この四月から、kindle 市場にジャンプが本格参戦してきましたね。お試し版だのスターター・ブックだのと、無料攻勢かけてきてます。
往年の名作揃いですから内容的に問題があるはずもなく。良作・傑作であればあるほど、読んでしまえば無料の範囲で我慢できるはずもなく(笑)。
前々から、かの『ブラックジャックによろしく』全巻が完全フリー化されており、作者さんは何考えておられるのか? と思ったものですが。この戦略が大当たりして売り上げは億に到達したそうで。
その事実を知って、ジャンプが無料攻勢に転じたということなのでしょうかね。
電子本での無料公開は、以前からラノベのレーベルが公式サイトでやっていた「立ち読みシステム」などとは段違いに、しっかり内容を鑑賞できる点が大きいとも思います。
今後は各出版社とも、コミックやラノベの電子版無料公開(期間限定でないほうでの)に、より積極的になっていくことでしょう。石ノ森章太郎さんや松本零士さんなどの名作も第一巻が無料公開されてますし。
それと。
kindle の無料本では、自費出版(あるいは自己出版?)らしいブツが目立つようになってますね。
いくつか試しにワンクリックしてみました。まあ内容は、無料だから許せる範囲でしたよ(苦笑)。
ただ、この流れには、従来の「自費出版」や「協力出版」というありかたを壊してくれるのではないかという期待が、かなりありますね。すべてとは言いませんが、一部に悪質な自費出版会社があることは事実ですし。そういった悪徳商売が崩壊してくれれば、被害者が出ずにすむわけです。
考えてみれば、紙の本と違って、電子書籍では「販売部数」はあっても、「発行部数」という概念が存在しないのですよね。電子書籍の販売はデジタル・データのコピーに過ぎませんから、紙の本みたく、まとまった数量をあらかじめ用意する必要も、返本による不良在庫を恐れる必要もない。
ですので、例えば kindle本を自己出版する経費のことは調べてないので判りませんが、さすがに紙の本みたく大金を巻き上げられることはないと思われます。それは、すなわち自費出版の垣根が低いということで。となれば裾野が広がりやすい分、電子書籍出身の人気プロ作家が出てくるのも時間の問題なのではないかと。
少し前ですと『SAO』の作者さんみたく、Webサイトに公開していた作品が商業出版に至るというのがありましたが(イラストレーターの場合は、もっと以前から、このルートでのプロ仕事というケースが多々ありますね)。これからは電子書籍での無料発表が、投稿やコネとは別の、プロ・デビューへの道として期待できるのかもしれません。
まあ、叩かれるのが怖いオイラは、ちょっと勇気ないですけどねぇ、kindle本での公開って。
あそこのレビューは、はっきり言って意味不明な輩による見当違いな暴言のやりたい放題という面がありますから(「『カリオストロの城』の絵が稚拙」だなんて、よくも言えるものだよ)。
データ作るのも、めんどくさそうですし(汗)。
ただ。
電子本が発展するのに反比例して紙の本が衰退する事態だけは願い下げですね。
これからは不良在庫や改訂の問題に有利な電子書籍が主流になっていくでしょうが。一度、楽を憶えた者は堕落するという法則に則れば、出版社が今後、紙の本に消極的になる危険性を否定できません。特に古い本の重版・復刻には否定的姿勢を取るようになるでしょうね。
その動きに伴って、印刷業も書店も衰退を余儀なくされる……。
名作が電子本でしか読めない。なんてのは、ごめんです。
好きな作品は紙の本で持っておきたいですよ(つか、電子本ってば「所有」してることにもならないし……特にクラウド)。
「紙の本を買いなよ」(@槙島聖護)