十方暮入 (旧暦 文月十日)

 で、ここまでは序章。(何!?

 ようやく本題。
 大槻班長と宮本さんが体験した“名古屋”について勝手に検証もどきしていこうと思います。

 まずは二人が訪れた大須
 ここで、「名古屋の代名詞」として小倉トーストを試し、名古屋人の厚顔無恥な戦略に「ざわ・・」っとするわけですが。
 はい、まちがい。
 妖之佑の記憶と知識が正しければ、小倉トーストを考案して客に供したのは、大学の連なる大通り近くに在る、周辺大学生御用達の某喫茶店です。元々は学生向けを意識した純粋な大盛り店であって、料理がノーマルで大盛り状態、体育会系以外がダブル・サイズを頼もうものなら“遭難”します。他にもタライ(洗面器?)かき氷とか、ジョッキ入りのクリソとか、とにかく量が狂ってる(褒め言葉)。そんな流れから、徐々に味でも攻めるようになり、小倉スパや小倉トースト、辛いスイーツなどイカレタ物(褒め言葉)を出してきた。つまり「奇食」の店とされるようになったのは比較的近年。
 その奇抜ぶりが地元メディアなどで取り上げられ話題となり、やがて小倉トーストは広く人気になる。その人気に乗っかって他の店々が猿真似をした。
 というのが流れのはずです。名古屋人が皆、小倉トーストを発想したり商品化する感性と度胸と狂気(褒め言葉)を持っているわけではありません。あれは、あくまで、あの喫茶店独自のセンスと開拓者魂であり、それが成功しただけのこと。今、巷に溢れている小倉トーストたちは、それこそ「なろう」の人気を受けて商業出版に至るラノベ同様に、ただただ安全牌を選んでるだけですよ。気概も何も、ありゃせんです。

 大槻に「店の並び」「自由すぎる」と言わせた商店街の構成はね。
 お洒落な店のそばに射的屋、のあれ。あれねー。射的屋は老舗なんですよ。で、そのずっと後になってご近所に、お洒落な店が出来た。元が何だったかは……ちと憶えてないけど、たぶん普通に商店街に馴染む建物だったはず。て言うか、大須のお洒落な店は、たいていが取り壊した跡に建った後発組ですよ。
 大須商店街の並びが「自由すぎる」のは、小泉・竹中経済政策のせいです。あの愚策の影響で小規模な老舗が次々と潰れたってこと。その空き地に新興勢力が入ってきただけなんです。要は、全国どこにでもあるシャッター街、あれが新進気鋭の店々のおかげで奇跡的に息を吹き返しているのですよ。今だって次々と老舗が潰れ続けてますからね(フジヤ陶磁器店の閉店は本当に残念)。なので、先々のことは判りません。入れ替わりで、さらに混沌化・多国籍化が進むのか、それとも徐々に先細りしていくのかどうか。
 まあ、この混沌を受け入れているからこそ全体としての商店街が生き残れている、という事実はあるでしょうね。

 続いて二人が「ざわ・・」っとしたアレ。
 あれは大須観音の境内に据えられたカラクリ時計ですね。もちろん電気仕掛け。
 銀座の有楽町マリオンにもカラクリ時計がありますが、あの西洋感に比べて、ベタに徳川宗春を使うのは名古屋独自のセンスかもしれんな、確かに。
 ちなみに、そこから少し北東に行った所、名古屋高速道路の高架下には三英傑のカラクリ時計がありますよ。こちらも、けっこう喧しい(笑)。

 海老フライは、宮本さんが調べたとおり。すべてタモリが悪い!(あえて呼び捨て♪) だいたい「エビフリャー」なんて誰も言わないよ。言う人がいるとしても現名古屋市長くらいだろ(笑)。が、そこを逆手にとって商売にしてしまうのが名古屋の強さというか逞しさというか。
 ちゃんとした名古屋の伝統料理となると……きしめん? これは鉄板すぎて面白くないな。
 他だと櫃まぶし、かなぁ? でも天むす同様、本家争いが三重県にまで及んでて、よー判らん。
 台湾ラーメンは、その名に反して名古屋発祥らしい。
 手羽先を名古屋の味とするには弱いと思う。たしかに名古屋コーチンという特産地鶏はいるが、さすがに大量に売る手羽先には使ってなかろ。
 視野を名古屋から愛知県西部に広げると、串あさりを外せない。これは、まちがいなく絶品。
 て言うか、味噌カツ味噌煮込みに欠かせない八丁味噌なんて産地は岡崎、つまり尾張ですらない三河の味だからね。
 ういろうは、昔は、はっきり言って不味かった。今は問題なく食べられます。他所の土地への手土産にするかと問われると……困るけど(汗)。
 大須商店街の東端、でっかい招き猫の近くにあるパン屋さんの「カタパン」が、かなりの強敵。きっと、これも名古屋の味と言えるはず。

 喫茶店のモーニングについて考えるのは、よそう。ガチで混沌だから。
 コーヒー飲みに入ったら、トースト、茹で玉子まではよしとしても、バナナ、焼き菓子、野菜サラダ、しまいにゃ昆布茶だからな。いや、注文はコーヒーなんだけど? 味のバランス、カオスすぎだぞ? 終日モーニング実施なんて店もある!
 これを朝食や昼食にと当て込んでいる人たちが当然おられるので、別に「いけない」と言うつもりはないんですけどね。ただ、コーヒー注文すると問答無用で付いてくるというのが……凄いですよ。最近は「コーヒーとモーニング」とする注文で受ける店も出てきてるけど。
 たぶんですが。これって店同士の競争から降りるに降りられなくなっての「血を吐きながら続ける悲しいマラソンのスパイラルなのですよ。不景気からの体力切れで、ようやく減らす勇気と言うか、撤退せざるを得ない自覚が少しずつ出てきた感じが今の状況なんじゃないかと。

 ホテルマンさんの「独立国家」説(妖之佑は「永世中立国」説ですが)。宗春の影響があるかもしれませんね。
 ご存じのとおり、将軍吉宗がしいた倹約令を無視、カネが回らないと経済がダメになるとした尾張藩主宗春。中央がバカやってもウチはかんけーねー、という名古屋思想は今も昔も同じように感じます。これが理由で宗春は処罰されましたが、後の様子を見れば、倹約令は失策だと判ります(幕府の財政を立て直せたものの、代償として日本経済全体がガタガタに壊れたからね)。
 ホテルマンさんが紹介した『名古屋はええよ!やっとかめ』を歌うのは、つボイノリオさんですね、『金太の大冒険』の。作ったのは何と『タイムボカン』シリーズで超有名な山本正之さん!
 どうでもいいけど、あのホテルマンさん、どことなく、ぐっさんに似てる気がする。『ぐっさん家』は、もう十五年かー長いなー、ぐっさん本人は吉本の人だけどー(苦笑)。

味噌煮込みうどんに当然のようにご飯がついてくることに・・・・疑問を抱きそうなった」大槻に言いたい。
 全国には、ラーメンライスや、うどん定食があるでしょ。あと、大阪では粉物をおかずに白メシが基本やん。
 名古屋だからと何でも疑問視すな(爆)。



 最後に、ちぃと無関係ですが。
 CBCの『地名しりとり』と『ごはんリレー』は名古屋を代表する名作品だと思います。出演者は、ともに吉本の人ですけどね(苦笑)。