(旧暦 長月十二日)

 人気作品の続編を作る場合、どれの続編にするかで、大きく変わってくるものです。

 さて、『タイガーマスクW』ですが。
 これは何の続編なんでしょうね。

 梶原一騎さん原作の『タイガーマスク』シリーズには複数の作品・形態が存在します。
 伊達直人が主人公の『タイガーマスク』が漫画版とアニメ版。
 亜久竜夫が主人公の『タイガーマスク二世』がアニメ版と漫画版。しかも漫画版は複数の作画があるそうで。ついでに、新日のリングに実際に上がったタイガーマスクも、この『二世』のマルチメディア展開の一環でした。つまり広く言えば佐山聡さんのタイガーマスクもシリーズ作品の一つだったと言えるのです。
 他に、詳細は知りませんが、梶原さん没後に作られた作品もあるそうで。

 で、『タイガーマスクW』は何の続編なのかと。

タイガーマスク」「イエローデビル」「虎の穴」「高岡拳太郎」という四つのキーワードが、今のところの手がかりです。いや、公式サイトには「ミスターX」というキャラも紹介されてますから、彼の名前を含めて五つにしましょう。
 タイトルでもあるタイガーマスクは、考える必要もなく。
 高岡拳太郎は、アニメ版のレギュラーでした。漫画版には出ていなかったはずです。そして、イエローデビルは拳太郎のデビュー時代のリング・ネームです。『W』のそれとマスクが基本的に同じデザイン。とすると『W』はアニメの続編?
 ところがぎっちょん。アニメ版ではミスターXは最終回より前にお亡くなりになってましてね。まあ『W』のXさんは双子の弟とか、他人のそら似ということもありえますが……。でも漫画版だと生きてるはずなんですよね、たしか。
 それとナオトが熊鍋の材料を調達しつつ訓練していた、あの富士の裾野。タイガーの彫像が半分壊れてましたよね。あれはアニメ版にはなかったものです。で、漫画版では、直人は「みなしごランド」という子供たちのためのテーマパーク建設(キン肉マンの「キン肉マンランド」構想は、これの丸々パクリ)もライフ・ワークとして進めており、そのシンボルとしてタイガーの彫像があったのです。中は自分専用の秘密特訓施設。つまり、ナオトが熊狩りしていた場所は、みなしごランドの成れの果てということになります。どうしてランドが朽ち果てたかは、漫画版を読めば嫌でも判ります。ええ、作者が鬼だと判ります。
 虎の穴については、もっと複雑。『二世』にて、二世が猪木さんにした話として「自分は復活した虎の穴で鍛えられたが、その虎の穴はまた滅んだと聞き及ぶ」とあり、二世自身も虎の穴の掟に縛られている様子がまったくなく、かつて虎の穴が壊滅し、またも壊滅したと判ります。そして『タイガーマスク』漫画版では、クライマックスで虎の穴が崩壊、直人は真の意味で解放される。一方のアニメ版では、ボスであるタイガー・ザ・グレートが直人に負けたところまでで止まっており、組織の完全崩壊までは描かれていない。でもって『W』では、あいかわらず虎の穴がプロレス界の裏側を仕切っているらしい。復活したのか、生き延びていたのか、ワケワカメです。
 ということで、どうにもはっきりしない。言うなれば、『W』は旧作の漫画版とアニメ版の“ハイブリッド続編”って感じですねぇ、今のところは。

 少なくとも第一話を観た限りでは『二世』のカケラもありませんから、『二世』はパラレルという扱いなのかもしれません。
 ちなみに『二世』は漫画版アニメ版ともに、漫画版『タイガーマスク』の続編として作られました。これは、その内容から確定しています。