うわぁ。次々と……。

 で、今度は小池一夫さんが旅立たれましたか。

 この人の代表作品は数多あります。
 でも、個人的には『子連れ狼』の一択ですね。

 よく、ブッ飛んだ時代劇とか言われる『子連れ狼』ですが。
 あれはドラマのせいですね。特に萬屋錦之介さん主演のヤツ。ほら、バラエティー番組なんかで「マシンガンを乱射する時代劇」とかって紹介されるじゃありませんか。あれのせいで『子連れ狼』は時代考証完全無視の異色作と世間に受け取られてしまった。
 原作は、むしろ時代考証を物凄く掘り下げてますよ。東映時代劇の嘘八百を鼻で笑うかのように、きっちりした設定をしてある。
 大五郎の乗る箱車に装着された“マシンガン”も、原作では「斉発銃」という名称の、一斉に多数の弾を同時発射する火縄銃なんです。連発銃ではない。なんでドラマで連射することになったのか? 監督がバカだったのか?
 しかも、その斉発銃、名称はともかく、そのコンセプトの実銃まで存在しますからね。決して、妄想の産物ではないのです。劇中では堺の鉄砲となっていましたが、実銃のほうは近江の国友村に存在しました。つか、今でも展示物として残っています。
 ついでに言うと、当該エピソード「堺筒」の主要人物、堺の鉄砲鍛冶・七郎兵衛は斉発銃では飽きたらず火縄の連発銃も図面段階までは完成させていまして、その連発銃の構造も何と実銃にあるんですよ。こちらはテレ東『なんでも鑑定団』に鑑定依頼品として登場しましたね。あの澤田平さんが楽しそうに、いじってらした♪
 インターネットなどカケラも無い時代に、よくそこまで調べ上げたものです。流石と言うだけでは足りない。おそらく、表に出てこない部分で、物凄い量の調べ物をなさっていたことと思うのです。で、採用するのは極わずか。これぞモノカキの鑑です。
 繰り返しになるけど、東映などの著名作品群こそ、時代考証無視したデタラメ時代劇ですからね。あれらは、あくまでも「時代劇の江戸の町」でしかないのです。えーと、最近ので言うなら、NHK『タイムスクープハンター』に出てきた江戸の町並みや服装・髪型が時代考証的に正しいです。

 あの高橋留美子さんも小池さんに師事したということからも、その偉大さがよく判ります。
 合掌。