一粒万倍日 (旧暦 文月廿二日)

 ほうほう、『ハルヒ』の新刊、来ますか。
 九年ぶりとは思いませんでした。『驚愕』って、そんな前でしたか。はー。
 アニメは「8」で良くも悪くも巷を騒がせたし。
 原作は角川スニーカーから角川文庫へと進出したし。
 そんなこんなで、またもスニーカーから新作とはね。
 ひょっとすると今、アニメの再放送をしてるのは、これのプロモなんでしょうかね。

 と言いつつ。
 少し冷たい言いかたをしますとね。
 さすがにブランクが長すぎたと思いますよ。
 その間に、熱狂的ファンやコアな考察マニアが展開や裏設定をあれこれ考え抜いて発表しまくって、その結果、作者さんが元々予定していたプロットを使えなくなり身動きとれなくなっているのではないか? という推測は充分に成立すると思うわけです。
 個人的には、SOS団に対抗するグループを出してきたあたりで、作者さんネタ切れなさったか? と勝手に心配したものでした。手札をすべて巷の予想に的中されてしまい、手詰まりになっているんじゃないのかなぁ、と。
『分裂』→『驚愕』で世界線が二つに分岐した構成は、一人称小説としてはいささか問題でしたし(一人称小説最大の特徴と言うかルールは、読者に入る情報が語り手の持つ情報を越えない、という事。要するに、キョンが知らない限り語らない限り読者はハルヒや朝比奈さんの自宅を知りようがない、ということ。プロローグなどをメタ視点でやることはあるが、本編でそれをするなら一人称である意味がなくなる。アニメの「エンドレスエイト」も、その点で重大なルール違反を犯しており、その影響でか演出が崩壊すらしていた)。挑戦精神は理解するけど、追い詰められてたのかなぁ当時の作者さん。
 今度の新刊は『驚愕』の続きではなくサイド・ストーリのようですし。

 そもそも、シリーズ一作目であり作者さんの受賞作である『憂鬱』は、それ単品で完結している作品でした。どの賞でも応募条件には「完結している作品」って、たいがいありますからね、当然のことです。
 完結しているにも関わらず、人気あるから(たとえ無理であっても)続編を、というのは商業出版として至極真っ当な姿勢ですが。そこで短編の『笹の葉ラプソディー』と『エンドレスエイト』からの大作『消失』へという展開は「お見事!」の一言です。『ハルヒ』は、この長編二本と短編二本と、あと『陰謀』の序盤だけ読んでいれば充分かな、とすら思えるほど。それだけ、きちんとまとまっている。
 だからでしょうか。ファンでもない自分からすると、他の巻は蛇足感とまではいかないものの、どうでもいいかな、という感触すらあるんですよね。失礼ながら。
 今度の新刊、もちろん買うつもりではいますが、そこまで期待していないのもまた事実。(;^_^A
 いや、もう完結なんてしないでしょ、この物語。