天しゃ (旧暦 閏卯月廿九日)

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 『ダンジョン飯 9』
  九井諒子/ハルタコミックス


 いよいよ巻数二桁が目の前ですね。
 たいへん失礼ながら、ここまで続くとは思っていませんでした。基本、ネタ系の作品という理解でしたから。
 前にも増して、ストーリ重視のシリアス内容で。だからこそ続いていると言えるものの。第一巻第一話の「うんこから蘇生した冒険者の例はあるか?」とか「それは喰ってもいいものなのか?」とかいう、炎竜に妹が喰われたわりに深刻さのない、あのふざけた空気感が好きだっただけに、読者の一人として複雑な気持ちでございます。思えば遠くへ来たもんだ。

 もちろんシリアスだからつまらん、ということではありません。
 理系脳をお持ち(と推測)の作者さんなので、物語の構築・展開にも隙がなく。
 これまでのカブルーの言動すべてが、ここにきて完璧に納得できました。対人戦闘が強いのは元殺し屋とかでなく、養い親の猛特訓によるものでしたか(あの養母さん、悪魔に喰い残されたミスルン隊員を助けた「陰気なミルシリル」ですね。髪型一緒だし人形使いだし)。
 そして何より、カバー絵にまさかのミスルン隊長! 内容的にも重要なキー・パーソンとなってきました……つか、男だったのかよっ。
 隊長の説明により、西のエルフが進めている半ば強硬な対ダンジョン政策にも、一定の理解ができました。
 そう。ここに来ての重要ファクター、人の欲望を糧とする悪魔の存在。もはや狂乱の魔術師など前座にすぎませんね。仮にシスルをどうにかできたところで、事態の解決には程遠い。なぜなら、黒幕である悪魔は、すでにシスルを見限っているから。新たな糧に目を付けてツバも付けているから。
 ええ。外れることを承知で、あえて今後を予想します。
 黒幕は、人の良さそうな親切そうな有翼の獅子でしょう(この予想、きっと外れる。だが私は謝らない)

 いつもの『ダンジョン飯』としては、サキュバスの生態が素晴らしかった。同時に、サキュバスにイヅツミだけが対抗できた理由にも唸らされました。そういう使いかたがあったとはね。
 カブルーとミスルン隊長の話に、いちいち「その頃のライオス」が付くのも読者に親切で◎♪