(旧暦 皐月二日)

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 『文藝別冊 総特集 石ノ森章太郎 萬画の天才、誰がために闘う。』
  KAWADEムック


 表紙絵とタイトルで内容のあらかたが想像できることでしょう。
 そのとおりの内容です。
 石ノ森さんご本人へのインタビュー記事のみならず。元アシスタントや元ファンであり現在は漫画界の重鎮さんたち、アニメで関わった人たち、特撮で関わった人たち、そんな人々の言葉が読んで興味深く。石ノ森作品好きにとっては、かなりの資料本となることでしょう。

 石ノ森さんの手による『石森章太郎マガジン』のラフ絵や構想ノートが資料として収録されているのも大きいです。

 そして、個人的に何より大きいのは。
サイボーグ009 完結編』の構想ノートが収録されたことです!
 断章ではありますが、これは本当に嬉しい(いや、だってサー。後継者たちの変な変換が混ざった代物なんて読みたくねーし)。少しずつ読み解いていけたら、いいなー。
 この記事によると、構想ノートは『石ノ森章太郎萬画大全集』の特典として完全版が一冊にまとめられていたそうです。うわ、知らんかったよ。まあ、知ってても大全集なんてトンデモ御殿な代物、買うお金ないけどサー。この特典だけ、あらためて一冊の書籍として発売してくんないかなぁ。
 それはともかく、今回の収録は断章ではあっても、ちゃんと活字化されている分、原本より読みやすいという利点はありますね。とにかく読解、頑張ろう。



『完結編』について少し言いたいことが。
 これをご本人以外の手によって上梓するのは志半ばに倒れた石ノ森さんのご遺志だったそうなので、小説版にせよ漫画版にせよ出版したことをどうこう言うつもりはありません。そんな権限もないですし(苦笑)。
 ただ、『009 天使編』の尻切れからずっとモンモンとしていた身としては、残念でならないのですよね。いくらご子息であっても、いくら元アシスタントであっても、ご本人の才能に届くはずもなく。ラフを商品の形にまとめる際には、そんな劣化才能によって、まったく別物へと変貌してしまうことは容易に想像できる。なので、妖之佑はあえて小説も漫画も読んでいません。がっかりするだけと判りきっていますから(とあるおかたに、こっそり尋ねたところ「ろくなもんじゃない」という感想が返ってきたですよ)。
 その意味でも、「構想ノート」を普通に出版していただきたいと思います。ご本人の手で完成させることが不可能である今、作品形態への変換は読者それぞれの脳内で行うのが一番だと思うからです。
 石ノ森さんのお気持ちを汲んでの小説化と漫画化は当然、なされるべきでした。それと並行して、今度はファンのための出版をぜひともお願いします。

 言うてもサー。
 小説版を担当された小野寺丈氏にしても、漫画版の早瀬マサト氏やシュガー佐藤氏にしても、超々プレッシャーだったと思いますよ。ひょっとしたら本音では、やりたくなかったんじゃないかな。叩かれるの目に見えてるわけだし。て言うか「ぜひ自分が」なんて立候補するようなら大馬鹿者でしょ。

 からんでの、ついで話。
 手塚治虫先生の『火の鳥』で未執筆に終わった「大地編」。手塚先生が残された粗筋を元にして現在、朝日新聞の「be」(いわゆる土曜版)にて小説が連載されていますが。
 これも勇気あるよなー、と思うのですよね。桜庭一樹氏は、なんで受けたんだろ? そんな自信家なんだろうか? ドン・キホーテになんなきゃいいけど。

ドラえもん』もFさん亡き後に描かれたものがあると聞きますが。
 あれも、どうなんだろうと思う今日この頃なのです。はひ。