不成就日 (旧暦 神無月廿日、戎講、誓文払い)

 豊ノ海関と言えば、小錦関、大乃国関に並ぶ巨漢だった印象ですね。活躍した時期は少しズレますが。
 現役時代の公称で 225kg だったそうで。ちなみに、小錦関が 275kg 、大乃国関が 221kg でしたが、お二人とも今は、かなり減量しておられます。

 大相撲の力士(現役、引退後とも)には早世するかたが多い印象です。他のスポーツよりも。
 やはり、力士としての体作りに問題があると言って差し支えないと思います。

 横綱千代の富士は、十両昇進時にガリガリでした。太れない体質だったそうで。
 それを無理して増やし、最盛期には 120kg にまでなった。いや、それでも 120kg ですから他の力士に比べたら小兵です。
 なので、引退したらすぐ痩せると思っていました。同じく小兵の若島津関や霧島関、寺尾関(霧島と寺尾は千代の富士より後の引退ですが)がそうであるように。あと、現役時代に無理して 160kg まで太ったため膝を壊して休場が続き無知な大衆から罵声まで浴びせられた貴乃花関も、今ではスッキリ体型ですし。
 しかしながら、千代の富士関は九重親方になっても体型が変わらず。生意気ながら心配していましたところの、あの急逝でしたからね。やっぱり、というのが訃報を知っての率直な感想でした。相撲部屋での生活が、太れない体質を痩せられない体質に変えてしまったのでしょう。

 曙関も、引退してからだいぶ後に(というか最近)、大病を患い極めて危険な状態だったとのこと。
 これも若い頃のツケが回ってきたんじゃないでしょうか。病床に伏すまでは、体重が減らなかったみたいですし。

 早起きして朝食を摂らずに猛稽古。
 それから朝昼兼用で大飯喰らって(都市伝説だと思うが、喉の手前まで詰め込むとか)すぐ昼寝。
 夜は夜で、また大飯喰らって、その後は就寝。
 ついでに、番付下の力士が口にできるのは炭水化物(飯)だけ。鍋の中の蛋白質や脂質(つまり肉魚)や繊維質(野菜)は上位力士と親方が綺麗に平らげてしまう。残るはカケラと汁ばかり。「汁に栄養がある」とは九重親方の言ではありますが、とてもバランス取れる量じゃない。栄養士の指導を受けたわけでもありませんし。
 早寝早起きと言えば聞こえはいいですが、一日二食の栄養偏ったドカ喰いで食後すぐ寝るわけですからね。普通なら医師や栄養士に猛烈にダメ出しされる内容です。

 しかしながら、これが第二次性徴を過ぎた十代半ばの男子をさらに成長させるには効果がある。力士生活すると二十歳くらいまで骨が伸びるという話もありますからね。
 上背と目方が勝負に大きく影響する今の大相撲では、巨体化を目指すのも仕方ありません。白星重ねてナンボの世界ですから。
 でも、その人の一生は力士としてだけではなく、通常なら引退後のほうが長いのですから、その後の生活も考慮して育成するのが指導者側の責任ではないでしょうか。
 ぶっちゃけ、大型力士が引退しても親方になれなかったら、つまり廃業したら、その後の生活では巨体が邪魔になりますよ。関取時代と違って付け人もいませんし。現役力士であってすら、日常生活に支障を来すほどに太ることは悪だと思います。

 昨今の力士大型化の流れを、ここらで断固、絶つべきでしょう。

 具体的な方法として素人ながら申し上げたいのは。
 新弟子検査で実施される内臓検査をもっと厳格にする。なおかつ、現役力士には本場所前に同様の検査を義務付ける。これで引っかかった者は、その場所を強制休場させる。
 休場すれば全敗であり、番付が大きく下がります。太って立ち合いのぶつかり合いを有利にするのと、太ってレッドカードを貰うのと、力士とその師匠に、天秤に掛けて決めさせればいい。
 これで不健康に太ることをある程度は防止できるのではないでしょうか。

 とは言え、こんな感じの大胆な改革案を仮に横審あたりが提示しても、協会は聞く耳持たないと思います。
 今の協会に自浄力など皆無ですから。阿呆みたく「伝統」とか、ほざくに決まってます。

 であれば、文科省厚労省が動くべきでしょう。何せ、日本相撲協会は公益財団法人です。通常の民間企業じゃありません。プロレス団体とは違うのですよ。
 人の役に立たないなら、むしろ害があるなら、公的にペナルティを出すべき。いっそのこと、公営財団法人の認定を取り消す。
 そのためにも、科学者が科学的に、大相撲のシステムが持つ欠陥を証明すべきです。

 それでもダメでしょうね。
 政治家や省庁が動くとも思えない。どいつもこいつもバカ揃いですから。

 であれば最後の手段。
 新弟子が集まらなくすればいい。
 実は簡単なことです。
 仮に私が男の子を持つ親なら、まちがっても大相撲の道だけは許しません。本人が熱意を持っていても絶対却下です。理由は「大相撲は不健康で早死にするから」です。
 この認識を協会外部の皆が持てば、協会は嫌でも大幅改革するしかなくなります。

 そこまで追い詰めないとダメなんですよ、あの脳筋デブの団体は。
 豊ノ海関の早世を無駄にしてはいけません。

 一日も早く、心から大相撲を楽しめる日が来ることを願っています。
 合掌。