七草、庚申、太宰府天満宮鷽替え鬼すべ (旧暦 師走五日)

 年末に書けばよかったかな。



 お正月のアイテムとして挙げられるものと言えば。

 門松
 注連飾り
 鏡餅
 餅花
 御年玉

 あたりでしょうか。

 門松は、立派なお屋敷でもない限り、個人宅で飾るところは少ないと思いますが。
 それもそのはずで、門松は豪華に進化した姿であって、もともとの形はシンプルに松です。門松のことを松飾りとも言うのは、その名残ですね。
 元は、山から小さな松を抜いてきて門に飾った「根引き松」だそうです。師走の十三日が「松迎え」となっているのは、これのこと。
 で、近くに山がないとか、抜くのが大変だからとかで、松の小枝を伐ったもので代用したのが、今ではホームセンターやスーパーなどでも売られるようになりました。
 門松はデカすぎますからね。松だけでええやん。と思う。

 注連飾りは判りやすい。注連縄が進化変形したものです。最近ではクリスマスのリースみたいなのもありますよね。『美の壺』で全国の注連飾りを紹介した回では、様々な形の注連飾りが紹介されていて面白かった。
 だから、実は注連縄でいいんですよ、玄関に飾るのは。
 つまりです。お正月の注連飾りは元々は、古くなって傷んだ注連縄を年越しにあたって掛け替える習慣(二見浦の夫婦岩とかで、やってますよね)が、長い年月のうちに元日限定アイテムに変化したものだと考えられます。
 この間も言いましたが、お伊勢さんのお膝元で玄関に飾られている「笑門」や「蘇民将来」の木札が付いた注連縄は、お正月限定でなく一年通して飾られます。これこそが、本来の姿を連綿と受け継いでいると言えましょう。
 余談ですが。昭和の時代、自動車のフロントに注連飾りを付ける風習がありました。変だ変だと思ってましたが、注連飾りイコール注連縄と考えると合点がいきます。ほら、神事などで馬や牛の首回りに注連縄を巻いたりするでしょ。あれと同じですよ。まあ、交通安全の面から、廃れて正解だとは思いますけどね。でも、低速で転がす程度のトラクターとかなら飾ってもいいんじゃないかな♪

 鏡餅は言わずもがな。餅を鑑の形にした、神様へのお供え物です。
 だからこそ、鏡開きでようやく家人が手を付けられる。つまり、おさがりですね。
 神様への物ですから当然、家の最も良い場所に飾ります。一般的には座敷の床の間。

 実は、床の間に飾るものが、もう一つあるのです。書籍で読んだだけですが。
 食積(くいつみ)と呼ばれる縁起物で、蓬莱山に見立てたという説から関西では蓬莱飾りと呼ぶそうです。
 三方の上に、あられや乾物などを山の形に積む。言ってしまえば、それだけのもので、来客が座敷に通されると、それをつまむ。まあ、食事というよりは儀礼的に口にするんでしょ。
 この食積が進化して、おせち料理になった説もあるそうです。
 また、鏡餅と食積が合体している地域もあるようで、中々に奥が深い。

 餅花は地域によっては繭玉だったりします。
 これも立派なお屋敷でないと飾らないと思います。
 が、商店街や地下街などではプラ製のがズラリ飾られますよね年末年始。あれですあれ。
 柳などの枝に紅白の餅や団子をあたかも咲いている花のように挿して、それを屋内に飾る。
 繭玉のほうは、米粉を繭の形にして、同様に枝に挿す
 ともに小正月、どんどの火で焼いて食べるそうな。

 御年玉は本来、子供へのお小遣いではありません。
 新年が明けると得意先や本家、家主、恩師、恩人などなど、日頃お世話になっている人の宅へ御挨拶に訪問します。年始廻りですね。
 そこで渡されるのが年玉。つまり挨拶に来た目下の者に、訪問を受けた目上の人が下げ渡す性質のものです(訪問者が持参して差し上げるほうは年賀と言います)。
 儀礼的・縁起担ぎ的な意味が強いので中身(年玉はたいてい木箱に入っている)に実用性はありません。妖之佑が知っているのは扇で、それを押し頂いた者は、その場で木箱を軽く揺する。するとカタカタと鳴るので、それで中身確認終了となります。ぶっちゃけ中身がただの木片でも問題ない(笑)。
 帰宅しても開けたりはしません。じきに買い取り屋が近所を廻ってくるので、そのまま売り飛ばします(爆)。
 買い取り屋は、それをそのまま、まだ年玉を出していない人の所に売りに行きます。売れなきゃ売れないで、年末まで取っておいて歳末セールで大売り出しすればいい。痛みが目立たない限りは、同じ物がグルグル巡回するのですね。見事なリサイクル。
 つまり、本来の御年玉とは、例の「棒茄子を上げる」(@大原部長)と何ら変わらないほどの形式美なのです。
 子供向けの行事になったのは、ずっと後のことで。
 現金を入れるようになったのは、びっくりするほど近代のことだそうな。

 番外として松竹梅があるかな。
 これ、どこに入れるか、というか門飾りでもあり、玄関飾りでもあり、また座敷飾りでもありますからね。分類が難しい。
 門飾り、すなわち松飾りと兼用になるケースが最も目立ちますか。門松の材料に竹だけでなく梅も入ってたりしますからね。また、松の小枝にも梅の小枝と笹を合わせて束にしたものがある。ともに松竹梅に違いありません。
 玄関飾りなら、寄せ植えですね。大きな鉢を玄関に置くか、入ってすぐの所に盆栽的に飾るか。
 そして床の間にも、これまた盆栽風の寄せ植え、あるいは花瓶に生ける用の切り花。
 もっと言っちまうと、おせち料理用に年末に売られる、少しお高めの蒲鉾。あれ、金太郎飴方式の松竹梅三本セットだもんな~。そうでなくても、おせちの飾りとして松と笹と梅花が入ってたりしますし(プラ製だけど)。
 結論。松竹梅は神出鬼没で底が知れぬ。