太平洋戦争直前の人と宇宙人ですからね。訳が判らないよ。
 こーゆーの、アマチュアは、やりたがるんですよね。特に、自分の才能を信じて疑わない大学生あたり。
『食い改め候』連載時、すでにキャリアのあるプロとして完全定着しているお二方が、そんな二十代の若さを発揮する。いったい何なんですか(笑)。
 一方で『孤独のグルメ』を読めば、久住さんは確かに立派な大人(中年)になっている。うーん、不思議です。
 野暮を承知でツッこみますと。
『食い改め候』の主人公・63衛門の言動は、それこそ泉昌之作品の定番であるトレンチコートの中年男そのものです。自分をかっこいいと思い込んでいるが、端から見れば空回りしているだけの滑稽な、あるいは変なおっさん。
 なら、トレンチコートの男でもよかったんでね? と思うんですよね。やることは同じですから。
 食べ物にこだわって、あれこれ思考して失敗する。これが上品に失敗すれば五郎さんになるし、無様にやらかせばトレンチコートになる。わざわざ侍を持ってくる効果は、あまりないと思います。
 まあ、その違和感を面白いと感じるのが、泉昌之の若さ(学生気分)なのかもしれませんね。
 もう一つの連作『ブギ・ウギ・オヤジ』は、悪いけど好みに合わない。部長の痛々しさを楽しむべきなのでしょうが、自分には無理っス。
 一つだけ残念に思ったことは表題作『天食』です。と言うか、これを受けての『かっこいいスキヤキ 新装版』用に描き下ろされた『夜港』です。あれ、この『天食』の焼き直しじゃありませんか! 何が新作描き下ろしだよ。騙されたわー。