『コンビニ・オブ・ザ・デッド 100日後に救助されるコンビニ店員』
日野健太郎/NEKO MOOK
タイトルは、たぶんロメロ監督の『Night of the Living Dead』から取ってますね。そう、ゾンビ映画の元祖的作品。そしてロメロ監督もゾンビ映画の開祖と言える。
ただ、ロメロ監督本人は、タイトルからも判るとおり「ゾンビ」とは呼んでいないんですよね。もっぱら「Dead」と呼称している。本編にも「ゾンビ」という言葉は出なかったはず。
なのでロメロ監督としては、ブードゥー教のゾンビを意識していなかったのかもしれませんね。であれば、実際のゾンビと映画のゾンビとが似ても似つかないのも当然と言えます。
ロメロ監督による続編『ゾンビ』は原題が『Dawn of the Dead』なので、やはりゾンビではないのです。
また、『Night of the Living Dead』の脚本家であるルッソが執筆した続編案を元にして作られた『バタリアン』の原題も『The Return of the Living Dead』で、ゾンビではないのですよね。
あのバケモノたちを「ゾンビ」と命名したのは、いったい誰なんだろう?
『Night of the Living Dead』では動く死者に殺された者が、そいつら同様に動きだして人を襲う。噛まれて感染という描写はありません。そもそも死体が動く原因も不明で、ニュースで「放射線が原因かも」と語らせるに留めています。噛まれて仲間になったわけではなく、死んだら死体だから、死体が動く状況下では死体全部が動くということ。
『Dawn of the Dead』では、噛まれて死んだ者が動きだして人を襲いますが、これも同化したという明確な描写はない。事件の原因も不明のまま。
『The Return of the Living Dead』にて、ようやく軍の薬品が原因であり、噛まれると仲間になってしまう、という描写が出てきました。
うーん。気づけばゾンビは感染するものになっていた、ということのようですね。
はっきりとウイルスが元凶の感染症としたのは、ひょっとして『バイオハザード』が初めてなのかな?
でまあ、『コンビニ』。
「100日後」というのは例の「ワニ」を意識したのでしょうか。
ともかく「100日後に救助される」と明記されているので安心して読めました。救出された後に……てな鬱展開も覚悟していたのですが、杞憂でした。(;^_^A
一冊で完結するというのもいいですね。続刊を待ってヤキモキせずにすみます。
ただ、本で一気に読むより、地道に百日かけて読んだほうが、あるいは、より楽しめたのかもしれませんね。
全体に丁寧に構成されていると思いましたが、一点だけ気になったことが。
針を刺すのに、なんで利き腕に? これだけが、どうしても理解できない。
まあ、それ言うとエピローグの、あの生体認証(?)も意味不明なんですが……。