(旧暦 長月十七日)

 最近、『009』の勢いが凄いですね。

 絵柄が激変している新作のアニメ映画と言い。
 小説による完結編と言い。

 ただ。
 新作映画はともかく。
 小説版完結編には期待よりも不安のほうが大きいのです。
 なにせ書くのが石ノ森さんのご子息ですからね。別にイタコさんを呼んで、お父上を憑依させたわけでもなく。単に、ご子息が創作するだけの。

 もちろん、土台として、石ノ森さんが生前に残された構想ノートを据えているという事実はあります。
 でも、それでもね。
 偉大な創作者の血縁が必ずしもまともな創作者とは限らない。
 と言うか「鳶が鷹を産む」こともあれば「鷹が鳶を生む」こともある。つか、むしろ後者のほうが多かろ。

 父親が残した名作『ブラック・ジャック』をアニメ化でズタボロにしてくれた思い上がり激しい息子氏、という実例もあります。
『009』完結編が、笑うしかなかった『ブラック・ジャック21』みたくならないか、心配でなりません。

 ちなみに、この小説版完結編をコミカライズしたものは、石ノ森さんのお弟子さんだったかたがメインとなっての作画担当なため、その絵柄が少年サンデー連載時の絵柄とそっくりなのですよ(つか、実質的に描いてた人が同じってコトだからね要は……苦笑)。
 だから、下手すると絵柄に騙されかねないという懸念も、漫画版完結編には、あります。

 個人的には。
 石ノ森さん直筆の構想ノートそのものを出版してほしいと思います。
 素材を無加工で発表するなど、石ノ森さんが草葉の陰でお怒りになるかもしれませんが。
 後継者を気取る勘違いで思い上がりな連中が寄り集まって下手に手を加えるよりは、ずっとマシだと思うのですよ。