『ポーの一族 春の夢』
萩尾望都/フラワーコミックススペシャル
実に四十年ぶりの『ポーの一族』!
えー!? そんなに…………なりますね。
なのに、さすがです。相変わらずエドガーは良い塩梅で“大人”だし、アランはガキだし。短期間でも、あるいは下手すると一話の中ですらキャラがブレる作家も少なくない中、作品としてのブランクを感じさせない安定感。ご本人が気にしておられる絵柄についても読者は問題視してませんから、ご安心を。
ただ、残念(?)なことに、続編でない続編でした。つまり、あの最終話「エディス」のその後ではなかった。『ポー』の長い長い時系列の途中に挿入されたエピソードだった。
とは言え、前後の矛盾を生じさせることなく、そればかりか過去作品の未解決要素を巧みに回収してもいたりで、その手腕には相変わらず脱帽のひと言です。
新キャラも、こっち側、向こう側、そろって魅力的で。おまけに、こっち側の新キャラのおかげで、「エディス」後もエドガー生存の可能性が一気に上昇しました。これは大きい!(いや、当時から萩尾さんは「生きてる」宣言なさってたそうですけどね♪)
しかもしかも、あの人までご登場とは! 意表を突かれるなんてものじゃない。
いや、本当に大盛りの大サービス…………にしても、ポーの村って、あんなことしてきたのかよ。桑原桑原。
ポーの一族が、数ある吸血鬼種族の中の一部分にすぎない、という点は読者視点では新発見ですね。あのオービン卿ですら、そこまでの情報は掴んでなかった。また、このおかげで旧作連載当時に話題となった「バンパネラ」問題も自然体で解決♪ 何よりです。
『ポー』に限らず、萩尾さんの作品はページが詩になっていて見とれてしまいます。SFの人なのに、何この芸術脳(笑)。
こいつのせいで、過去作品を一気に読み直しましたよ。やっぱ、すげえ! 気づけば、オービン卿になった自分がエドガーを追いかけてる。当時のカバー絵を使った復刻版も欲しくなりました(自分のは文庫本なんで)。
そして、「エディス」後の物語も読みたいです。PCやケータイを使うエドガー、見てみたい♪