下弦 (旧暦 葉月廿四日)

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 『ダンジョン飯 8』
  九井諒子/ハルタコミックス


 まさかカブルーがカバー絵を飾るとは!
 と思ったら、カブルーも気持ち的にはライオス一派の仲間入りですね。あれほどライオスに入れ込むとは思いもせんかった。しかも、メチャクチャ良い奴やん。カナリア隊による制圧から自分のパーティ仲間を心配するのは当然としても、ライオスたちのことまで案ずるとは。見ず知らずの人すら危険を冒して助けるし。……まあ彼を偽善・独善とする考えかたもあるけど、独善はともかく、あそこまで命がけで偽善はできないと思う。
 一方でライオス一行は、あいかわらずのコントぶり♪ チェンジリングで変じたセンシは勘弁してくれー!(爆) ちなみにドワーフはトールマンの二倍半だそうな寿命(7巻の感想のときにやった試算、ほぼ合ってたな)。第50話の扉は第1巻のカバー絵をパロってて、この作者さんは扉絵もいちいち丁寧で楽しいですね。
 自動トロッコの中で、ライオスとファリンの過去も判るし、イヅツミもすっかり仲間だし。
 そして、ファリンを救えるかもしれない方法が……「喰う」こと。魔物を喰うという『ダンジョン飯』の基本が、まさかの解決の糸口? あのとき、ゴロゴロ転がっていった炎竜のボンレスハムが伏線だったとは思いもしませんでした。どんだけ練り込んでんだよプロット。
 マルシルは最初の頃は美形キャラだったはずなんですが……第51話の扉を見ると、エルフとしては平々凡々な顔立ちなのが笑えると同時に親しみマシマシです。何せ、カナリアの連中がエルフ族の高慢さを徹底的に醸し出してて、ただでさえエルフ嫌いになりそうですからね。カブルーの養い親とて「趣味」ってあるから愛玩動物の扱いだろうし(苦笑)。
 前の7巻でカナリアの隊長の左耳が切れているのを歴戦の勇士と思っていたのですが、8巻では両耳とも切れているのが判ります。そして、よく見ると他のカナリア隊も耳に切れ込みがありますね。で、カブルーによると「カナリア隊の半数は犯罪者で構成される」とのこと。つまり耳の傷は前科を示すマーキングかもしれません。切れ込みで済んでいない隊長は重犯罪者あたりかな? となると中で一人だけ耳が無傷の魔術師、彼女の立ち位置が怪しくなる。犯罪者の隊長に前科無しの部下という構図には意味があるはずです。
 迷宮の浅部に弱い魔物、深部に強い魔物、そしてパーティが六人以内推奨というRPG要素にも、ちゃんと合理的理由を付けてくれる。本当に、この作者さんは理系脳のうえに文系センスも光っていて、羨ましい。
 落下オチは生存のフラグですよね? クールな隊長が実は方向音痴だったり、カブルーとの会話でほんの少し素を出したように見えたりと、今後の和解への布石じゃないかと期待したいところです。元冒険者なら冒険者の気持ちも理解できるでしょうし。
 さらには、狂乱の魔術師が物理的にはかなり弱いことも判り、こちらも攻略の糸口となりますかどうか。
 でもなー。気が早いだろうけどなー。ファリンは助かっても地上に戻らず迷宮に残る気がするんですよねー結末として……。
 オーガになったマルシルさんは一家に一人、欲しいかもしれません。腕力あるし魔法も使えるし、ほぼ最強じゃね?
 バイコーンは可哀相でした。何も悪いことしてないのにな。