宇和島牛鬼まつり (旧暦 水無月十日)

 宇和島市も大雨の被害が甚大だったとのことで、今年の牛鬼まつりは中止なのだそうです。
 残念ではありますが、復旧・復興が最優先ですからね。





 牛鬼まつりとは、その名のとおり、牛鬼が主役の祭りです。
 牛鬼うしおにと呼ばれる山車を各地域が用意、それぞれの地区の家々を練り歩き、玄関口から長い首を突っ込んで巣くっている魔物や悪霊を追い払ったり、子供の頭を甘噛みするなど、まるで獅子舞のような厄払いをして廻ります。
 で、それぞれの牛鬼たちが最後には街に大集合。祇園山鉾巡行のような大イベントとなるそうです。
 実際に見たことないので、NHK『ふるさとの伝承』を視聴した知識ですが。(;^_^A

 では、山車のモチーフとなっている牛鬼とは何か?
 まちがいなく、伊予の國に伝承される妖怪の牛鬼うしおにでしょうね。ルビのとおり「うしおに」と読みます。「ぎゅうき」ではありません(人に憑依して怪物化させる牛鬼ぎゅうきは『ゲゲゲの鬼太郎』の創作妖怪であって、実際の伝承には存在しない)。
 牛の体に鬼の顔という化け物で、主に西国の海岸に出現。濡女や磯女とセットで登場することも多いそうで。なぜ牛の体なのに海の怪異なのかは不明です。

 ちなみに、水木しげるさんが「ぎゅうき」とした妖怪の絵は『鬼太郎』でも妖怪解説本でも六本足の蜘蛛みたいなシルエットの怪物ですが、古い絵巻物などにおける牛鬼には、普通に四本足のものと、六本足のものとが混在します。ただ気になるのは六本足の牛鬼が、源頼光&四天王が退治した土蜘蛛と瓜二つの外見なのですよね。
 ここからは妖之佑の推測なのですが。六本足の牛鬼は、写本を重ね重ねるうちに土蜘蛛を誤認しちまったケースなのではないのかと。それが伝言ゲームみたく、間違ったまま次々と継承されてしまった。たいへん失礼ながら水木さんも、その誤解の連鎖に入ってしまった。のだと考えられます。
 重ねて言っておきますが、『鬼太郎』にて“牛鬼ぎゅうき自身には形がなく人に取り憑いて化け物になる”という設定は水木さんの完全オリジナルです。残念なことに、これを資料扱いして、そのまま流用するケースが少なからず。『仮面ライダーディケイド』の響鬼編に出てきた牛鬼ぎゅうきなどが、まさにそれでした。創作のプロともあろう者が、情けない話です。

 牛鬼は牛の体に鬼の顔、つまり四脚である。
 文献に伝わる六本足の牛鬼とされるものは、土蜘蛛の誤認である。
 これが妖之佑の意見であり結論であります。反論は許しません(笑)。

 そんな恐ろしい妖怪である牛鬼が、なぜ、おめでたい祭りの主役に?

 という疑問は容易に解決するでしょう。
 北設楽の花祭、豊橋の鬼祭、などなど鬼を主役にした祭礼は、けっこうありますからね。
 あるいは鬼を描いた絵馬、大津絵の「鬼の寒念佛」、角大師のお札などなど、鬼を崇める風習は古くからあります。
 強い=頼れる存在、ということでしょう。とある小学校教師は鬼の手で児童たちを守りますし♪
 鬼の顔をした牛の化け物が崇められても何ら不思議はないのです。