一粒万倍日 (旧暦 卯月廿六日)

 あやのすけはまたもねんがんのあいてむをてにいれた





 2018年に、中華製品を買って楽しんでましたが。
 それだけでは飽き足らず。
 と言うか、長年の憧れだったんですよね、出力管四本構成のアンプ。

 四年前の Reisong A10 は中華製ということで、お求めやすいお値段でしかも真面目に作られた製品で、それはそれで満足してます。
 でも、A10 は出力管が二本のシングル・ドライヴ。
 やっぱり、プッシュ・プル式も使いたいじゃありませんか。

 と言うわけで買いました。

 
(マミヤさんが A10 のときより後ろに下がってるのは熱すぎるからなのだ)

 なぜ買ったか。
 あるいは、なぜ買えたか。
 それは安いから。

 でも中華ではありません。
 れっきとした日本製……と言いますか横浜製です(裏にちゃんと「YOKOHAMA」って記してある♪)。

「Softone Model7」というのが製品の名前です。
 ソフトンさんは、ガレージメーカーという言葉が正しいかどうか判りませんが、個人でやっておられる会社です。
 ネット上の評価をあれこれ探しますと、悪い批判が見られない。あっても根拠の一切ない悪口レベルで。
 故に、信頼できる処だと思って、実はこの三年強、ずっと気になってました。
 いやねー、実は実は A10 を買った直後にソフトンさんの情報が入ってきて、実は実は実は悶絶してたんですよ。
 はい、そうです。A10 買う前に Model7 を知ってたら、Model7 を買ってました。まちがいなく。

 でも、A10 を入手した以上は使い倒さないともったいないです。
 これが粗悪品とかならサッサと手放せますが、真面目な製品ですからね。
 だから当分はソフトンに手を出せないな。
 でも、個人会社だから、そのうちに買わないと先々のことは誰も判らないし。

 といった心境で、そんなこんなで三年半ほど経ちました。
 で、このたび急ぐ理由ができたので、アンプだけでなく一気に球も買い揃えました。ほぼ“大人買い”でしたよ。(;^_^A

 

 やっぱり球の灯は浪漫です。
 ちなみに、挿してるのはJJ(スロヴァキア)の球。

 
(球を替えてみた♪)

 少し詳しい人は「?」と思われるでしょうね。
 このアンプ、前段用の電圧管がありません。出力管のみです。
 ソフトンさんによると「単段増幅」の「差動プッシュプル」とのことで、増幅が三段でも二段でもなく一段だけなのですね。
 それでなんで充分な音量が出るんだ? との疑問には、差動回路にするため出力管に送り込む手前に MOS-FET を使っていて、これが実質的に前段増幅の役割も兼ねている、らしいです。
 そう。実はこの Model7 は、管球式アンプと言うよりは、真空管半導体のハイブリッド・アンプなのです。しかも、回線はプリント配線。
 ↑で触れた「悪口」は、ここを叩いています。「こんなの真空管アンプじゃないっ」とね。

 妖之佑も、この三年強、この部分で悩みました。
 電源をシリコンでなく整流管で、音の通り道すべて球、しかも配線は手配線、さらにヒーター回路にも半導体を入れず交流点火。
 これはこれで、管球式アンプの究極形態で、浪漫であることはまちがいないんです。
 ただ、これに徹すると、どうしてもお高くなる。庶民が買うのに敷居が高くなる。

 ソフトンさんは、この問題に対して、音質とコストの両立を求めた結果、ハイブリッド&プリント配線を選んだのだと思います。

 実際、ハイブリッドでプリント配線であっても、音質をないがしろにはしていません。
 トランスを電源・出力ともRコアに、管球式アンプに付き物のカップリング・コンデンサを回路から廃除(と言うか、単段増幅だからそもそもカップリングとか要らない)、多極管を三極管接続に、プッシュプルと言いながら実は差動回路だったり、交流点火だったり、妖之佑の環境では使えませんがバランス入力回路も備えてあり、と音にこだわった作りをしておられます。
 しかも、EL34 、6550 、6L6GC ……等々と複数種の球を無調整であれこれ使えるという楽しい仕様。だからこそ球の“大人買い”という体たらくなのだよオイラ(爆)。

