彼岸入り (旧暦 葉月廿五日)

 昼行灯な記事にしても、これは酷い。スカスカすぎる。

https://news.yahoo.co.jp/articles/819697b5a040f95b3676c764aff466d1edf93be9

 記事本文よりも、寄せられているコメント群が興味深いし勉強になりますね。
 皆さん、お好きなようで♪

 妖之佑は日頃から申してますように「ウルトラ第一期原理主義者」(汗)ですので二期、取り分け『タロウ』には批判的です。
 ですが、だからと言って『タロウ』好きな人のことを否定するつもりはないです。まあ、幼少時の刷り込み効果を意識的に排除したうえで冷静になって作品の出来を吟味してみてほしいとは思いますが。
「第一期原理主義者」ではありますが、第一期にも欠点は山積みです。それは何度も観て、よーく判ってます。
 同様に、『タロウ』が原体験の人にも、円谷英二体制(『Q』『マン』『セブン』『怪奇』『MJ』『戦MJ』)と円谷一体制(『帰マン』『A(前期)』『ミラー』)と円谷皐体制(『A(後期)』『タロウ』『レオ』『ジャンボーグ』『ファイヤー』『ザ☆』『80』『USA』『G』『パワード』)とで、それぞれの作品の質を冷静に比較してみてほしいんですよね。見えてくること、あると思いますよ。

『タロウ』を端的に言い表すなら、視聴者層を幼稚園~小学校低学年に徹底的に限定した特化作品である、と断言します。
 第一期のように「大人も楽しめる」ことは、ハナっから考えていません。結果的に大人も楽しめるパーツがあるとしても、それは偶々の結果であって意図したものではない。
 これは三代目社長である円谷皐氏の考えが強く反映されたのだと思われます。氏は創作者ではなくビジネスマンでしたから。そのため、円谷プロとしてだけでなく、業界としても初めてに近いことを実行しました。作品の質で稼ぐのではなく関連グッズでの収益に重きを置く、マーチャンダイジング最優先の姿勢です。
 その視点でなら、対象を幼児に絞ったのは大正解と言えます。事実、『タロウ』がもたらした売り上げは当時、歴代作品中ダントツだったそうですから。
 反面、視聴率欲しさの安直な過去キャラ客演には閉口せざるを得ません。これは『帰マン』のバルタンJr. や養殖物ゼットンの酷さにも言えることなのですが。とにもかくにも「卑怯もラッキョウも」な肥満メフィラスは頂けませんでしたね。
 要するに、言葉が乱暴ですがあえて言いますと、『タロウ』は子供騙しなんですよ。それこそ、第一期に円谷一さんや金城哲夫さん、あるいは満田監督や実相寺監督らがTBS局内で臍を噛んでいた、「しょせんジャリ番」というTV局社員の悪口。で、三代目は自ら、商売のためにウルトラをジャリ番にしてしまったわけです。
 この三代目の商魂に染まったウルトラマンを、『セブン』中途で降ろされた成田亨さんは「鎮魂歌」という詩で、いたく嘆いておられましたね(内容は、ぐぐってくだせ)。ウルトラマンの墓標まで作っておられた。
 三代目商法は大成功。大儲けして円谷バブルとなった。
 だが、しょせんはバブルです。次の『レオ』で視聴率一桁という大失態、ウルトラそのものがシリーズ打ち切りになりましたとさ。

 三代目は、後に四十年近くにも渡った、タイの会社との例の商用権騒動の元凶ですし。
 創業から良好に続いていた東宝やTBSとの関係をブチ壊した張本人でもありますし。
 円谷英明氏(一氏のご子息)による暴露本によれば、ご自身が六代目社長に就いてみて、会社にあるはずのお金が無いことに愕然としたそうです。調べたところ、三代目とその取り巻きが書類も作らず、会社の金庫から毎晩のように飲み代を掴んでいっていたらしく。なので帳簿と金庫とで数字が合わなかった。まるで昭和の「ごっつぁん体質」なプロレス団体ですな。
 などなどなどなど。

 円谷皐氏は営業マンとしては優秀だったものの、経営者としてはいささか問題ありだったのかもしれません。
 今は少なくなりましたが。かつて「懐かしの人気番組」みたいな特番が多かった頃のことです。
 番組でウルトラマンを取り扱うと必ず皐氏が登場して、MCが「ウルトラマンを作ったご本人でーす」などと阿呆面で紹介、その言葉を臆面もなくご機嫌顔で受けて、自分の作品であるとばかりに偉ぶったコメントを語っていた。その姿に違和感どころか怒りすら憶えたものです。「てめえ一本も撮ってないだろ!」とね(苦笑)。
 雑誌やムックの特集記事でも同様の姿勢でした。
 職人気質の父親や、生真面目苦労人の兄と違って、承認欲求の強すぎる人だったと容易に推察できます。

 ただ、皐氏にも同情すべき点はありまして。
 円谷英二監督はTVへの進出に際し、パイプを通すために二人の息子をTV局に就職させました。一氏はTBSに、皐氏はフジに。
 そして円谷初のTV作品となるはずだった『WoO』の企画がフジで脚本段階まで進んでいたものの頓挫。間を取り持っていた皐氏のあれこれがすべて徒労に終わった形です。
 一方で、遅れてTBSで進められていた『アンバランス』は撮影に入り、『ウルトラQ』へと改題されて今にまで続くウルトラ・シリーズの源流となった。
 加えて、『Q』は裏番組の『W3』を完膚なきまでに叩き伏せて、あの手塚治虫先生に煮え湯を飲ませた。少年だった手塚眞氏が『W3』でなく『Q』を観たがったため手塚家の空気が、それはもうヤバかったらしいですね(怖っ)。その『W3』を放送していたのがフジであり担当が皐氏だったので当時、皐氏の社内での居心地は最悪だったことでしょう。後に『ミラーマン』のおかげで、氏も針の筵から解放された、のかな?
 そもそも、聞くところによると皐氏は演劇学生だったそうで。なので芝居や演出で身を立てたかったであろうことは想像に難くありません。
 しかしながら、父親や兄が才能ありすぎた。その父親の意向でプロデュースや営業の畑を歩くことに。謂わば、お家の事情で夢を諦めたわけですね。
 なので、社長に就任して、そのコンプレックスや鬱憤が爆発したのかもしれません。人知を超越した神のごとき存在だったウルトラマンに家族の概念を植え付け、性差を与え、ペットまで飼わせ、人間のレベレに引きずり下ろしてしまった。
 商売的には正解かもしれませんが。
 一方で、若き皐青年が目指していた表現者の姿勢から見て、『タロウ』は本当に正しい道だったのでしょうか。
 ともあれ、神ならぬただの人間である皐氏ですから、その紆余曲折は仕方ない部分もあるかとは思います。

 その後の皐氏が「知らない」「聞いてない」「言ってない」のワンマン社長となり、円谷プロを迷走させた。
 これが円谷作品の質的低下とシンクロしていた。
 と言っても、まちがってはいないと思うのです。

 円谷プロが円谷家の手を完全に離れた今となっては過去のことに過ぎませんけどね。
 最近のは観てませんが、『ネクサス』『マックス』『メビウス』は好きですよ。はい。