山開き、天しゃ (旧暦 皐月十八日)

 丸榮百貨店が、ついに閉店しましたね。
 外商は営業継続とのことですが、そんなのビンボな庶民には関係ないし、何より建物が解体ですからね。跡形もなく消え去るとは淋しい限りです。
 七十五年は凄いですよね。しかも創業から数えると四百三年だそうな。

 これで4Mから3Mになってしまった……。





 丸榮そのものの最終日には行きませんでしたが、閉館決定を受けての最後の中古カメラ市には行ってきました、もちろん。
 これが最後ということでしょう、やっぱりお客は多かったですね。

 最後だから、ちょいと奮発して……などという余裕は無論なく。(;^_^A
 いつものとーり、ジャンクを探します。

 面白い物がありました♪

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 パッと見、ただの古いポケット・カメラ。今ではフィルムが手に入らない、まさに動いてもジャンク同然。
 でも買う(爆)。

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 ロゴを読む限りではヤシカのアトロンなる品。当然ながら、品に関する知識はございません。
 正面向かって左から、ロゴ、撮影レンズ、セレン受光部、ファインダー窓、と見受けられます。セレンがあるということは、たぶん自動露出でしょう。

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 素材はアルミでしょうか?
 いや、それにしてもこれ、既視感ある質感なんだよな〜。表面の仕上げと言い、ダイアルのデザインと言い、チェーン・ストラップと言い、ただのポケット・カメラじゃない気がするんだよな〜。

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 背面は至ってシンプル。覗き窓だけです♪

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 違和感の正体を確認するため、以前に入手したミノルタと並べてみます。
 ふむふむ、これは絶対に別の規格だな。

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 蓋を開けました。
 ああ、見たことある、このフィルム室。

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 比べれば一目瞭然。サイズ的に 16mmフィルムではありませんね。つまり 110フィルムでもないぞ、こいつ!
 予感が当たってそうだ。

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 というわけで、ミノックスIII にお出ましいただきました。
 ほら、明らかにデザイナーはミノックスを意識してるよ。

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 フィルム室の比較。
 比較も何も、まったく同じ寸法ですね。やっぱり、このアトロンはミノックス・フィルム用のカメラでした。
 ちなみにミノックスに入っているのは本家ではなく、浅沼商会によるキング・ブランドのフィルムです。

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 手に持つ際の右側に畳まれてある物を引き起こしたところ。
 これを摘んで引っ張って放すと、シャッター・チャージとフィルム送りになるようです。
 ミノックスはボディを引き延ばして撮影、押し戻してチャージの繰り返しですが、アトロンのレバーはバネが効いていて引っ張ったあとは放せば勝手に戻ります。これは楽しい。けどバネが強くて少し扱いにくい。速写ならミノックスのほうが有利ですね。

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 モロにミノックスからパク……もとい参考にしたと思われるダイアル群。
 左から順に。
 露出計針、フィルム感度調節、撮影露出調整が同軸となったダイアル部。露出調整は少し変わっていて、シャッターのBがあり、それ以外は絞り値になってます。たぶんですが、B以外にして絞り値を決めるとセレンで速度を自動決定する? まあ露出計が壊れてるので確認できませんが、シャッター音が「チュウゥ〜」とネズミの鳴き声みたいなので、そうなんじゃないのかな、と。
 で、フィルム・カウンター。これは裏蓋を開けてもリセットされません。手動で合わせます。
 そしてシャッター・ボタン。ちゃんとシャッター・ロックもあります(ミノックスはボディを閉じることがロックにもなる仕掛け)。

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 レンズ部のアップ。ミノックスは驚くことに距離調節もできますが、こいつは固定焦点ですね。
 上に乗っかってる細長いレバーにご注目。ここもミノックスの真似……もとい参考にしてますね。

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 こうすると黄色いフィルターがレンズの前にスライドしてきます。ミノックスと同じ。
 ミノックスは、ただズラすだけですが。アトロンは、このレバーにもバネがあって、少し引っかかりが取れるとパチンと戻ります。つまり、フィルターを使う際には、しっかりスライドさせてやらないと戻ってしまいます(笑)。

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 謎の穴……。
 単に三脚用かと思ったのですが、そもそもタイマーもないのに三脚?(とは言え、ミノックスにも純正で三脚があった)
 ぐぐったところ、専用のストロボがあるらしく、そのジョイントのようです。あー、それは楽しそうです。なんせ合体メカは浪漫ですから♪

 映画のせいで「スパイ・カメラ」と呼ばれたミノックス。そのミノックス・フィルムを使う日本製カメラは、浅沼商会のアクメル・ブランドから出ていた数点しか知りませんでした。
 妖之佑が使っていたのは樹脂製ボディのアクメルMでしたが、操作感覚がバタバタして値段のわりに結構なパチモン感でした(笑)。ちゃんと写りましたけどね。
 のちに本家ミノックスを手に入れて、その差に愕然としたものです。

 まさか、アクメル以前にヤシカが出していたとはね。

 表面の質感が、かなりミノックスに近く、当時の本気を出した日本製カメラの技術力を思い知らせてくれます。
 丸みを帯びたミノックスに、角張ったアトロン。並べても楽しいです。場所を取らないのも◎♪



 もう一点の収穫はレンズ。

 ニッコールQ 200mmF4

 この輪郭だけで判る人には判る。

 ニッコールQ 200mmF4

 どどーん!
 望遠レンズは太くなければ♪

 ニッコールQ 200mmF4

 ニッコールQ 200mm F4 。
 初代F時代のレンズですね。いわゆる非Ai 。
 こいつの、先端でなく真ん中が太いシルエットが良いんですよね。何と言うか、逞しくて(笑)。

 ニッコールQ 200mmF4

 さて、35mm広角を付けている静かなF2フォトミックさんに、ご登場願います。

 ニッコールQ 200mmF4

 どかんっ。
 一気に戦闘的になります。
 やっぱりフォトミックは、これくらい攻撃的でないといけません。広角は他のカメラに任せてもいいくらい。

 ニッコールQ 200mmF4

 あるいは積極的? 押しの強さ的な?
 今のコンデジみたく先細りのがニュ〜っと、だらしなく伸びるのは、ひ弱なイメージだし、何より美しくない。
 こーゆー、ガッと太長いのが良いですね。望遠としての説得力が違います。



 初代FとかコーワSWとか、けっこう嬉しい価格で出てたんですよね。でも、悲しいかな妖之佑には予算オーバーすぎ。orz
 場所を移しての再開を期待します。





 丸榮百貨店、ありがとう。
 お疲れ様でした。