(旧暦 霜月十四日)

 ヨルムンガンド計画、発動。
 かくして空にいた七十万人を犠牲に、近い将来に命を失ったであろう数千万人が救われ恒久的世界平和が訪れたのであった。



 本当に?



 ココは決してバカではない、むしろかなり頭が良いのですが(少なくとも、同じく世界平和を目指した衛宮切嗣とは雲泥の差。聖杯に矛盾を指摘されるほどに考えが浅かったですからね、切嗣は)。
 キャスパーに比べると、やはり甘いです。敵に残虐な面を見せる反面、仲間意識が強すぎますから(アールが「自分はスパイだ」と打ち明けたとき、「スパイでもいいよ。みんなには言わないからさ」とまで言いましたし)。

「航空兵器がダメなら海戦兵器を売ろう。船がダメなら戦車を売るよ。銃を売ろう剣を売ろう鉈を売ろう。鉄を封じられたら棍棒を売ろう」

 このキャスパーの台詞が真理だと思います。
「必要は発明の母」とも言いますし、不便があれば工夫するのが人間の長所であり、かつ問題点でもある。
 譲って、最初から「武器」というものを知らない無垢なる人類(『2001年宇宙の旅』にてモノリスに触れる前の猿人ですな)ならまだしも。一度「武器」の魅力(あるいは魔力?)を知ってしまったヒトが、空を封じられたくらいで武器を争いを諦めるとは思えません。

 まあ、ココ自身「空は退行する」という表現を使っていますからね。
 これはつまり、いずれまた空は今の状態にまで戻ってくるであろうことを示唆していませんか? まさに、↑のキャスパーの台詞につながります。
 奇抜で過激なるヨルムンガンド計画すら、焼け石に濡れ布巾をあてがう程度の対処療法に過ぎないと自覚しているのかもしれません。

 恒久的世界平和なんて、神でも降臨しない限り無理なんでしょうね。
 で、神が降臨して地上の現状を認識しちまうと『009』天使編になるわけで……どっちにしても自然界のバランスを崩してるヒトって詰んでませんかね?
 つまり世界中の人々から制空権を取り上げるだけじゃ片手落ち、増えすぎた人口を減らさないと成果は上がらんでしょう。
 あ、だからギレン総帥は、あんなことやらかしたのか。



 にしても。
 ヨナ坊が出て行ったときのチェキータさんが可愛すぎる。
 刺客を笑顔のまま返り討ちにするよーな人には見えんわ(たぶん、この作品中で最強の女性はチェキータさんですよね。つか、レームだって勝てんかもしれんな)。