天一天上 (旧暦 長月廿五日)

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 『ラーメン大好き小泉さん 1』
  鳴見なる/バンブーコミックス


 第8巻が出たタイミングで、第1巻から買い始める愚者が、ここに約一名。
 いやー、だってサー、“有毒”だと判ってたからサー。
 これ、明らかに飯テロですよ? それ判ってて買う? 心身に障るよ。
 飯テロでも、ラーメンは別格にヤバイんだってば!



 まあ、買って読んでしまったんですがね♪



 藤子不二雄さん作『オバケのQ太郎』のレギュラー人物、ラーメン好きの小池さんが元ネタなんでしょうね。
 謂わば、小池さんの女体化。(何かヤだ

 しかしながら小池さんの場合、ラーメン好きというよりインスタントラーメン好きと言うべきかもしれません。て言うか、小池さんが店とか屋台とかで食べてるシーンの記憶がありません。いつも自室でズルズルやってる印象。
 小池さんが食べているラーメンは主に麺を丼に入れてお湯を注いで待つタイプの最初期の即席麺(チキンラーメン方式ね)。訪問したQちゃんが見てる前で「食前のラーメン食べよう」とお湯を注ぎ、「昼食のラーメン食べよう」とお湯を注ぎ、「食後のラーメン食べよう」とお湯を注いで、さすがのQちゃんも呆れてました(笑)。
 随分と前の日清どん兵衛のCM、工事現場での昼休み、どん兵衛を平らげた泉谷さんの横で弁当を済ませた勝俣さんが「俺、デザートがあるんス」とスイーツを取り出すのに続いて泉谷さんが「俺もでぃ」と、どん兵衛の二個目を取り出す。勝俣さんは、うどんのデザートに、うどん!? と驚き「うどん人、恐るべし!」とつぶやく。
 何のことはない。それよりも、さらにずーっと昔に小池さんが、やってたことです(爆)。
 そんな小池さんが可愛らしい女性と、まさかの結婚! が、このお嫁さんが大の料理自慢で、小池さんの備蓄ラーメンを体に悪いと、すべて廃棄。それから毎日毎日、自慢の手料理を作るものの、ラーメンを断たれた小池さんは、どんどん憔悴・衰弱、ついに禁断症状で寝込んでしまう(アニメの場合ね。原作は……どうだったかな?)。
 ラーメン屋の定休日を読み違えて店の前で倒れていた小泉さんも、何のことはない。ずーっと昔に小池さんが、やってたことです(爆)。
 小池さんは偉大なのです♪

 小池さんに無く、小泉さんにあるのはラーメンの造詣・蘊蓄。もしも小泉さんが『TVチャンピオン』のラーメン王選手権に参戦してたら、まちがいなく優勝しますね。失礼だが、小池さんには無理な相談。
 これね。劇中の「ラーメン」という単語を他の何か、例えば「アニメ」とか「ゲーム」とかに置き換えると判りやすい。
 普段は誰ともツルまず無口で孤高。だがラーメン(アニメ)の話題になるとコアな語りが止まらなくなる。積極的に友人関係を構築はしないが、ラーメン(アニメ)が仲介となって友好的関係が築かれるケースもある。放課後から登校までの間は深夜や早朝も含め基本、ラーメン(アニメ)のためだけに費やされる。ラーメン(アニメ)のためなら試験日前であっても遠出をし、試験に遅刻すら。さらにはラーメン(アニメ)禁断症状も。
 そう、小泉さんはグルメではなく重度のヲタクと解釈するのが正しい。美形だから好意的に見られてるだけで、これが性別がどうあれ不細工だったら世間から「キモイ」と叩かれてますよ(苦笑)。

