小つち (旧暦 文月廿二日)

 ワン子の散歩に、いつも田んぼのあぜ道を通るのですが。
 毎年、今の時期になりますと、田んぼの水の中に、それはもー、でっかいタニシがワラワラと蠢いているのですよ。田植え前には、いったいどこにいたのかと不思議なほどにデカい連中がウヨウヨと。

 でまあ、タニシと言うと、かの北大路魯山人(笑)。
 このおかた、ご幼少の頃に死にかけて医師から「好きな物を食べさせてやれ」と見放されて。で、欲しいと懇願したのがタニシで、それを食べたところたちまち元気になったという逸話が、自伝にあります。以降、「食べたい物を食べたいときに食べるのが健康の元」という考えかたで通したそうな。『美味しんぼ』では、魯山人はタニシの生煮えを好み、そのために寄生虫にやられて命を縮めた、とされてますね。

 むーかし、惣菜屋にあったタニシの煮込みか何かを買って食べたことが一度あるだけで、そのときも旨いような泥臭いような印象でした。
 で、毎日歩くあぜ道からタニシの群れを見る。いや、他人様の田んぼですから、勝手に入って獲ったりなどしませんよ。でも、許可をいただいて獲ってみてもいいかな。
 などと思っていた矢先、たまたま閲覧したサイトで、あれがタニシではないという驚愕の事実を知り、叩きのめされました。

 俗名こそ「ジャンボタニシ」ですが、タニシとは全然別の種類なのだそうで。しかも、稲にとっては有害生物というオマケつき。
 道理で、異常にバカでかいうえに、農家の人が掬っては踏みつぶしてたワケだ……本当の田螺なら田んぼの役に立ちますからね。

 いやー、喰わんでよかったー。
ジャンボタニシことスクミリンゴガイは、ウシガエルアメリカザリガニ同様、もともとは食用として海外から持ち込まれたものではあるが、あんまり旨くないという話も……)