(旧暦 卯月三日、隠元禅師忌)

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 『河童の三平
  水木しげる/ちくま文庫


 自覚なかったんですが。
 自分、水木さんの漫画を買うのは、これが初めてです。
 いえ、ご著書は何冊も購読してます。ただそれらが妖怪解説本とかエッセイ集とかだったというだけで。
 漫画作品のほうは、漫画本の虫だった旧友から借りて読むか、あるいは立ち読みがデフォでした。(;^_^A
 言い訳になりますが、水木さんのは買って読むとなると、かなりの覚悟が必要だったからなんですよ。例えば『鬼太郎』なんてメッチャ巻数ありますからね。だから尻が重たかった。

 以上の見苦しい言い訳からお判りのとおり、『河童の三平』も、すべてのエピソードを読んでいたわけではなかったのです。なので今回は、きちんと読みきりました。
 この本、様々な形態を取っていた複数種の『三平』をあえて分厚い一冊にまとめたものなのだそうです。(※) なにせ『三平』は『鬼太郎』同様に、紙芝居と貸本漫画を経て少年漫画雑誌という流れでしたからね。媒体を変えるたびに同じ話を描き直したり修正したり加筆したりという繰り返しで、厳密にすべての ver. を網羅するとなると大変なことになる。そこらを上手く調整しているようなのです。
ゲゲゲの鬼太郎』のようなヒーローが『三平』には不在というのが味ですね。例えるなら『墓場の鬼太郎』から毒気を抜いたような感じのマイペース。冒険譚もありますが、それでもどこかマイペース。
 ただ、よくよく考えると三平の境遇は、かなり不幸なんですよ。助演男優賞を授与したいくらいに死神が活躍するほどに「死」と隣同士なストーリ。なのに暗さを感じさせない三平の雰囲気。まるで仙人です(笑)。あれで小学一年だというのだから、でっかいびっくりです。人の死すら自然の一部となっている空気感は、水木さんご自身が、もはや仙人レベルだったからでしょうか。
 物語は盛り上がりの途中で唐突に終わるのですが、これは調べたところ掲載誌出版社の倒産が原因だったそうで。今ならシンプルに打ち切り放置するところでしょうが、当時は打ち切りであってもきっちり「完」印を付ける習慣だったのか、水木さんは強引ながらに『三平』を完結させたため、移籍して再開することができなくなったという……。何せ、あの終わりかただから、どうしようもない(苦笑)。

 後世の作品群に影響与えただろうなぁ、というシーンがチラホラあちこちに。
 やっぱり、この人は先駆者ですね。



(※) 絵柄から調べましたところ、ちくま文庫版の内容は少年サンデー掲載分をまとめたものと思われます。