 小泉さんは十代だし、小池さんも二十代のはずですから、まだまだ体に無理が効く。とは言え、今から引き際を考えておかないと、中高年になって必ず倒れます。早世します。ラーメン界のレジェンドって、作る人も食べる人も、けっこう早死にしてますからね。
 そう言や『劇画オバQ』では小池さんについて一切、触れられてなかったな。あれじゃ生死すら不明やん(苦笑)。
 まあ架空の人物を何、心配してんだと言われそうですが。(;^_^A

 架空のと言えば、これも架空だからできたこと。と言うか、実は、この作品で、ラーメンの描写と並び最重要なパーツ(と思う)。
 それこそが、ラーメンを食べたあとの小泉さんの恍惚とした表情でしょう。
 もちろん判ってる人は判ってると思います。
 あれは、小泉さんの“イキ顔”です。つまり、この作品はR指定することなく合法的に、小泉さんを筆頭にJKたちをエロティックに描くのが目的なのですよ。そう断言します(笑)。いや、小泉さんに比べたら回数少ないけど、美沙が激辛や背脂などで魅せた、あの表情、背徳的にヤバすぎでしょ。映倫が来るレベル(爆)。委員長だってラーメン食べながら眼鏡を外すという大胆な行動ですし(創作上で眼鏡女子が眼鏡を外すのは「一枚脱衣」と同じ意味がある)。
 まだ引退する前の上岡龍太郎さんが『パペポTV』で、
「僕は他人と一緒に食事をせん。あれは破廉恥な行為だから他人に見せるもんやない」
 と言っておられました。この流れで当時、話題になった永谷園のCM(イケメンが汗を流しつつ茶漬けや味噌汁や炒飯を無心にかっこむヤツ)を猛批判なさってましたね。「あんな下品なもんをTVで流すな!」と、えらくお怒りだった。
 上岡さんのお考えを個人的に要約するなら「食は三大欲求の一つであり睡眠や性行為に並ぶものなのだから、そもそも人前でするものではない。むしろ人目を忍ぶべきものだ」ということなのだと思います。
 同様の意図なのでしょう、『孤独のグルメ』の原作者、久住昌之さんも「食事のシーンは濡れ場」だと発言なさっています。つまり、あれは漫画もドラマも独身中年男のベッドシー…………げふんげふんっ。
 で、小泉さんはラーメンを平らげて恍惚の表情を魅せる。これがエロティカでなくて何なのでしょう。そんなのを中坊の身で間近に見たら、そりゃーケンタが「豚野郎で満たされ」るのも当然です(爆)。
 ドラマ版『小泉さん』がイマイチなのは、ここが原因だと思います。原作の想いを理解せずになのか、放送においての事情でなのか、とにかく小泉さん役のラーメン食べたときの表情がダメ。あれなら実写化するな、と言いたいほど。ドラマ版を支持しているのは、きっと原作未読の層なんでしょうね。原作が無ければ、あれはあれでアリでしょうから。

 ちなみに、妖之佑のラーメンに対する認識は、ほぼ悠と同レベルでした。白、透明、茶色、茶透明の四種類ね。(;^_^A
 でも、今まで生きてこれたし(爆)。
 もっとも最近は、これらに赤が加わって五種類の認識ですが♪

 ところでカバーを外すと出てくる作者さんのコメントを拝見すると。
 小泉さんがラーメン食べる際に髪をくくることに、担当編集氏は反対だったのだそうですね。キャラの外見を固定したいがゆえの、言ってしまえば教科書的な型にはまったテンプレ意見。
 やっぱり編集というのは作品を生かすより殺すケースのほうが多いんだな。と、変に納得。作者さんの頑張りがなければ、えらいことになっていたかも。
 小泉さんが髪をくくるのは謂わば「変身」です。ラーメンを前にして全力モードにチェンジするんです。伊達直人が虎のマスクを被るのと、ケンシロウが上半身裸になるのと、孫くんの髪が金色に逆立つのと、同じです。あるいはラグビーのウォー・クライと同類と言っても良い。ガチバトルを前にして、これを欠いたら、あかんやろ。
 ったく、これだから編集という生き物は……。