 音の話は……何せ妖之佑は駄耳ですから(汗)。

 ただ。
 んー。
 オーディオ評論家みたいな言いかたは、したくないのですが。

 今まで気づかなかった細かな音が聞こえるようになった(と思う)。
 楽器の細かなニュアンスが目立つようになった(と思う)。
 と言うか、普通に聴いてて気づかされるんですよね。「あれ?」って感じで。
 もちろん今までのアンプでも鳴っていたと思いますが、気づかなかった。それを気づかせてくれるほどに判りやすく鳴らしてくれる(と思う)。
 そんな感じに思ってます。

 良い音だと思います。

 あと、これは当然なのですが。
 シングル式の A10 とは比べものにならないほど低音が鳴り響いてくれます。
 いえ、A10 でももちろん耳には聞こえてたんですが、Model7 に替えてからバスドラムとかベースとかが腹にズシンと来るんですよ。この差は大きい。
 石アンプのときは響いてたんだろうけど、A10 に替えて忘れてたようです。

 興味深かったのは。
 ヴォーカルやアコースティック楽器やエレキ楽器に比べて、シンセサイザー曲では(低音の響きっぷりはともかく)今までのアンプと違いを感じませんでした。
 凡耳の、しかも安物スピーカ使いの意見に過ぎませんが、シンセ曲をメインに聴く人なら石のアンプのほうがいいんじゃないかな、と思います。

 

大人買い”の行き着く先、国産の銘球にも手を出してしまいました。もちろんレトロです。一部の高級品を除き、国産はレトロ球しかありませんから。
 この球が何かは判る人には判る。

 

 もう一組、国産球を♪
 あと二組は欲しい国産があるのですが、高すぎて無理でした。何せ四本一組で使うからねー。

 格安アンプ Reisong A10(今も中華のあちこちのブランドで、それぞれの型番で販売されてます)より少しお高いだけで、これだけのパフォーマンスを発揮してくれる国産アンプが手に入ることに、本当に驚くと同時に感謝です。
 同種と言うか、似たようなコンセプト(プッシュプルで複数種類の球が使用可)の某国内アンプは、組み立てキットで倍以上しますからね価格。組み立て代行つまり完成品なら三倍!
 ソフトンさん凄いです。

 一つだけ注意点を。
 この Model7 は交流点火のためか、電源投入時にだけ、そこそこの大きさのハム音が出ます。
 数秒で落ち着きますが、それからでも高能率スピーカであれば耳を最接近させれば微弱なハム音が判ります。
 時間が経って充分にアンプが温まる……つか熱くなるとハム音は判りません。
 妖之佑が使っているスピーカは能率 90dB ですが、普段に聴く位置ではピアニッシモでも無音時でもハム音は聞こえません。今どきの 80dB とかの低能率スピーカなら全然判らないんじゃないかな。
 なので妖之佑は気になりませんが、気にする人であれば懸案材料だとは思います。
 話によると、相談次第で試聴も可能らしいので、興味のある人は試聴なさるのがいいでしょうね。

 ソフトンさんには他に、銘球 300B を使った Model8 もあります。
 巷の評価は、かなり良いです。
 妖之佑は手を出せませんが(主に置き場の問題)、それでも直熱三極管は憧れですよねぇ(どんだけ憧れがあるんだよっ)。



 残る問題は、システムから外した A10 の身の振りかた。
 ロクハン一発を導入して、シングル式のこいつで鳴らしたい気持ちもあるんですが。
 とにかく置き場所が……ね(汗)。
 それと。
 ロクハン一発鳴らすなら、そりゃー直熱三極管のシングルだろ、というアブナイ誘惑もありますし。
 むー。
 とりあえず、あれからずっと A10 は埃よけを被ったオブジェになっとります。(;^_^A