(旧暦 文月七日、七夕)

 う~ん。
 ライターが見当違いや認識不足を露呈した記事を書くのは仕方ないとしても。
 手綱を引くべき編集長とかデスクとかが、いないんでしょうか?
 そもそも、このライター、『うる星やつら』や『めぞん一刻』をラブコメと言うあたり、なーんにも判っちゃいないね。

https://news.yahoo.co.jp/articles/63bc6afb9612b0dd60a4e99943093f956e153241

 いちおう妖之佑も、かつては高橋留美子さんファンでしたので一家言あるんです。

 記事では「人魚シリーズが高橋作品のターニングポイントである」としていますけどね。
 これ、違いますよ。

 かつての、るーみっく双璧であった『うる星』と『めぞん』が 1987年に揃って完結。
 そして、高橋さんはご結婚なさって、半年ほどの休養。
 休暇明けに開始したのが『らんま½』と『1ポンドの福音』。
 それまでの所謂“るーみっくわーるど”のカラーに比較して、『らんま』はより一層、少年誌向けの内容に、つまりは話や演出がシンプルになっていった。これで見限った人も多かったのです(実はオイラも……)。錯乱坊は好きだが八宝斎は大嫌いなのも、八宝斎には錯乱坊にある奥深さが見られなかったからに他なりません、少なくとも私にとってはね。
 一方で、青年誌掲載である『1ポンド』は、それまでの『めぞん』と違って、より大人向けの内容になりました。四谷さんみたいな非現実的キャラが完全に消え去り、喰えないボクサーたちそれぞれの生活事情などをリアルに描いている点などが、そう。さらに顕著なのは『高橋留美子劇場』の作品群。もはや笑いが大人向けです。
 妖之佑は、『うる星』をコーヒー牛乳、『めぞん』をカフェオレ、『らんま』以降をミルク、そしてご結婚以降の青年誌分を珈琲と例えています。つまり、ご結婚前は少年誌向けと青年誌向けとで混じり合っていた要素を、ご結婚後は意図して完全に分離したのだと考えられるのです。
 そして、記事が重要視している『人魚』シリーズの第一作目発表は 1984年と、ご結婚よりだいぶ前です。以降も三年ほど、『うる星』と『めぞん』は継続しているのです。実はターニングなんて、してないんですよ、『人魚』当時。
 要するにです。高橋さんは、ご結婚の前後で作風を意識的に変更なさったのです。

 高橋さんは『人魚』で初めて伝奇ホラー要素を出し、それが『犬夜叉』に繋がった。かのように記事には書かれてありますが。
犬夜叉』のプロトタイプは紛れもなく『炎トリッパー』ですよ。そこに『忘れて眠れ』と『犬で悪いか!!』の要素が加わった。さらに言うと、高橋さんがお好きな、平井和正さんの『ウルフガイ』要素が根底にはあるのです。
 ガチなホラー系のプロトタイプとなると『笑う標的』でしょうね。こちらが『人魚』の不気味部分に繋がっているのかもしれません。
 て言うか、そもそも高橋さんのデビュー作である『勝手なやつら』もギャグではありながら、平凡な新聞配達青年を中心に、UFOに乗った宇宙人、海底基地から地上侵略を虎視眈々と狙っている半魚人、そして人間の諜報機関という三つ巴が展開、しかも本人は自分が重要人物であることに無自覚という、まるで『ハルヒ』のようなお話です。続いての『うる星』も、経済的には平凡な一般家庭を中心に宇宙人、妖怪、悪魔、幽霊、神様、霊能者、大財閥……等々が入り混じったカオスな物語。高橋さんは元々が怪奇好きで、最初っから各作品に怪奇要素を入れてこられたんですよ。

 誤解されると困るのですが。
 ご結婚をタイミングとしての高橋さんの制作方針変更を否定するつもりはないのですよ。少年誌作品と青年誌作品とを明確に区別するのは立派な戦略です。
 ただ、妖之佑自身は、高橋作品にコーヒー牛乳やカフェオレのような適度に混じった感を求めていたので、珈琲の入っていないミルクを残念に思っただけなのです。『らんま』や『犬夜叉』を駄作だとか批判するつもりは一切ありません。ただ、自分の好みから離れてしまっただけです。
 ですから、それまでの高橋留美子ファンだったことをやめ、作品ごとに評価する方向に舵取りしただけなのです。『人魚』は三巻とも持ってますし、『高橋留美子劇場』も収録した短編集をすべて持ってますよ。
 そもそも、長期連載作品すべてがTVアニメ化され、不定期連載や短編もかなりの率でアニメ化されている漫画家さんなんてザラにはいません。高橋さんから遡ると、トキワ荘時代にまで行ってしまいますよ。とんでもない漫画家さんなんですよ、高橋留美子さんは。

 個人的には、短命連載で終わった『ダストスパート!!』とか大好きです。舟幽霊をパロった話とか楽しかった♪
 読み切りの『ザ・超女』は、アニメ版も傑作だったなー♪♪